・中国で”地下教会”が破壊に直面、高齢司教は23年も逮捕後、消息不明のまま

Underground China church faces demolition

写真は、当局によって封鎖された江西省・余江教区の受胎告知教会の聖堂玄関(ucanews.com photo)

(2019.5.15 カトリック・あい)

 中国で政府・共産党の統制を拒むカトリックの”地下教会”に対する弾圧が昨年秋のバチカンとの”暫定合意”以降、一段と強まりを見せる中で、政府・党中央の意を戴した地方当局の締め付けが厳しさを増している。

 アジアの有力カトリック系ニュースメディアのucanews.com の13日付け香港発によると、中国南東部・江西省の教区では当局幹部が近日中に”地下教会”を破壊する、と通告を出した。中央政府・共産党が5月1日から宗教活動に対する新たな規制を発動したのを受けたものだ。同省のカトリック余江教区に住む関係者がucanews.comに匿名を条件に語ったところでは、当局幹部はいつ”地下教会”の聖堂を破壊するか具体的な日付は明らかにしなかった。

 破壊に直面している同教区の受胎告知教会は、2012年に開かれた新しい教会で150人の信徒がいる。同教会には昨年8月に公安職員が訪れ、聖堂が破壊されたくないなら、主任司祭に典礼を行う場所を当局に登録し、政府・党に従属する「中国天主愛国協会」に加盟するよう通告していた、という。

 もう一人の教会関係者によると、この教会の入り口は昨年12月のクリスマスの際に当局によって封鎖され、それ以来、ミサができなくなっているが、司祭、信徒たちは、当局の指示に従うよりは聖堂の破壊を選び、神を共産党よりも優先する信仰を貫きたい、と決意し、犯罪的な行為に対して霊的な力をしっかり保てるように、信徒たちは断食を続けている、という。

 また、当局は昨年から、告知教会のそばに埋葬されているコロンバン会の管区長として1930年に入国し、この地で布教したアイルランド人のJere Miah Duttimer神父の墓地を参拝することを禁止している。これは、外国文化・宗教を排除する目的で習近平国家主席が進めようとしている”中国化”の政策を受けたもの、と現地では受け取られているという。

Plea over missing underground Chinese bishop

 

写真は23年も消息不明の河北省・保定教区のSu Zhimin 司教 (ucanews.com photo)

 またucanews.com が8日、香港発で伝えたところによると、中国国内で23年間も行方不明のままになっている河北省・保定教区の Su Zhimin 司教(87)の甥がこのほど、安否も含めて本人の動静を明らかにしてくれるように訴えた。

 彼によると、司教は1996年に、「中国天主愛国協会」への加盟を拒んだため、当局から「反革命分子」の烙印を押されて逮捕され、収監された。司教の家族が2003年に彼が保定市の病院に入院しているのを偶然、目撃したが、それ以来、誰も彼を見た者はいない。

 甥は2015年にバチカンとの交渉に関わっている宗教監督局の幹部と会見した際、「中国とバチカンの関係が改善するまで、司教の釈放を待つように」と言われたが、昨年9月に”暫定合意”がされたにもかかわらず、何も知らされていない。交渉の中でバチカン側は司教の問題を取り上げたことは確認したが、その結果は分からない、という。

 香港のカトリック正義と平和委員会は、中国本土で行方不明になっている聖職者の動静について注視しており、中国政府に対して、Su司教の釈放を繰り返し要求してきた。委員会の Lina Chan 事務局長は「中国とバチカンの交渉担当者は、Su司教や河北省易県の Shi Enxiang司教など消息不明の聖職者を無視できないはずです。この交渉の目的の一つは中国にいる信徒たちが普通の信仰生活を送れるようにすることです。司教たちが消息不明のまま、というのは現状がいかに異常であるか、を示しているのです」。

 Su司教の保定教区では政府・党に忠誠を誓う”地上教会”のトップはAn Shuxin,司教(69)。もともと”地下教会”の補佐司教だったが、2010年に“”地上教会”に鞍替えした。同教区は何年もの間分裂状態となっており、「将来に希望はない。皆が政府の言うことを聞くようになろうとしています。司祭たちもばらばらです。奇跡が起こるのを期待するしかない」とSu司教の甥はucanews.com に語っている。

このエントリーをはてなブックマークに追加
2019年5月15日