・ 中国の宗教弾圧と外国政府への難民認定阻止圧力を非難-ソウルでNGOシンポジウム(BitterWinter)

ソウルのイベントに出席したマッシモ・イントロヴィーニャ(Massimo Introvigne)氏、リア・ペレクレスツ(Lea Perekrests)氏、ヌーグル・サウト(Nurgul Sawut)氏

エスカレートする弾圧

 韓国のNGO「公共の利益の法律の擁護」、ブリュッセルを拠点にする「国境なき人権」、Bitter Winterが共催するシンポジウム「竜の長い腕: 中国による国内外の信者の弾圧」が20日、ソウルで開かれ、「中国は、中国共産党 の管理下に置かれていない全ての宗教を体系的に一掃する試みを行っている」「中国共産党が中国から逃亡した信者を追跡し、難民認定を阻止するために外国の政府に圧力をかけている」と訴えた。

 この会議は国連の世界難民の日を記念して行われたもので、合わせて中国での宗教弾圧に関するBitterWinterが主に提供した写真展も開かれた。

 シンポジウムでの発表では、中国で最も熾烈な弾圧を受けているのは新疆ウイグル自治区 の人口の過半数を占めるムスリムの住民。ウイグル族 の活動家のナーグル・サウト(Nurgul Sawut)氏は「300万人以上のウイグル族の住民が強制収容所に違法に拘束され、さらに大勢の人々が 拘留所 と刑務所に拘束されています。現在起きている出来事は、体系的なジェノサイドです」と話した。

サウト氏はオーストラリアを拠点に活動しているが、中国で暮らす家族のうち少なくとも12人が強制収容所に拘束、もしくは行方不明になっている、という。

 ソウルのNGO「公共の利益の法律の擁護」の難民の権利を専門とするリー・イル弁護士は「中国の弾圧の規模を理解することは困難です。その理由の一つは、ウイグル族やその他の犠牲者の状況がよく分かっていないためです。また、近代的で、文明が進み、高度な技術を持つ現世的な中国のイメージと一致しないことも理由の一つに挙げられます」と述べた。

 「しかし、真実は明白です。この莫大な規模を考慮すると、現在の弾圧は今世紀最大の人権への脅威だと言えます。その結果、民主主義国家は、貧困にあえぐ国や戦争で荒廃した国だけではなく、主要な貿易国からの難民への対応に迫られています」とイル弁護士は話した。

会議で講演するリー・イル弁護士。会議で講演するリー・イル弁護士。

 弾圧の対象には、チベット仏教、そして、法輪功 や 全能神教会 等の 新興宗教団体 等、他の多くの宗教も含まれているとBitter Winterの設立者で編集長を務めるマッシモ・イントロヴィーニャは告げた。

 同氏は「中国共産党は、国際社会に向け、弾圧を正当化するための大規模な虚偽報道運動を実行しています。例えば、中国共産党は、政治犯、とりわけ法輪功の学習者から臓器を摘出している行為を否定しています。また、同党は2014年にマクドナルドで起きた殺人事件の犯人が全能神教会の信者だと主張したように、全能神教会に対する誤った嫌疑を広めています。この事件は実際には別の宗教団体が引き起こしたものです」と続けた。

 またイントロヴィーニャ氏は、「中国は、禁止された宗教団体で活動した者に3年から7年、もしくは7年以上の懲役刑を与えることを規定した 刑法第300条 は、重大な犯罪を行った者のみに適用していると主張しています。しかし、この主張はプロパガンダに過ぎません。法輪功の学習者、全能神教会の信者、呼喊派生命之道教会 及びその他のキリスト教の教会の信者、さらには、最近のエホバの証人の信者に対する多数の判決から、中国が刑法第300条を中国で禁止されている宗教団体の信仰や聖典を広めた者に適用していることが証明されています」と加えた。

難民のために正義を求む

 約1,000人の全能神教会の信者が韓国で難民認定を申請している。そのうちの2人が実際の拷問の体験を会議で語った。蕭睿(シャオ・ルイ)という仮名を名乗った女性は、12時間に渡り、吊るされ、殴打される壮絶な拷問を受けた際、正式な命令により殺害することが認められていると警察官が認めたことを明らかにした。「殴り殺しても問題ない – これはキリスト教徒を弾圧するための中国共産党のスローガンになっているのです」とルイさんは話した。

