・江西省でカトリック”地下教会”強制捜査・聖像破壊、山西省でプロテスタント家庭教会信者に棄教の脅し

*江西省余江教区のカトリック”地下教会”に強制捜査、閉鎖も

   どれほど都心から離れた地域であっても、愛国教会への加入を拒んだ地下教会の聖職者と信者は中国共産党の絶え間ない取り締まりと迫害を避けられないでいる。

   2018年9月のバチカンと中国間の合意 に続き、中国共産党 は カトリック地下教会 の聖職者全員に 中国天主教愛国協会 加入と、中国の「独立、自律、自主管理」の教会の原則の受け入れを強要している。拒んだ聖職者は迫害を受け、頻繁に逮捕されている。彼らの教会は嫌がらせを受けたり宗教的シンボルを破壊されたりした挙句、多くは閉鎖されている。

 バチカンは6月28日、新たな指針を公表した。聖座は良心に照らし合わせて中国天主教愛国協会への加入を拒む決断を下した者に加入の強制はしないと明言したのだ。

集会場が荒らされる前と後の様子。(内部筋が提供)集会場が荒らされる前と後の様子。(内部筋が提供)

 5月6日、中国南東部、江西 の地元政府の役人が余江教区のカトリック教集会場に強制捜査に入った。会衆の話では、迫害と監視を避けるために礼拝所を遠隔地の山村に設け、先祖を弔う伝統の中国式寺院を模したありきたりの古い集会場のような外観にしていたという。しかしその奮闘もむなしく、信者たちは中国共産党の厳しい追及を逃れることはできなかった。

 捜査が入ったときには会衆は誰もおらず、会場内にあった宗教関連のシンボルはすべて無残に砕かれ、破壊されていた。

 匿名希望の信者は強制捜査後に見た状況について「会場に行くと、正面の壁にあったイエスの十字架像が取り外してあり、屋外の山近くにある溝に投げ捨てられていました。壁の両側にかかっていた宗教画の額は粉々になって床に散らばっていました。祭壇の前にあしらわれた『イエス・キリスト』の文字を使った図案と十字架まで撤去されていたのです」と説明した。

宗教画は打ち砕かれ、正面祭壇の「イエス・キリスト」を表すJHSの文字と十字架は取り外された。(内部筋が提供)宗教画は打ち砕かれ、正面祭壇の「イエス・キリスト」を表すJHSの文字と十字架は取り外された。(内部筋が提供)

 5月13日、役人は再び集会場を違法で捜査した。集会場に隣接する小さな2階建ての建物にも入り込み、室内にあったカトリックに関わる物品を没収した。集会場の外壁には標語「宗教関連施設の管理を強化し、邪教 浸入に断固抵抗しよう」が書きつけられた。

集会場の外壁には標語「宗教関連施設の管理を強化し、邪教浸入に断固抵抗しよう」が書きつけられた。(内部筋が提供)集会場の外壁には標語「宗教関連施設の管理を強化し、邪教浸入に断固抵抗しよう」が書きつけられた。(内部筋が提供)

 集会場を荒らし回った後、政府の役人は会衆がその場でミサを行うことを禁じ、従わなかった場合は神父を逮捕して教会堂を取り壊すと言って脅した。

 中国共産党は、良心に照らし合わせて中国天主教愛国会加入を拒んだ者が運営する教会をあらゆる手段を使って支配しようとしている。継続的な嫌がらせや脅しであれ、聖職者の逮捕であれ、司祭と神父を欠けば教会は崩壊して信者たちは去っていくだろうと考えて行っているのだ。

 そのような事態を避けるため、信者たちは神父に対し、危険を冒して礼拝所に来ることのないように頼んでいる。「私たちは逮捕されても構いませんが、神父は絶対に守らなければなりません」。古参の信者たちは言った。

隣接する2階建ての建物内部にあったカトリック教に関わる物品は押収された。(内部筋が提供)隣接する2階建ての建物内部にあったカトリック教に関わる物品は押収された。(内部筋が提供)

 「中国共産党は『非行集団による犯罪を撲滅し、悪を根絶する』との口実で宗教信仰の徹底的な取り調べを行っています。各村の役人に担当区域の村民を捜査するよう求めています。信仰を持つ人物を特定したら、上位当局に報告しなければなりません。このような捜査が続けば宗教関連施設は残らず検挙されるでしょう。どれだけうまく集会場を隠しても見つかってしまうはずです」と信者は言った。

