・日本の司教協議会が「聖歌の創作と認可および公表に関する指針」を発表

(2019.8.2 カトリック・あい)

 カトリック中央協議会発表によると、7月8日から10日にかけて開かれた日本カトリック司教協議会の今年度第1回臨時司教総会で、聖歌の創作と認可および公表に関する指針が承認された。

 指針の全文と指針の公布にあたっての白浜 満司教(日本カトリック典礼委員会委員長)のコメントは以下の通り。

【指針全文】

 新しい歌を主に歌え-聖歌の創作と認可および公表に関する指針-

典礼における歌の重要性
1 「新しい歌を主に歌え」(詩編 96・1)。「主の再臨を待ち望みつつ一つに集まるキリスト信者は、詩編、賛歌、霊歌をともに歌うよう使徒から勧められて」(コロサイ 3・16 参照)います。実際に、聖霊に促されたキリスト信者は、いつの時代にも、世界中のどの地域においても、自分たちの信仰の喜びを、歌をもって表してきました。「歌は、心の喜びのしるし」であり、また、古来、「よく歌うことは倍祈ることになる」と言い伝えられてきたからです。こうして、歌うことは、典礼の中で非常に重要な役割をもつものとなってきました。それゆえ、キリスト信者が自分たちの信仰を培い、その喜びを生き生きと伝えていくために、たえず「新しい歌」を創作し続けることは、大いに勧められます。

本指針の目的
2 本指針でいう「聖歌」とは、ミサや聖務日課などの典礼で用いる式文を歌唱するための旋律のほか、典礼や信心行為において歌われるために作詞・作曲される一般賛歌(会衆
用賛美歌)を指しています。すなわち、典礼暦年中の主日・祝祭日・週日のミサ、諸秘跡や準秘跡の執行を伴う典礼、聖務日課(教会の祈り)など、小教区や修道院の共同体が参加する公的性格を帯びた祭儀で歌われる聖歌のことです。そして、このような聖歌は、会衆が十全かつ行動的に典礼祭儀に参加するよう促し、声の一致によって、心の一致をいっそう深めるものであることが望まれています。本指針は、喜びをもって福音を伝えていくために、日本の教会において「新しい歌」の創作を促し、そのための留意事項を再確認
し、新しい作品を認可する必要性と、適切な公表の道筋を提示することを目的としています。

歌詞について
3 創作された新しい歌は、聖霊によって導かれる神の民の「信仰の感覚」の中で、とくにその祈りとしての品位が識別され、淘汰され、歌い継がれてきました。「ことばと結びついた聖歌が、荘厳な典礼の必要ないし不可欠の部分となっている」ことに鑑みながら聖歌を自由に創作する場合、歌詞についてはカトリック教会の信仰を正しく表現し、信者の信仰を深め、豊かにする内容のものであることが大切です。

作品の認可
4 創作された作品がよりふさわしい聖歌となるよう、その作品が使用される範囲に応じて、教区司教あるいは司教協議会の責任のもとに作品が検討され、認可を受ける必要性があります。

⒜ 教区内での使用の場合
5 聖歌の中で、典礼や信心行為において歌われるために作詞・作曲される一般賛歌(会衆用賛美歌)については、その使用範囲が一つの教区に限られている場合、その教区司教に認可の責任があります7)。教区司教は提示された一般賛歌について、教区の典礼委員会などの協力を得て認可の可否を判断します。認可を与える際には、その一般賛歌を用いる条
件(歌われる場所や期間など)を明確にするようにします。また、教区司教が必要と判断した場合は、提示された一般賛歌の認可を、司教協議会の典礼委員会に依頼することもできます。

⒝ 教区を超えて使用される場合
6 教区を超えて使用されることが想定される場合は、司教協議会にその認可の責任があります。

⒞ 修道会・修道院での使用の場合
7 修道会もしくは修道院の典礼でのみ歌うために作詩・作曲された聖歌は、上記 5 と同様に教区司教にその認可の責任があります。なお、教区を超えて使用されることが想定さ
れる場合は、司教協議会にその認可の責任があります。

⒟ 司教協議会が公認した式文に作曲する場合
8 歌唱ミサのための旋律、典礼暦年を通じて執り行われる特別な儀式のための旋律、聖務日課(教会の祈り)のための旋律、諸秘跡や準秘跡の執行を伴う典礼のための旋律、に関しては、司教協議会の認可を必要とします。

