・教皇の同性婚に関する発言について、菊地大司教が見解

(2020.11.7 カトリック・あい)

  10月21日にローマ国際映画祭で初上映されたロシアのエフゲニー・アフィネフスキー監督によるドキュメンタリー「Francesco」の中で、教皇フランシスコが、「同性カップルはパートナーシップ制度『シビルユニオン』によって法的に保護されるべき」との見解を明らかにしたとして、大きな議論を呼んでいる。

 この映画の中で、教皇は「同性愛者は神の子であり、家族の中に存在する権利がある。(同性愛者であることによって)放り出されたり、惨めな状況におかれたりすることがあってはならない」とし、 さらに「シビルユニオン法の制定が必要だ。それにより彼らは法的に保護される。私はこの法律の施行を擁護してきた」と述べているという。

 カトリック教会は、同性志向自体は罪ではないが、同性愛行為は罪であり、同性愛者は尊厳を持って扱われるべきとしながらも、同性婚には反対の立場を取っており、教皇のこのような発言に対して、世界の信徒を含む関係者の間に当惑の声も出ているようだ。

 この問題について、菊地・東京大司教は6日、東京教区のインターネットサイトで、東京教区の聖職者、信徒宛てに以下の見解を発表した。

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教皇フランシスコの同性婚に関する発言について(原文のまま)

 ドキュメンタリー映画「Francesco」における教皇フランシスコのインタビュー内容について、過日報道がなされました。教皇フランシスコのこの発言は全世界で報道され、教会内外からさまざまな反応が出ています。この発言について、東京大司教としての見解を以下に記します。

1: 映画において実際にどのような発言があったのかは、その映画を見ていない段階で確実に知ることは出来ません。報道された断片的な言葉によれば、教皇フランシスコは、何人も性的指向・性自認の如何によって、家庭から排除されてはならないことを指摘しています。

 性的指向・性自認の如何によって人を裁いてはならないことや、これまでの同性愛者に対する教会の裁きの態度について深い反省を述べてこられた教皇フランシスコの姿勢は、ここでも一貫しています(例えば2016年6月26日のアルメニア訪問時の機内記者会見など。また使徒的勧告「愛のよろこび」250参照)。教会も同様に、性的指向・性自認の如何によってだれかを教会共同体から排除するような態度を否定します。

2: 教皇フランシスコの発言は、パートナーとして生活している同性愛の方々のみならず、性的指向・性自認の如何を問わず、すべての人が差別されることなく尊厳が守られなくてはならないとする教皇の姿勢の表れです。これは2013年の教皇就任以来繰り返し強調されてきた、いつくしみ深い教会、だれひとり排除されない教会、隅に追いやられた人のもとへ出向いていく教会などという教皇の考えと一貫性のある発言であり、すべてのいのちを守るためという呼びかけを具体化するものです。

 また教皇の発言の後半は、10年ほど前のアルゼンチンにおける同性婚の法制化議論において、生活をともにする人が差別されることなく公的保護を受けられるようにするべきだという趣旨の発言をしたことに触れたものだ、と伝えられています。

 なお、この発言は「婚姻の秘跡」の教義に関して述べたものではありません。「婚姻の秘跡」に関するカトリック教会の教義に変更はありません。(使徒的勧告「愛のよろこび」251参照)

 神のいつくしみそのものである主イエスに倣う教会は、神からの賜物であるいのちが、その尊厳を守られ、だれひとりとして排除されることのない社会が実現するために、常にいつくしみを提供する野戦病院である事を目指し、特に社会的に弱い立場にある人たちと歩みを共にしていきます。

 

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2020年11月7日