・香港の湯漢・枢機卿が、教区司祭たちに、中国政府・共産党の圧力に屈する?通達

(2020.9.3 カトリック・あい)

Hong Kong priests asked not to offend communists

 国家安全維持法違反で逮捕、保釈された後、保釈延長手続きのため2日に出頭した香港・大埔警察署前で、記者たちの質問に答える民主活動家、周庭Agnes Chow Ting)氏。彼女もカトリック信徒だ(Photo: AFP)

 アジア地域の有力カトリック・メディアUCANewsが2日付けで伝えたところによると、カトリック香港教区の使徒的管理者、湯漢枢機卿が8月28日付けで、教区の全司祭あてに通達を送り、 ミサ中の説教などで、中国国家安全維持法が導入されて以来、民主運動に圧力を強める中国政府・共産党、香港行政庁の姿勢に対して、「卑劣で攻撃的な言明」をしないように求めた(https://www.ucanews.com/news/hong-kong-priests-asked-not-to-offend-communists/89382)。

 香港では現役の教区長が急死して以来、公式に教区を代表する教区長をバチカンが選任せず、暫定的に「使徒的管理者」を置くという状態を続けている。

 UCANewsによると、湯漢枢機卿は通達で、カトリック教会の一部の人々を含む人権活動団体が、香港の民主主義社会を抑圧する中国政府・共産党に対して批判を続けていることを念頭に、小教区の司祭や幹部が「憎悪をほのめかしたり、憎悪を引き起こしたり、社会不安を引き起こしたり、キリスト教の精神に反したり、典礼の中でふさわしくない、卑劣で攻撃的な発言に頼るべきではない」と言明。

 そして、「説教の目的は、社会的または政治的問題についての個人的または意見を伝えることではなく、神のメッセージを伝え、忠実な人々がキリスト教徒としての生活ができるようにすること… この重要な時期に、私たちの信徒たちは、典礼を通じて司祭から慰めを受け、建設的で励ましの言葉を聞きたいと思っています」「これは侮辱的で挑発的な表現を用いて達成することは決してできない」と言明。信徒たちが「混乱と方向感覚を見失うのでなく、平和と光のうちに主の家を出て行ける」ように助けることを、司祭たちに求めた。

 香港が英国から中国に返還された際、中国政府・共産党は、香港で民主的な政治・社会を続けることを保証する「一国二制度」を約束していたが、近年になって、中国本土と同じ共産主義一党独裁制に組み入れる姿勢を、香港政庁を通し、あるいは直接、強め、これに反対する香港市民との間で緊張状態を続けた末、6月末に中国国家安全維持法を香港に導入。一挙に、反対勢力のリーダーたちの大量検挙など、力による一党独裁制移行の動きを強めている。

 こうした中で、カトリック教会の司祭、信徒の間では、元香港教区長の陳日君・枢機卿を筆頭に、司祭や有力信徒などの中に、信教の自由、人権を守る立場から、香港政庁や中国政府・共産党に批判的な姿勢を続ける人々と、湯漢枢機卿のように、抵抗を避け、政治的な発言や行動を封印して、事なきを得ようとする人々、そして、どちらの側にもつかず、黙って様子を見ようとする人々にに分かれているようだ。

 ある司祭はUCANewsの取材に「湯漢枢機卿の通達は、北京の統制を受けた香港政庁の影響を受けたものです。教区は政庁との対決を望んでいない」と語った。

 香港教区の正義と平和委員会は「香港の民主主義を守る祈り」を呼び掛ける意見広告を新聞に掲載しようと募金集めを始めていたが、湯漢枢機卿が通達で、この運動を支持しないことを言明したのを受けて、8月29日に計画を取りやめた。

 UCANewsによると、香港には全人口の約12%、約90万人のキリスト教徒がおり、うち50万人がカトリック、40万人がプロテスタント諸派に属しているが、プロテスタント教会の中にも、中国政府・共産党と香港政庁の圧力に屈する動きがでており、昨年、香港政庁が独自の政府が治安維持法の導入を検討した際、これに反対する声明に名を連ねようとした牧師に、やめるように求めるケースが見られたという。

 

 

 

 

 

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2020年9月3日