(2021.1.15 Vatican News staff writer)
バングラデシュ南東部のロヒンギャの難民キャンプで14日早朝、大規模な火災が発生。キャンプ内の500を超える家屋と150の店舗が全焼し、3500人を超える難民が住まいを失った。国連機関とカトリックの援助組織「カリタス・バングラデシュ」が救済・支援活動を始めている。
バングラデシュ政府の難民救済・本国送還委員会(RRRC)関係者によると、大火災が起きたのはコックスバザールのナヤパラ難民キャンプで、火災による死亡は報告されていないが、消火に当たった消防士、警察、兵士など数人が負傷している、という。過密なキャンプでの火災の原因はまだ不明だ。
ナヤパラキャンプには約2万2500人の難民がおり、うち約1万7800人が女性、子供、高齢者。RRRCの責任者は、UCA Newsに、「現在、約3500人の住まいを失った人々を、児童学習センターに収容し、食料、衣類、薬を提供するなど応急措置をとっているが、各種の援助機関の協力を得て、可能な限り早く、収容施設の再建を図りたい」と語っている。
*国連機関の救済活動
コックスバザールの国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)など国連機関の関係者たちは火災発生当日の14日から現場に出、被害状況の把握、被災者の救済を始めている。UNHCRの現場担当者は、「バングラデシュ政府、NGOや他の国連機関、難民たちと協力して、被災者の救済に当たっている」と述べた。 国連世界食糧計画(WFP)も、被災家族に温かい食事を含む緊急食糧援助を実施している。加えて、ロヒンギア・セクター間調整グループ(ISCG)、バングラデシュ赤新月社、NGOも、救済活動に参加している。
*カリタスとカトリック関係組織の救済活動
カリタス・バングラデシュは「被災した難民を支援し、住居再建に全力を挙げる」方針だ。 カリタスの緊急対応プログラムの運営責任者は、「難民たちは、わずかな所有物まで奪われた。バングラデシュ政府とNGOが協力してキャンプの再建に取り組みます」としている。
カリタスは2017年からロヒンギャ難民キャンプで活動しているが、世界中のカトリック教会や関係団体からの資金提供を受け、過去数年間に食料、飲料水、医薬品など衛生資材や生活物資を14万人以上に届けるなど、支援してきた。昨年11月には、イエズス会の難民支援部門と米国が拠点のCatholic Relief Service(CRS)と協力し、多目的青年センターと呼ばれる新たなプロジェクトに取り組み始めた。子供の精神的成長を助け、青年を対象とした相談業務、就労のための技術訓練、妊婦の健康や育児支援、特別な手当てを必要とする子供たちのケアなどを進める計画だ。
*教皇フランシスコも難民に配慮
教皇フランシスコも、ロヒンギャ難民に対してたびたび、関心と同情を示されている。 教皇は2017年12月1日、バングラデシュの首都ダッカで行われた宗教間対話に参加され、その場で、コックスバザールからの16人のロヒンギャ難民の話に耳を傾けられた。
*ロヒンギャとは
ロヒンギャは、主にイスラム教徒の少数民族で、主にバングラデシュと国境を接するミャンマー西部のラカイン州に何世代にもわたって住んでいた。だが、仏教徒が多数を占めるミャンマーは、彼らを「バングラデシュからの不法移民」と見なし、 1982年に当時の軍事政権が施行した国籍法の下で市民権を与えず、無国籍状態において、移動の自由やその他の基本的権利を認めていない。
ミャンマー軍は2017年から、ラカイン州などに住む彼らを武力で弾圧し、これまでに70万人以上のロヒンギャ・イスラム教徒が国境を接するバングラデシュ領内に逃げ込み、すでに非難していた人々を含めたバングラデシュ国内のロヒンギャ難民の総数は約130万人に上り、その大部分がバングラデシュ南東部のコックスバザールにある約30の難民キャンプに居住を余儀なくされている。