・中国当局、新型ウイルスも関係なし、”転向”を強要-”良心的拒否の司祭たち悲痛な救援訴え(BW)

 新型コロナウイルスの大感染も、中国政府が福建省のカトリックMindong教区で行っている「政府・共産党への服従を拒む”良心的拒否”を貫こうとする司祭への迫害」を止めることはない。
同教区の司祭からこのほど、「中国政府が(自己の管理・監督下にある)中国愛国天主協会(CPCA)への加盟を強制する手段として拷問を始めた、助けてほしい」と緊急の支援要請があった。

 バチカンは昨年出した中国の司祭へ指針で、司祭と司教は、自己の良心の判断にもとずいてCPCAに加盟しないことができる、としていたが、中国当局は、政府・党の支配下に入ることを拒否する”地下教会”を6月までに完全にCPCAの加盟させるとし、そのためにあらゆる手段も辞さない、と言われており、Mingdongのケースもその線に沿ったものだ。

*神父は4日間睡眠をとらせない拷問を受け、”転向”させられた

The Saiqi Catholic Church before it was closed down.

 Mingdong教区のある信徒によると、当局が4月2日、福建省福安市の教会の黄神父を連れ去った。「黄神父は、CPCAへの加盟を拒んでいるという理由で住まいを監視されていましたが、2日の夕方、12人の警官がいきなり住まいに押し入り、無理やり連れ出した」という。(右の写真は、閉鎖される前の教会)

 関係者によると、黄神父は、公安の手で遠くの秘密の尋問施設に連れて行かれ、監視カメラ付きの小部屋に閉じ込められたうえ、4日間にわたって、長時間睡眠をとらせない「exhausting an eagle」と呼ばれる拷問を受け、”転向”を強要された。

  (注:この拷問は、ワシを手なずけるために行われる手法に由来するもので、ワシの足を紐につなぎ、眠ろうとすると、トレーナーが紐を引っ張って起こす。同時に強い光を顔に当てて眠らせないようにする、というもの。こうすると3日もたたずに、ワシは主人の言うことを聞くようになる、といわれ、中国では以前から転向される手法として「人」に使われている、という)。

 憔悴した黄神父が、CPCAに加盟する文書に署名する際、バチカンが示している指針に従って「カトリック教義に忠実であり続ける」の言明を文書に追記し、さらに「私たちの純粋な信仰を持ち続け、教皇との交わりを保証するという前提条件で加盟する」旨を付け加えることを希望したが、当局側は「中国の国内法規およびCPCAの指導」により、同意文書に条件を加えることは認めないすることは許可されていない」としてこれを却下した。

 文書にやむなく署名させられた黄神父に、公安当局者は、他の”地下教会”の司祭も”転向”するように説得するよう求め、”成功”した場合は、毎回、5万元(約7000ドル)を”褒賞”として提供する、と持ち掛けられた。当然、神父は拒否した、という。

 黄神父を知るある信徒は「文書に署名したことで、神父は『信徒たちを失望させてしまった』と後悔され、『CPCAに加盟したかどうかと関係なく、CPCAの泥沼にはまるようなことは品あい』と言明しておられました」と語った。

 地方政府の関係者は、同教区の地下教会の閉鎖は(Bitter Winterを含む)海外のメディアですぐ報道されてしまうので、当局は、(注:そうした目立ったやり方をしなくても)地下教会排除の政策が進展していることを印象付けるために、CPCAに(”自主的”に)加盟する地下教会司祭とすることを狙ったのだ、と説明している。「私の上司は、彼に署名させるためにあらゆる手段を使う必要がある。必要なら、”姿を消させる”こともありうる、と言っていました」。

*司祭に”転向”圧力をかける政府・共産党の別の手段は

 この教区のある司祭はBitteerWinterの取材に、当局にとって、地下教会をCPCAに転向されるための期限があと一か月後に迫っていることから、他の地下教会の司祭たちにCPCAへの参加を強要する動きが加速するだろう、と強い懸念を語った。

 実際、教区の郭西神・補佐司教と、信徒たちから尊敬されている劉神父は4月初め、警察にCPCAへの加盟を強制されている。別の司祭は、CPCAに加盟しなければ、公共機関に勤めている弟と義理の姉を解雇する、と脅され、二人の雇用を守るために、参加署名を余儀なくされた。他の司祭は、署名を拒否した際、彼の兄弟が所有する業務用の三輪トラックを没収され、甥が経営する旅行代理店も閉鎖に追い込まれた。

 「当局はとても攻撃的になっています」とある司祭は語った。 「地下教会の全信徒を管理下に置こうとしており、修道女たちも標的にし始めている… CPCAへの参加を拒否するすべての司祭を監視カメラで見張っているのです」。

 

*司祭たちは助けを求めている

 司祭はさらに続けた。「2019年のバチカンの指針では、中国共産党政府にカトリックの良心的拒否者を攻撃したり脅したりしないように求めていますが、中国政府・共産党はこれを無視し、良心の呵責もなく、バチカンと公けに事を荒立てることもせずに、司祭を迫害しているのです」と。

 そして、「中国共産党は無神論なので、カトリック教徒を迫害し続け、信仰をもつすべての人に共産主義を信じさせようとするでしょう。教皇フランシスコは、そうした中国政府・共産党の本質をはっきりとご覧になっておらず、幻想をまだ持ち続けておられ、(注:政府・共産党の管理下に入るのを拒み、教皇のみに忠誠を尽くそうとする)地下教会の司祭、信徒たちは災難に遭っているのです」と教皇はもとより、世界の信徒たちに理解を求めた。

 地下教会の司祭たちは、中国共産党政府のカトリック教会迫害の現実に国際社会が目を見開き、共産党政権と歩み寄るのは間違いだった、と教皇が理解するのを、強く望んでいる。 「私たちは、教皇をただ賛美するのではなく、中国で教会が迫害を受けている事実に即した客観的な情報を伝えねばなりません。教皇が私たちの訴えに耳を傾け、自省され、私たちを助けるために何かしてくださることを期待しています」と訴えている。

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

*Bitter Winter(https://jp.bitterwinter.org )は、中国における信教の自由 と人権 について報道するオンライン・メディアとして2018年5月に創刊。イタリアのトリノを拠点とする新興宗教研究センター(CESNUR)が、毎日5言語でニュースを発信中。世界各国の研究者、ジャーナリスト、人権活動家が連携し、中国における、あらゆる宗教に対する迫害に関するニュース、公的文書、証言を公表し、弱者の声を伝えている。中国全土の数百人の記者ネットワークにより生の声を届け, 中国の現状や、宗教の状況を毎日報告しており、多くの場合、他では目にしないような写真や動画も送信している。中国で迫害を受けている宗教的マイノリティや宗教団体から直接報告を受けることもある。編集長のマッシモ・イントロヴィーニャ(Massimo Introvigne)は教皇庁立グレゴリアン大学で学んだ宗教研究で著名な学者。ー「カトリック・あい」はBitterWinterの承認を受けて記事を転載します。

 

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2020年5月2日