・香港でまた大量逮捕者・国連の人権専門家グループが国家安全維持法を非難

 (2020.9.7 カトリック・あい)

 中国政府が香港の民主化の動きを封じる国家安全維持法を導入して2か月が過ぎたが、香港治安当局が6日、導入直後の7月1日に続いて、大量逮捕に踏み切った。この日に実施予定の「香港立法会(議会)選挙を香港行政庁が新型コロナ感染を理由に延期したこと」に対する散発的な抗議集会を、同法に定めた「違法集会」に当たるとして、参加者を一斉検挙したもの。現地からの複数の報道によると、逮捕者は少なくとも289人に上り、この中には、集会の周辺にいた一般市民も含まれているという。

6日、香港の九竜地区で、立法会選の早期実施を要求する民主活動家ら(藤本欣也撮影)

6日、香港の九竜地区で、立法会選の早期実施を要求する民主活動家ら(左=産経新聞・藤本欣也撮影)同日、香港市内のショッピングモールで集会参加者に警告する治安警察(右= Isaac Lawrence/AFP)

 中国政府の香港への国家安全維持法導入以来の相次ぐ大量逮捕は、市民に恐怖を植え付け、中国政府や香港行政庁などへの批判や抗議活動を封じ込める狙いがあるとみられている。

  国連の人権特別報告者ワーキング・グループは4日、中国国家安全維持法の香港への導入について14ページにわたる報告書を、国連人権局のウエブサイトに掲載する形で発表。「確実に基本的人権を侵害している」との判断を示し、香港における政治活動家たちを訴追するために使われることに懸念を表明した。

  報告書はまた、国家安全維持法の導入は、香港における裁判官と弁護士の独立性、表現の自由に関する権利を損なうことが懸念される、としている。

  同法は、中国政府がある人を破壊的、分離主義的な行為、あるいはテロ、外国勢力と共謀した動きをしたと判断すれば、最高で終身刑に処することを可能とするもので、中国政府と香港行政庁は「香港の安定と繁栄を保証するために必要な措置」と主張しているが、報告書は、「この法律の執行は、国際法の元での中国の法的義務に準拠していない」と判断。

 さらに、「この法律は、肝心な点で正確さを欠いており、明確な基本的権利を侵害している」と批判し、「発言、表現、平和的な集会の権利を含む、守られるべき基本的自由を規制し、制限するために使われてはならない」と強く訴えた。

  また、香港の人権を守る活動をしている人々の正当な取り組みが、この法律によって違法とされることを強く懸念。 中国も署名している「市民的及び政治的権利に関する国際規約」(国際連合総会によって採択され、1976年に発効した自由権を中心とする人権の国際的な保障に関する多数国間条約)に準拠していることを確認するために、この法律にある「域外管轄権」(中国、香港以外の人々も適用対象とする規定)の行使についてどう考えているのか、説明するように、さらに、この法律が、国際的な人権に対する義務を果たすものとなっているのかを調べる「独立調査官」を任命するよう、中国政府に求めている。

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2020年9月7日