・香港名誉司教の陳枢機卿が中国問題で教皇に”直訴状”

Zen presents letter to pope warning him on China

   Cardinal Joseph Zen Ze-kiun says underground church clergy have cried to him recently after being pressurized by Chinese authorities to join the open church. (ucanews.com photo)

(2018.11.10 カトリック・あい)

 バチカンと中国政府が同国内のカトリック司教任命について「暫定合意」して2か月近くたつが、具体的な合意内容も、「正式」合意の見通しも、いまだに双方から明らかにされておらず、中国国内では教皇に忠誠を誓い、政府・共産党の管理・支配を拒む”地下教会”に対する、地方当局による圧力がむしろ高まっていると伝えられている。

 そうした中で、自身も中国国内で布教経験があり、現在も中国の信徒たちと強いパイプを持つ香港名誉司教の陳日君・枢機卿が10月29日から11月1日にかけてバチカンに飛び、教皇フランシスコに、中国の「地下教会」が直面している危機的状況を十分に配慮するよう求める7ページにわたる”直訴状”を手渡した。

 アジア地域の有力カトリック系インターネットニュースucanews.comが9日付けで明らかにしたもので、書面では、先の暫定合意後、中国政府・共産党の「地下教会」への対応は厳しさを増しており、活動資金の没収や、信徒の逮捕・投獄などが続いていること、中国の教会の実態として、司教選出の自由は与えられていないこと、など実情を詳しく説明している。

 陳枢機卿は8日、ucanews.comのインタビューに答え、「9月のバチカンと中国政府の”暫定合意”以来、『地下教会』の司祭たちは私のところに苦難を訴えてきています」とし、具体的には「政府・共産党が彼らに(注:中国政府・共産党の管理・支配を受け入れる)中国天主教愛国協会への加盟と、『教皇が中国・バチカン暫定合意に署名した』ことを理由に司祭であることの証明書を(注:政府から)取得することを強要されているのです」と説明した。

 また、枢機卿は、「暫定合意」の具体的な内容が彼らに知らされていないため、「地下教会の兄弟姉妹は、自分たちがどのように対応したらいいか分からず、当惑し、所属教会から逃亡したり、姿を消す信徒も出てきている」と訴えた。さらに「教皇は、中国のカトリック教会の人々は預言者であるべきであり、時として政府を批判すべきだ、と言われましたが、中国の現状をあまりにもご存じない発言に、とても驚きました。教皇は中国の教会がたどってきた歴史も現状もご存じない」とし、その原因は、パロリン国務長官などバチカンにいる人々が中国の教会が置かれている実際の状況を教皇に説明していないからでないか、と強い懸念を改めて示した。

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2018年11月10日