映画「十戒」といえば、名優チャールトン・ヘストンがモーセ役を演じている1956年版が有名である。映画では、旧約聖書の7つの物語、アダムとイブ、ソドムとゴモラ、ノアの箱舟、モーセの出エジプトなどの物語を、聖書の記述通りに正確に再現されている。中でも、エジプトを出たモーセとイスラエルの民を追いかけるエジプト軍の前に出現した、真っ二つに割れた海。そこを歩いて渡りきった彼らの前で、後を追うエジプト軍が、もとに戻った海に巻き込まれて全滅するシーンが、ことのほか有名である。
ところで、このような物語は単なる作り話なのだろうか。「単なる作り話ではない」と言うのは、大学受験で有名な故竹内均氏である。著書「地球物理学者竹内均の旧約聖書」(同文書院、1988年)では、紀元前1400年頃の地中海で起こったサントリニ島の火山大爆発による島の陥没、カルデラの生成などにより、実際に海が真っ二つに割れた事件が、モーセの出エジプトに記されている、と主張しておられる。
その他の物語も、実際に起こった事件が旧約聖書の物語に反映されている、という。日本の神話も、単なる物語ではなく、実際に起こった国誕生の事件が神話に反映している、というのが、もはや定説のようになっている。それはともかく、「十戒」を見れば、西洋人が話題にする聖書の物語が一通り理解できるので、教養として鑑賞してはどうだろう。
聖書物語などキリスト教そのものを表現した作品ではないが、カトリック精神が充満している映画としては、「サウンドオブ・ミュージック」をお勧めしたい。
ジュリー・アンドリュース扮する修道女が、見渡す限りの山の草原で歌い上げる、まさに、今でいえばドローンで撮ったような雄大な冒頭のシーンが有名だ。実は彼女は、毎回祈りの時間に遅れ、院長から「あなたは修道女に向いていない」と諭されていた。歌っているところではなかったのだ。
そうして7人の子供を持つ大佐一家に家庭教師として赴任する中での、恋あり、一家を捕らえようとするナチからの逃走劇ありの、実話に基づいた映画である。楽しい映画で、見たことがない人は是非鑑賞を勧めたい。実はこの映画の続編があって、ナチの追跡から辛うじてアメリカに逃れたトラップ一家がいかにしてアメリカで有名な家庭コーラスになっていくかが演じられている。
「天使にラブソングを」もいい。ギャングに追われた女性主人公の逃亡先の修道院の、あまりにも音程の酷いコーラスを立派に育て上げていく物語で、大ヒットし、続編が何編か作られている。
(横浜教区信徒 森川海守 ホームページ:https://www.morikawa12.com)