*高位聖職者から相談を受けて始まった
十数年前のある日、高校の先輩で、東京教区の生涯養成委員会(現在の同名の委員会とは全く違う、一般信徒30名近くと司祭数名で構成し、第二バチカン公会議の「内外に開かれた共に喜びをもって歩む教会」を目指す様々な企画を立て、信者育成を実践していた)の担当司教とチームリーダーの関係などもあり、長年懇意にさせていただいていた森司教と食事をしながら、カトリック新聞などカトリックの広報が抱える問題などについて話をしている時のこと。
いきなり、「新しい新聞やらない?」と相談を持ち掛けられた。 しばらく考えてこう答えた。「紙の新聞を出すとなると、取材、編集、校閲など経験者が必要で人件費もかさみ、印刷、配送などの費用がかかる。そのうえ、カトリック新聞のように小教区などに購読を”強制”できればともかく、自分で売ろうとすれば、そのための人員も必要。そんな予算もなければ、物理的にも無理です」と答えた。
ただし、「インターネット・メディアなら、出来ないことはないかも知れません」と付け加えると、ゴーサインを出された。幸いにも、その方面の専門知識と技術を持つ高校や大学の後輩などが仲間として名乗りを上げてくれ、皆で資金を出し合って、2016年秋にスタートしたのが、この「カトリック・あい」だ。
*日本の教会の主日のミサ参加者8万人弱に対して、年間閲覧件数23万台に
それから10年、編集委員は4人と発足当初と変わらないが、コラム執筆者は何人か入れ替わりながら、現在は6人が毎月、2人が不定期の投稿の形で多角的な視点から執筆し、好評を博している。 提携海外メディアも、バチカン放送はじめ,Crux Now(米)、 Bitter Winter(伊)、そして最近、Global Catholic(仏)も加わった。
そうした体制の中で、2016年10月の月間529件から始まった閲覧件数は翌2017年12月に1万件を超え、年間では教皇が秋に訪日された2019年に18万件、2020年には26万4000件と”教皇フィーバー“で急増、それが収まった後も、2024、2025年と23万件台を続けている。2025年の「カトリック教会現勢」で日本の信者総数は41万人弱。うち主日のミサ参加者は7万9000人弱にまで減っている中で、かなりの支持を得ていると言えるだろう。 しかも閲覧者は日本国内だけでない。米国を筆頭に70前後の国に広がっている。
*十年間に起きた大きな動き、緩慢な日本の教会、司教団の対応
2016年10月の創刊から10年の間に、日本と世界の教会では首脳人事だけ見ても、2017年10月の東京大司教に菊地師任命、2019年11月の教皇フランシスコ来日、2025年4月の教皇フランシスコの死、・初の米国人教皇レオ14世の登場という大きな出来事があった。
そして、今、2028年の”シノドスの道“の当面の仕上げを目指す世界教会会議に向けて、”道“の原点とも言える第二バチカン公会議の学び直しの講話をレオ14世は始めておられる。聖職者による性的虐待問題などに世界の教会にとって深刻な数々の問題に対しても、前教皇フランシスコの遺志を受け継ぐ形で、解決に努力を続けておられる。
さらに今年5月、教皇就任後初の回勅『Magnifica Humanitas』を発出。教皇レオ13世が産業革命時に出された社会回勅『Rerum Novarum』を受ける形での、この「AI時代の社会回勅」について、「今日の教会もまた、福音と人間の尊厳の光に照らして、この時代の『新しい事柄』を解釈するよう求められています」と語られ、言葉だけでなく、ご自身が先頭に立って取り組みを始められた。
このような教皇、それに応えようとする世界の教会の動きに対し、日本の司教団の対応は緩慢で、世界的な課題と共に、大きな社会変化の中で信徒、聖職者の高齢化・減少、性的虐待などスキャンダルがもたらす信頼性の低下などに各教区、司教連帯して対応することも、将来への希望を全信者に与えるような具体的取り組みも、皆無と言っていい。
*現状認識は10年で深刻化、だが、「教会活性化」の努力は止めない
10年前、私たちは、「日本のカトリック教会は、少子高齢化が急激に進む日本社会以上に、元気を失っているように思われる。だが、悩み、苦しみながら日々の生活を送る人々を元気づけ、生きる希望をもつことができるように頑張っている聖職者、信徒も少なくない」との現状認識をもとに、「教皇の言動、さまざまな場で活動する方々の声を集め、解説、意見も合わせて、世のため、人のために役立てるような教会へ活性化させるきっかけを作っていく」という主旨のもとに、「カトリック・あい」を始めた。
残念ながら、そのような現状認識は変わるどころか、より深刻化しているが、そうした中にあっても、創刊の主旨で述べた「教会活性化のきっかけ作り」の努力をやめるつもりはない。
最近の例を挙げれば、”シノドスの道”の節目となる世界代表司教会議第16回総会の最終文書を、続いてレオ14世の新回勅を、対応の遅い司教団に先んじで速やかに全文翻訳・掲載し、さらに日々の教皇の講話、発言を詳細に翻訳して、無償で読者諸兄姉にお届けしている。コラムや読者投稿、内外のニュース、「評論」の翻訳など、日本の幅広い信者の声をお伝えし、時には教会改革などの提言をし、現在の陣容で出来る限りの努力を重ねている。
*教区長・司教の大量退任は、日本の教区再編統合、司教ポスト削減など教会改革の好機
そうした中で、日本の司教団には、大きな変化の可能性のある”事件“が起ころうとしている。先日の広島教区長、白浜司教の突然の辞任表明に始まり、今年から来年にかけて”司教定年“を迎える教区長の方々の大量辞任(白浜司教を含めて、少なくとも5人)が起きることが予想されるのだ。
信徒、聖職者の高齢化・減少が加速する一方で、司教候補の人材不足。しかも教区、司教の連帯が図れない一因が、信徒、聖職者の数に対して、世界水準からみても多すぎる15もの教区、司教・教区長ポストにあるとすればなおさらのこと、この機会に、抜本的な教区の再編統合、司教ポストの削減の勇断を振るい、”シノドスの道“を連帯、率先して歩む、日本の教会の真のリーダーとなる体制に変化すべきではないか。
これは、決して「カトリック・あい」の勝手な思い込みではない。日本の教会の現状を憂い、明るい展望を開こうと努力する、少なくない聖職者、信徒たちに共通した思いだ。
*「首都圏教区」構想の失敗に何も学ばない日本の教会、司教団はどうする
今から半世紀近く前、東京教区と横浜、さいたま(現)両教区を統合し、「首都圏教区」とする構想が、高位聖職者の中から提起されたことがある。おそらく、これをきっかけに、日本の全ての教区を対象に再編統合を進めようという考えがあったかも知れない。だが、この構想は、「自分の時代に教区や司教ポストが減るのは受け入れられない」という”多数派“の声でつぶされてしまった。噂ではなく、当事者から筆者が直接聞いた話だ。
私たちは、この大量の司教退任、そして退任によって生じる”空白“を教会変革の機会とするか、それとも、議論すらされず、”惰性“で機械的にポストを埋めて行くだけにするのか。関係者の対応を見守っていきたい。 読者の方々のご理解、ご支援をお願いしたい。
(「カトリック・あい」代表:南條俊二・2026.10.1記)