映画「クォ・ヴァディス」。ポーランドのノーベル文学賞作家、ヘンリク・シェンキェヴィチの同名小説を、壮大なスケールで描いた、今から70年前、1951年初上映の映画だ。ロバート・テイラー、デボラ・カー、ピーター・ユスチノフなど当時のハリウッドの人気俳優が多数出演しており、年配の方の中には、ご覧になった方も少なくないだろう。
「クォ・ヴァディス」はラテン語で「主よ!いずこに行き給うや」という意味だ。キリストがこの世を去り、残された弟子達が、当時の世界の中心であったローマにキリスト教を広めていく中で、暴君ネロにより迫害を被った。ネロが放った放火が、ローマの大火事となり、火事の責任をキリスト教徒に押し付けて、迫害されていく…。そのような中で、ローマの将軍とキリスト教徒の女性奴隷との恋愛をからめ、初期のキリスト教がどのようにして広まっていったのかが、この映画を通じて理解できる。
地下の共同墓地(カタコンベと言い、ローマ観光旅行の定番見学地となっている)で、キリスト教徒の秘密の集会が行われた場面が出てきたり、ローマのコロッセオで、どう猛な野獣とキリスト教徒の戦いが、ローマ市民の見世物になっていたりと、ローマ時代の様子を直に視覚的に理解できる映画にもなっている。カタコンベでの集会では、新約聖書に出てくる聖ペトロによるキリストご受難についての有名な演説が見ものである。
映画のタイトル「クォ・ヴァディス」は、大迫害の中、ペトロがローマから逃げていく途中で、キリストに出会う。その時、彼がキリストに発した言葉だ。この問いにキリストは、「おまえが行かないので、私は再度、十字架にかかりにローマに行く」と答え、それを聞いてペトロは、はっと我に返り、踵を返し、十字架の刑を受けにローマに赴く、というのが映画のストーリーになっている。いずれにしても、聖書には記述のない、シェンキェヴィチの創作ではあるが、私にとって、是非とも世の子供たちに見せたい映画の一つになっている。
(この映画のブルーレイディスクは、JR四谷駅真向いの「サンパウロ」で購入できる。)
横浜教区信徒 森川海守(ホームページ:https://www.morikawa12.com)