体験談を語る全能神教会の信者。

 別の仮名の女性、趙琳(ツァオ・リン)さんも中国で逮捕され、拷問を受けたと報告した。趙さんによると、趙さんが韓国に逃亡した後、中国共産党は趙さんの弟をその他の難民の家族と共にソウルに強制的に向かわせ、「偽の抗議活動」に参加させて、趙さんに「帰宅」を呼び掛けさせたようだ。しかし、中国に帰国した難民は逮捕され、投獄されているため、「帰宅」とは家に帰るのではなく、刑務所に行くことを意味すると趙さんは主張した。

 全能神教会の信者のデータによると、2018年に、警察官による拷問または虐待によって20人の信者が死亡したようだ

 専門家は、世界中の政府に対し、中国に帰国すると逮捕及び拷問に直面する宗教団体の信者を受け入れるよう求めた。中国の当局は顔認識カメラとDNAテストを用いて、信者及びその家族のデータを集めているため、信者が母国で身を隠すことは困難である。

中国の全ての宗教に対する弾圧を描写するパネル。

中国の全ての宗教に対する弾圧を描写するパネル。中国の全ての宗教に対する弾圧を描写するパネル。

 「国境なき人権」のリア・ペレクレスツ副理事は「中国の宗教の少数派の人々は、中国に留まると、あるいは中国に強制的に送還されると逮捕及び拷問に処せられる危険があります。中国は、信教の自由を求めたため、あるいは宗教を信仰したために現在拘束されている被勾留者の人数において、諸外国を圧倒しています」と話した。

 宗教を信仰する受刑者に対して用いられる手法として、ペレクレスツ氏は「四六時中の監視、薬物の強制的な摂取、暴力的な取り調べ、激しい殴打、睡眠の奪取、拷問ラックの利用」を挙げた。さらに同氏は「調査結果は明快であり、中国および難民申請の審理を行う政府の司法への期待も明らかになっています。国家は国際的な追放及び送還禁止の原則に従い、少数派の宗教を信仰する中国からの亡命希望者の強制送還を中止する必要があります。中国に再入国する場合、拷問及び非人道的な扱いを受ける可能性があるためです」と指摘した。

 また、この会議ではBitter Winterが制作した天安門事件及び中国の宗教弾圧を取り上げた映画(Tiananmen and Religious Persecution in China)、そして、宗教弾圧を受けて海外に逃亡した難民を中国共産党が脅す手法に関する映画(The Long Arm of the Dragon)が上映された。

マルコ・レスピンティ(Marco Respinti)氏はイタリア人のジャーナリスト、エッセイスト、翻訳家、講演者である。イタリア国内外の複数の紙上およびオンラインのジャーナルや雑誌に寄稿している。著書の一つ、2008年に出版した作品では中国における人権に懸念を示していた。ミシガン州メコスタを拠点とするアメリカの無党派・非営利の教育団体、Russell Kirk Center for Cultural Renewal(ラッセル・カーク文化再生センター)の上級研究員の肩書きを持つ。オランダのハーグを拠点とする非営利・無党派・汎ヨーロッパの教育団体のヨーロッパ再生センター(CER)の設立者の一人でもあり、委員に就任している。そして、CESNURジャーナルBitter Winterで担当役員を務める。

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*Bitter Winter(https://jp.bitterwinter.org )は、中国における信教の自由人権 について報道するオンライン・メディアとして2018年5月に創刊。イタリアのトリノを拠点とする新興宗教研究センター(CESNUR)が、毎日8言語でニュースを発信中。世界各国の研究者、ジャーナリスト、人権活動家が連携し、中国における、あらゆる宗教に対する迫害に関するニュース、公的文書、証言を公表し、弱者の声を伝えています。いかなる宗教団体や政治団体とも関係をもたず、政治問題について特定の立場を取らない。中国全土の数百人の記者ネットワークにより生の声を届けている。記者たちは逮捕されるなどの危険を顧みず、中国の現状や、宗教の状況を毎日報告しており、多くの場合、他では目にしないような写真や動画も送信している。本誌は、中国で迫害を受けている宗教的マイノリティや宗教団体から直接報告を受けることもある。編集長のマッシモ・イントロヴィーニャ(Massimo Introvigne)は教皇庁立グレゴリアン大学で学んだ宗教研究の領域で著名な学者。「カトリック・あい」はBitterWinterから承認を受けて記事を転載します。

 

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2019年6月23日