・中国当局、”地下教会”の司教を理由を明確にしないまま再拘禁、一方で司教就任容認

(2020.6.24 カトリック・あい)

    カトリック系のニュース・メディアAsiaNewsが23日付けの北京発で伝えたところによると、河北省の”地下教会”教皇に忠誠を誓い、中国政府・共産党の管理・監督下に入ることを拒否している教会)宣化教区の教区長、 Agostino Cui Tai司教(70)=写真=が19日、公安警察に再度、逮捕・拘禁された。拘禁場所は不明、という。

 司教は、中国のカトリックの高位聖職者として最も長期、13年にわたる断続的な拘禁の後、今年1月に、中国正月を理由にいったん釈放されていた。AsiaNewsの取材に対し、教区のある信徒は「聖アウグスチヌスのように素晴らしい方が、法律に反したこのような扱いを受けるのは悲しいこと… (注:地下教会の指導者たちの)投獄は今や中国では日常茶飯事になっているが、司教の繰り返しの投獄はひどすぎる。”生贄の子羊”にされている」と訴えている。

  AsiaNewsによると、Tai司教は1990年に司祭叙階し、2013年に高齢の宣化教区長、 Tommaso Zhao Kexun司教のもとで補佐司教に教皇から任命された。同教区は中国に共産党政権が立てられる以前の1946年にバチカンが開設したが、共産党・政府は1980年にこれとは別に張家口教区を設け、宣化、西灣子の二つの教区をこれに併合した。バチカンは張家口教区を認めていない。

 そうした中で、Tai司教は2007年以降、当局の”付き添い”で”休暇”の名目で、強制的に秘密の拘禁場所や宿泊施設に拘禁され、旧正月と中秋の祭りの期間だけ一時釈放されて姉の元に行くことが認められたものの、それ以外は当局の監視のもとに置かれ続けていた。

 また、アジアを拠点にするカトリック系のニュース・メディアUcanewsによると、昨年3月にTai司教が再拘禁されたのは、宣化教区の前司祭、 Francesco Zhang Li神父が「司教は、中国とバチカンが2018年秋に合意した司教任命に関する合意を守っていない」と当局に”告発”した後だった。Li神父は、中国政府・共産党の管理・監督を受け入れた”天主愛国協会”に所属している。

 なお、香港のカトリック教会は、これまでもTai司教の釈放を繰り返し求めてきている。

中国政府・共産党、教皇に忠誠を誓う司教の就任認める

 一方、カトリック系のUCA Newsが23日、香港発で伝えたところによると、中国陝西省の鳳翔教区では、教皇が司教に任命しながら、中国側がこれを認めていなかった”地下教会”のPeter Li Huiyuan神父(55)の司教就任式が同教区の聖ヨゼフ大聖堂で、中国政府・共産党の管理下にある「中国天主愛国協会」副事務総長の Dang Mingyan司教が司式て行われた。

 UCA Newsによれば、Peter Li Huiyuan司教は、バチカンと中国が2018年秋に司教任命について暫定合意した後に、中国政府・共産党が司教就任を認めた”地下教会”司教としては4人目となる。

 また、司教就任式のミサで、Peter Li Huiyuan司教は、「中国憲法を順守し、祖国中国と社会の調和を堅持し、国と宗教を愛する」ことを誓い、自身と信徒たちは「教会自身の独立と、中国のカトリックの方向に沿って、国家と力の偉大な復活という『中国の夢』実現に努める」と約束した、という。

 同司教の就任を中国政府・共産党が認めたのは、今月9日に福建省福州教区の”地下教会”のPeter Lin Jiashan神父(83)を同教区の補佐司教に認めたのに続くものだ。

 UCA Newsはこのことに関連して、2018年秋の中国国内での司教任命に関するバチカン・中国暫定合意について、この9月に見直しが行われる予定とされ、バチカン側は改めて司教任命の権限を主張しており、司教任命の実質権限を巡る行方は流動的としている。

 このため、今回明らかになった、一方で”地下教会”の司教を再度、逮捕・拘束し、一方で、教皇が任命しながら棚上げしていた”地下教会”司教就任の容認をする、という一見、筋の通らない中国政府・共産党の対応は、内部の判断の不一致、あるいはバチカン側に譲歩を求めるかく乱作戦のいずれか、と見る向きも、関係者の間にあるようだ。

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2020年6月24日