・香港当局、陳枢機卿の中秋節恒例の受刑者への月餅配布を禁止

(2020.9.4 カトリック・あい)

 国家安全維持法の導入を機に、中国政府・共産党による香港市民の”反政府・民主主義擁護”運動を排除する直接、間接の動きが激しくなっているが、そうした運動の精神的な支えともいわれるカトリック香港教区の元教区長、陳日君・枢機卿の動きを封じ込めようとする措置が露骨になって来た。

Hong Kong cardinal accused of politics over cake campaign

 アジアの有力カトリック・メディアUCANews(https://www.ucanews.com/country/east-asia)が3日付け香港発で伝えるところによると、香港行政庁の懲教署が、陳日君・枢機卿に対して、枢機卿が毎年、中秋節に行ってきた受刑者たちへの月餅の配布を、「政治的な意図がある」として中止を命令した。

 中秋節は中国や香港などで春節清明節端午節とならぶ重要な伝統行事で、香港では10月1日がその日に当たるが、この日に家族や友人などが集まって、月餅を食べ、皆の幸せを祈り、喜び合う風習がある。

 枢機卿は、2010年から、香港の刑務所の受刑者たちに「自分たちも忘れられていない。自分のことを思ってくれている」と安らぎを得てもらうことを狙いに、この日を前にした月餅の配布を続けてきた。

 UCANewsによると、枢機卿は今年も配布を計画し、自身のブログやFacebook、教区の週刊新聞に、そのための献金を呼び掛けていたが、8月31日に、刑務所や受刑者を管理・監督する懲教署から、この行為は政治的意図があると判断されるので、配布を認めない、との文書が送られてきた。

  中国文化圏では、毎年、中秋節に家族や友人などに月餅を配る風習がある(Photo: pikist.com)

 枢機卿は、従来から、受刑者全員に均等に、差別なく配布するように、との刑務所の担当者の要請に従って、「政治的な差別などなしに、配布している」とし、「私は毎年、この時期に刑務所を訪問してきましたが、受刑者たち月餅を楽しみに待っていてくれます」と説明。「そうした彼らを失望させるのは、とても残念です」と述べ、それでも、「(彼らに配る予定の月餅を配ることで)路上生活者や貧しい家族のように助けを求めている人たちが、ほんの少しでも喜びを味わってくれれば、役に立てるでしょう」としている。

 

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2020年9月4日