・NHK・Eテレ「100分de名著」で4月3日から毎週月曜夜、「新約聖書 福音書」を放映

 

紀元1世紀から2世紀にかけて執筆・編纂された聖典「新約聖書」。今も、キリスト教徒だけでなく、世界中の人々に巨大な影響力を持ち続ける名著です。「新約聖書」に収められた27の書の中でも、イエス・キリストの生涯と言葉が克明に記されているのが「福音書」です。マタイ伝、マルコ伝、ルカ伝、ヨハネ伝の4つからなる「福音書」は、いわば「新約聖書」の中核ともいえる存在。それぞれが補いあうようにイエスという存在を浮かび上がらせる構成になっています。

番組では、永年に渡って「福音書」を読み続け、自らも糧としてきた批評家・若松英輔さんが、現代の視点からわかりやすく解説します。若松さんによれば、「福音書」は信仰者のためだけの書ではなく、万人に開かれた書だといいます。一見すると信仰者にしか関りのないような奇跡や神秘的な出来事の描写も、文字を追うのとは別な、もう一つの目を見開いて読むと、言葉の奥に隠された深い意味が浮かび上がってくるといいます。それは、それぞれが「私自身のイエス」に出会う体験であるともいえます。そのように読むと、「福音書」は私たちの人生を支えてくれる書となっていきます。

その生涯を通じて、弱きもの、小さきものに徹底的に寄り添い、近づくことをためらう人々の元へこそ出向いていったイエス。彼の言葉と行為は、私たち現代人にとってどんな意味をもつのでしょうか? 「福音書」を万人のために開かれた書であるととらえる視点から、生きることそのものを導いてくれる巨大な書に込められた深い意味を読み解いていきます。

<各回の放送内容>

第1回 悲しむ人は幸いである

【放送時間】2023年4月3日(月)午後10時25分~10時50分/Eテレ

【再放送】2023年4月4日(火)午前5時30分~5時55分/Eテレ 2023年4月10日(月)午後1時5分~1時30分/Eテレ ※放送時間は変更される場合があります

【指南役】若松英輔(批評家・随筆家)【朗読】占部房子(俳優)【語り】小口貴子

イエスはベツレヘムの馬小屋で誕生したとされる。このことから、イエスは貧しい人々、身分低き人々、世間からないがしろにされている人々に寄り添うために生まれたと捉えられてきた。有名な「山上の説教」では、「悲しむ人たちは幸いである」と説かれ、誰が偉いかを競い合う弟子たちには「幼子の一人を受け入れる者は、わたしを受け入れる者である」と窘める。イエスの生涯は一貫して「悲しむ人」「小さき人」「蔑まれた人」たちと共にあったのだ。若松さんは、これらの言葉にはあらゆる宗教を貫く神髄があるという。第一回は、イエスの生誕、受洗、最初の説教などを通して、イエスの生涯に込められた深い意味を探る。

第2回 魂の糧としてのコトバ

【放送時間】2023年4月10日(月)午後10時25分~10時50分/Eテレ

【再放送】2023年4月11日(火)午前5時30分~5時55分/Eテレ 2023年4月17日(月)午後1時5分~1時30分/Eテレ ※放送時間は変更される場合があります

【指南役】若松英輔(批評家・随筆家)【朗読】占部房子(俳優)【語り】小口貴子

「福音書」は魂の糧となるコトバに満ち溢れている。断食修行中に「神の子ならば石をパンに変えてみよ」と問う悪魔に対して「人はパンだけで生きるのではない」といい人間は言葉によって生きるという真理を示すイエス。五つのパンと二匹の魚で五千人もの男を満腹にさせる奇跡を起こしたイエス。深く読み解けば、人々が食したのはイエスによってもたらされた言葉だととらえることもできる。若松さんは、「永遠の命に至らせる食べ物」「あなた方の知らない食べ物」と繰り返し表現されるものこそ、大いなる働きによってもたらされたコトバであり、魂の糧として人々を生かすものだという。第二回は、一見すると信仰者にしか関りがないと思われる出来事や奇跡の描写の深い意味を読み解き、生きることを支えてくれるコトバの力を探っていく。

第3回 祈りという営み、ゆるしという営み

【放送時間】2023年4月17日(月)午後10時25分~10時50分/Eテレ

【再放送】2023年4月18日(火)午前5時30分~5時55分/Eテレ 2023年4月24日(月)午後1時5分~1時30分/Eテレ ※放送時間は変更される場合があります

【指南役】若松英輔(批評家・随筆家)【朗読】占部房子(俳優)【語り】小口貴子

イエスはついに自らの目的を果たすべくエルサレムへ入城する。そこで驚くべき行為に出る。力をもって神殿で商いをしている人たちを追い払うのだ。福音書で唯一イエスが暴力を振るう場面だ。「わたしの父の家を商売の家にしてはならない」。イエスにとって神殿は人間の魂そのものだった。そうとらえると私たちにとって「祈り」という営みが何なのかが浮かびあがってくる。また、姦通の罪で捕らえられた女性を糾弾する周囲の人たちに対しては、「罪のない人間だけが石を投げなさい」と告げ、たしなめる。そこには「ゆるし」という営みについての深い教えが込められている。若松さんは、福音書に描かれる「ゆるし」は、人々が互いに光を見出すような和解の営みだという。第三回は、イエスが語る祈りやゆるしという営みを通して、人間が最も大切にしなければならないこととは何かを深く考える。

第4回 弱き者たちとともに

【放送時間】2023年4月24日(月)午後10時25分~10時50分/Eテレ

【再放送】2023年4月25日(火)午前5時30分~5時55分/Eテレ 2023年5月1日(月)午後1時5分~1時30分/Eテレ ※放送時間は変更される場合があります

【指南役】若松英輔(批評家・随筆家)【朗読】占部房子(俳優)【語り】小口貴子

最後の晩餐が終わり、オリーブ山に向かう一同。イエスは弟子たちに全員が自分を見捨てるだろうと告げる。「決して見捨てない」というペトロに対しイエスは「鶏が鳴く前に三度私を知らないというだろう」と語る。自分を裏切るユダに対しても「しようとしていることに取りかかりなさい」と告げイエスは衛兵たちに捕らえられる。イエスはこんなにも弱き弟子たちを愛しゆるしていたのだ。ついに磔刑に処せられるイエス。「わたしの神、どうしてわたしをお見捨てになるのですか」という最期の言葉の意味とは? そして「復活」という出来事は何を意味するのか? いずれもイエスが生涯を通じて弱き者たちとともにあることを証しだてる深い意味が秘められていると若松さんはいう。第四回は、「福音書」の中でも最も重要とされる、弟子たちの裏切り、磔刑、復活の深い意味を読み解き、イエスの生涯が私たち現代人に何を問いかけているのかを探っていく。

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2023年3月30日