 またこの男性は、「非行集団による犯罪を撲滅し、悪を根絶する」キャンペーンの期間中に政府の役人が中国天主教愛国会加入を拒んだ余江教区各地の集会場を訪れ、見張ったり、脅したりしたことを明らかにした。家主は信者の集まりを開くことを禁じられ、20万人民元(約320万円)の罰金を科される可能性もあると脅された。「随分長い間、聖餐式を行っていませんが、かといって適当なやり方で実施したくないのです」と信者は付け加えた。

 

 

 

 

山西省で100人超す家庭教会信者に逮捕ちらつかせ棄教を迫る

 匿名希望の教会員がBitter Winterに伝えたところによると、会場が攻撃を受けたのは午前9時頃、牧師の主導で信者たちが主を称える讃美歌を歌っているときだった。先頭の警察官が叫んだ。「動くな。写真を撮ってはいけない。携帯電話と鞄を足元に置け」。

昨年12月16日に地元の民族宗教局が既にその会場を閉鎖していたが、会衆は集会を続けていたのだ。当局は房角石教会が宗教事務条例に反する違法の集会場だと言い放ち、信者らが「著しく公序良俗を乱した」ために教会を封鎖し、閉鎖しなければならないと言った。

動画 1:警察が房角石教会の集会場に強制捜査に入った。信者は写真撮影を禁じられた。

 正規警察官、予備警察官らが現場を警備し、信者は会場の出入りを禁じられた。集会に出席していた教会の牧師と100人を超える信者たちは少人数のグループごとに公安代理部に連行され、尋問を受けた。出発前にはそれぞれが写真を撮られた。

 信者の詳細な個人情報、家族情報だけでなく宗教的立場も調査中に登録された。また「保証書」と、教会との関係を断ち切り「共産党と政府の権限を断固支持」することを誓う「悔い改めの供述書」への署名を強いられた。信者が釈放されるためには親族に警察署に来てもらい、代理で保証書に署名してもらわなければならなかった。家族たちは宗教を信じる親族の見張りを命じられ、信者は信仰を続けるなら厳しい処罰を下すと言われ脅された。

動画 2:信者たちは1人ずつ警察に連行された。

 房角石教会の強制閉鎖は決して珍しい事件ではない。この数か月間でおびただしい数の家庭教会が閉鎖し、全国でキリスト教徒が逮捕されている。中国東部、浙江省台州市では3月から4月の間だけで少なくとも10の家庭教会が閉鎖されている。

 4月12日、中国東部、山東省済南市の活石教会が「無認可」だとして封鎖された。

済南市の活石教会が封鎖された。 済南市の活石教会が封鎖された。

 6月20日には中国南東沿岸部の福建省廈門市海滄区にある海福教会も閉鎖されている。地域の民族宗教局は海福教会が「違法な集会を行い、世間を妨害した」と述べ、教会責任者の呉斌(ウー・ビン)氏を三自教会に無理に加入させようとしたが、氏は拒否した。

行政は海福教会を閉鎖処分にした。行政は海福教会を閉鎖処分にした。(写真はWeChatより引用)

 訴訟や司法活動を通じて中国国民の利害の主張を支援する弁護士、法律の実践者、学者、活動家の権利保護運動「維権」の弁護士らによる6月17日の報告によると、家庭教会の閉鎖を目的とした大規模キャンペーンは廈門市内の40以上の教会に影響を及ぼした。

 殿前教会、金尚教会、瑞景教会、虔僕教会、十一間教会、益城教会、城光教会、庇哩亞教会をはじめとする数多くの教会である。

 迫害に直面した廈門市の牧師は「私たちの権利を守るべく義の道に沿って牧師の仕事を続けなければなりません」と述べた。

*Bitter Winter(https://jp.bitterwinter.org )は、中国における信教の自由人権 について報道するオンライン・メディアとして2018年5月に創刊。イタリアのトリノを拠点とする新興宗教研究センター(CESNUR)が、毎日8言語でニュースを発信中。世界各国の研究者、ジャーナリスト、人権活動家が連携し、中国における、あらゆる宗教に対する迫害に関するニュース、公的文書、証言を公表し、弱者の声を伝えている。中国全土の数百人の記者ネットワークにより生の声を届け, 中国の現状や、宗教の状況を毎日報告しており、多くの場合、他では目にしないような写真や動画も送信している。中国で迫害を受けている宗教的マイノリティや宗教団体から直接報告を受けることもある。編集長のマッシモ・イントロヴィーニャ(Massimo Introvigne)は教皇庁立グレゴリアン大学で学んだ宗教研究で著名な学者。ー「カトリック・あい」はBitterWinterの承認を受けて記事を転載します。

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2019年7月9日