9 詩編に作曲する場合、典礼における歌唱を考慮して翻訳され、司教協議会によって認可された詩編を用いるようにします。

⒠ 認可後の対応
10 本指針に従って認可された作品を改変する場合は、あらためて認可を受けるようにします。

11 本指針に従って認可された作品を公表する場合は、認可を受けたことを明示するようにします。

聖歌集の認可・発行
12 聖歌集の認可・発行に際しては、2006 年度日本カトリック司教協議会の臨時司教総会における次の決定に基づきます。

「以下の条件のもとで聖歌集・教会音楽作品集等が発行される場合、教区司教による出版認可の前に、日本カトリック典礼委員会による事前の監修を受けることを承認する。

1.公式の典礼式文に作曲した楽曲を掲載するもの(監修の対象は公式の典礼式文を用いた楽曲とする)。

2.全国的に入手可能な方法で発行されるもの」。
13 教区あるいは小教区が独自の聖歌集を編集・発行する場合は、教区司教の認可を受けるようにします。教区を超えて活動する修道会やカトリックの諸施設などが独自の聖歌集を編集・発行する場合は、司教協議会の認可を受けるようにします。

歌詞と旋律の著作権
14 各共同体や団体が独自の聖歌集を編集したり楽譜を掲載した会衆用式次第などを作成したりする際に、既存の作品を転載する場合、以下の点に留意します。

① 歌詞や旋律に著作権が存続しているか否かを事前に確認します。

② 日本音楽著作権協会(JASRAC)などの団体および個人が著作権を管理している作品は、それぞれが定める規定に従って、所定の手続きが必要です。

③ 海外で作詞・作曲された作品の場合は、海外の著作権管理団体や出版社等を通じて使用許諾を受けなければならない場合があります。既存の訳詞を用いる場合は、②
と同様の手続きが必要です。

15 聖書のことばをそのまま用いて作曲する場合、聖書の発行元が定める規定に従って、使用許諾の申請が必要です。

16 司教協議会が認可した公式の典礼式文を使用する場合、司教協議会が定める規定に従って、使用許諾の申請が必要です。

ウェブサイトによる作品の公表
17 団体のものであれ個人のものであれ、ウェブサイトを通じて新しい作品を公表する場合も本指針の規定に準じて認可を受けるようにします。また、既存の作品をウェブサイトに掲載する場合は、日本音楽著作権協会などの各団体の規定に従って、使用許諾の申請が必要です。

2019 年 7 月 8 日 日本カトリック司教協議会

・・・・・・・・・・・

【白浜 満司教(日本カトリック典礼委員会委員長)のコメント】

「新しい歌を主に歌え-聖歌の創作と認可および公表に関する指針-」が公布されるにあたって

このたび、2019 年 7 月に開催された日本カトリック司教協議会臨時司教総会の承認を受けて、聖歌の創作と認可および公表に関する指針が公布されることになりました。その
意図を皆さんにご説明申し上げ、ご理解とご協力をお願いしたいと思います。

 日本カトリック司教協議会は、2002 年 3 月にローマ教皇庁から公布された『ローマ・ミサ典礼書』規範版第 3 版に基づいて、現行『ミサ典礼書』の改訂作業を開始しました。そして、2014 年 5 月に、典礼秘跡省から、日本の教会における適応を盛り込んだ「ローマ・ミサ典礼書の総則」(改訂訳)を認証していただきました。

 その後、日本の教会においては、2015 年 11 月 29 日から、従来のミサの式次第を用いつつ、所作の大部分に関しては、認証された新しいミサの総則(改訂訳)に基づく典礼が実施されてはいるものの、一日も早い「ミサの式次第」等の認証が待たれているところです。

 日本カトリック典礼委員会では、「ミサの式次第」の認証後に、新しい式文の歌唱のための作曲のあり方を念頭に置きながら、同時に、ミサの式文以外の分野でも、新しい聖歌の創作(作詞・作曲)を促し、それらを認可し、公表していく手続きを明確にするために、今回、「新しい歌を主に歌え」という指針をととのえました。

 本指針は、すでに教会で、あるいは一般社会で指摘されてきた規則を、最小限度整理したもので、インターネットなどによる新しい媒体に対応していくためのマナーの確認でもあります。

 「新しい歌を主に歌え」という詩編作者の呼びかけにこたえて、本指針が、今後、世に出されていく作品の「祈り」としての品位を高め、また、将来、日本の教会のために、新
しい聖歌集を生み出す助けとなることを願っています。

2019 年 7 月 22 日 日本カトリック典礼委員会委員長 白浜 満

 

このエントリーをはてなブックマークに追加
2019年8月2日