・東京教区、21日の公開ミサ条件付き再開を前にー緊急事態下における聖体拝領について

(2020.6.19 カトリック東京教区ニュース)

 カトリック東京大司教区のみなさま「緊急事態下における聖体拝領について」カトリック東京大司教区 大司教 菊地功

 6月21日から段階的に教会活動が再開され、毎週、とはいかないまでも、ミサにあずかり、聖体拝領する機会を持っていただくことができるようになります。長い期間、教会活動が停止されていたことで霊的な渇きの中で苦しまれ、犠牲をささげてくださった多くの方々に、心から感謝いたします。

 日本は他の国に比べれば感染者数も少なく、死亡された方も少ないのは事実ですが、その理由は解明されておらず、また感染自体も終息したわけではありません。加えて、高齢の方にあっては、感染者は少ないものの、重篤化して死に至る方の割合が高く、予防法や治療法が確立していない現在、しばらくは、慎重に対応する必要がある、と判断しています。

 教会活動の再開にあたっては、通常とは異なるさまざまな制約をお願いしていて、大変心苦しいのですが、私は、できる限り教会に来られる、どなたも祈りの時に感染したり、死のリスクにさらされたりしないことを、心から願っていますし、そのために、緊急避難的にさまざまな措置を講じて、徐々に通常の状態に持って行くことができればと思います。

 皆さまお一人お一人の良識ある判断に信頼しておりますが、自分が新型コロナウイルスに感染しないこと以上に、他人にウイルスを感染させないことを、常に心にとめていただければと思います。また信徒の方々もそうですが、高齢者の多い司祭団の生命も、リスクにさらすことのないように、心配りの中で制約をしばらくの間忍んでいただければと思います。ミサの再開には、一人ひとりが常に、「自分は感染している可能性がある」という自覚を持つことが、欠かせません。教会の定めているさまざまな制約は「禁止事項」ではなく、互いの命を守るための「共通善に基づいた配慮ある判断」をお願いしているものです。

 社会全体の状況を見ながら、できる限り早急に、通常の状態に戻すことができるように、日々検討を続けておりますので、しばらくの間は、不便を忍んでくださるように、重ねてお願いいたします。

 さてその中での、聖体拝領に関してのお問い合わせが相次いでおります。もとより、現在の日本の教会では手による聖体拝領を主としていますが、当然口による聖体拝領が禁止されているわけではありません。通常時にあっては、そうなのですが、以下に掲げる理由から、再開の初期の段階では、できる限り手での拝領としてくださるようにお願いしております。もちろん、口での拝領を希望される場合は、司祭にご相談の上、別途ミサの時ではない拝領の機会を設けていただいてくださって構いません。

 WHO(世界保健機構)によれば、ウイルスに汚染された表面に手で触れることと、せき・くしゃみ・近距離の会話による唾液の飛沫に接触することが新型コロナウイルスの主要な感染源であるとされています。つまり、手も口もウイルスに汚染されている可能性はゼロとはいえず、厳密には現時点で聖体拝領そのもの再開することは安全でないと指摘する医療関係者もおられます。

 しかし、新型コロナウイルスはアルコール消毒によって死滅することが報告されており、手指はアルコールで簡単に消毒することが可能です。実際、公開ミサの再開にあたっては、信徒の皆さまには、聖堂に入る前にアルコールで手指の消毒をすることをお願いしています。また、司式司祭と聖体奉仕者には、聖体授与の前に再度手指をアルコール消毒することを勧めています。また状況に応じて、奉仕者が、拝領の列に並ぶ皆さんの手指を、聖体拝領直前にアルコールで消毒することも可能となります。

 ミサの前、あるいは聖体拝領の直前に、全てのミサ参加者が口腔内を薬剤で洗浄することは、現実的とはいえません。つまり、手指とは異なり、口腔内を消毒した状態で聖体拝領に臨むことは不可能であります。

 新型コロナウイルスに関する最新の学術論文「唾液:2019-nCoVの潜在的な診断価値と感染」(International Journal of Oral Science article number 11,2020)には、次のように記されています。

・唾液は新型コロナウイルスの濃厚接触感染の原因となる(陽性患者の90パセーント以上の唾液からウイルスが検出されている)。
・ウイルスを含んだ唾液飛沫は、せきやくしゃみだけでなく、呼気の中にも含まれている。
・医療用マスクをしていたとしても新型コロナウイルスは目の粘膜からも感染する可能性がある。

 また国立感染症研究所感染症疫学センターの「濃厚接触」の定義によれば、マスクなどをして短時間、感染した方と一緒にいただけでは濃厚接触となる可能性は低いのですが、「患者(確定例)の気道分泌物もしくは体液等の汚染物質に直接触れた可能性が高い者」は濃厚接触と見なされる可能性を持っています。

 以上から、現時点で口での聖体拝領を行うことは、聖体を授ける司祭、聖体奉仕者の生命を著しく危険にさらすリスクが、手での聖体拝領よりも高いと判断せざるを得ません。

 私が参考にしている米国のカトリック医師会の指針などにもありますが、仮に口で聖体拝領をしていただくためには、そのたびごとに司祭または聖体奉仕者の手指を消毒するなどの措置が必要となります。従って、上述のように、口での拝領はミサの聖体拝領時ではなく、別途司祭に相談の上、例えばミサ終了後などに拝領され、司祭や奉仕者がその都度手指を消毒できるようにご配慮いただきますことを、切にお願い申し上げます。

 どうかどうか、人数も少なくなり高齢でもある司祭の生命を守ってくださるように、また奉仕してくださる信徒の方をリスクにさらすことのないように、ご配慮いただきますように、お願い申し上げます。

 信徒の皆さまにおかれましては、「他者の健康と生命を脅かさないこと」を十分念頭においた上で、お互いに十分な心配りの中で、再開されたミサ聖祭にご出席いただくようお願いいたします。

このエントリーをはてなブックマークに追加
2020年6月20日