あなたは信じますか?神様から直接人間に呼び掛けることがあることを。(以下は、「聖人たちの生涯」池田敏雄著、中央出版社)より大部分引用執筆)
彼女は、フランス東北部の寒村ドム・レムで、貧しい農家の娘として生まれた。12歳の時、ミサが終わって聖堂を出ようとしたときに、「ジャンヌ・ダルクよ、敵の手からフランスを救え!」という神の声を聴いた。「わたくしにどうしてそんな事ができますか」と尋ねると、神に代わって、大天使聖ミカエルが「天にまします御父が、お前を助けられるだろう」と答えたという(いずれも彼女が異端審問された時の証言に基づく)。
当時のフランスは、イギリスとは異なり、各地に諸侯が群雄割拠し、フランスという国の意識が薄かった。対して、イギリスは、羊毛の輸出先としての毛織物工業の中心地のフランドル地方やブドウの産地のボルドーをフランスから奪い取ろうとして、英仏百年戦争の真っ只中で、次々とイギリスに領土を取られ、フランス国土存亡の危機にあり、最後の砦、オルレアン城が落城間近の時に、ジャンヌ・ダルクが登場したのである。
ジャンヌ・ダルクは、神の声を聴いてからも、4年間も悩み、その間、聖女マリガリタや聖女カタリナからも勇気づけられたという。16歳になった時に、「神のみ旨のままに」と神に誓い、時の知事ボードリクールに「フランス王を救いに行きますから、わたくしに兵士を伴わせてください」と頼んだ。当然だが、一介の小娘の願いを聞き入れるはずもない。狂人扱いされるばかりだったが、彼女はひるまず、とうとう説得に成功。騎兵の服装で馬にまたがり、数人の兵士を伴い、シノンにいる皇太子、後のシャルル7世のもとを訪れた。
その時、王となるべき皇太子は、整列した兵士の中に変装して隠れていた。「神の使いなら、俺を探し当ててみよ!」と言う訳である。このあたりは映画「ジャンヌ・ダルク」に詳しい。見事探し当てられた皇太子は、慎重を期して、ジャンヌを異端審問にかけた。1ヶ月間かけて行われた審問では、ジャンヌの使命の正当性が証明され、白い甲冑に、右手に剣、左手にイエズスとマリアの御名を記した白絹の軍旗を身につけ、精鋭部隊を率いて、イギリス軍に包囲されたオルレアン城の解放にむかった。途中で、兵士に罪の告解を得させた上で総攻撃をかけてオルレアン城を解放。この戦勝にフランス軍の士気は上がり、その後も連戦連勝。とうとう皇太子をフランス国王シャルル7世として正式にフランス王として即位させた。
しかし、ジャンヌが19歳の時に、イギリス軍に捕らえられ、異端審問の結果、魔女として火炙りの刑に処せられた。死後25年後、この宗教裁判のやり直しが行われ、無罪の判決を得ている。そうして、ジャンヌが亡くなってから、約500年後の1920年、教皇ベネディクト15世により、聖女の列に加えられ、現在は、フランスの守護聖人の一人として尊敬されている。
横浜教区信徒 森川海守(ホームページ:https://www.morikawa12.com
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