・ミャンマー鉱山事故170人以上の死者は「強欲と不正」の犠牲、と枢機卿が批判

A mass grave of the dead bodies of people killed at a jade mine in Kachin state, Myanmar, July 4, 2020. A mass grave of the dead bodies of people killed at a jade mine in Kachin state, Myanmar, July 4, 2020   (AFP or licensors)

 ミャンマー北部カチン州パカンのヒスイ鉱山で地滑りが発生、採掘労働者たち170人以上が亡くなったが、アジア司教協議会連盟会長でヤンゴン教区長のチャールズ・ボー枢機卿は4日、現地のフランシス・ドータン司教にメッセージを送り、「パカンの鉱山事故で多くの若者たちが命を落としたニュースに、強い衝撃を受けています」と哀悼の意を表した。

 そして、「亡くなった方々は、地すべりの土砂の中に埋もれただけでなく、”不正の地すべり”によって埋められたのです」とのべ、鉱山の責任者の過失と傲慢がこの災害を引き起こしたとして、強く非難した。

 枢機卿はメッセージの中で、教皇フランシスコが「世界中の貧しい人たちに対する”経済的、環境的な不正の終わりのない津波”を強く批判する声を上げられた」ことを思い起こし、「今回の鉱山事故で亡くなった方々は、貧しい人々に非人道的な扱いを続けている企業の過失と傲慢によって、”貪欲の祭壇”で犠牲として捧げられたのです」と鉱山業者の不正を糾弾した。

 また枢機卿は、世界中で大感染が続いている新型コロナウイルスの影響で、ミャンマー国内でも数百万人が職を失っており、「新型ウイルス大感染の悲劇の中で、(ヒスイなどを採掘する)大企業のブルドーザーから落ちるヒスイの粉を拾うことを貧困層に強いている」とし、今回の悲劇は「ミャンマーの宝は、ミャンマーの多くの人々の物。神から与えられた自然の宝を皆で共有しなければならないことを、強く訴えている」と強調。「(ヒスイなどミャンマーの天然資源で)利益を得ている人々が、労働者たちに思いやりと正義を示さなければ、非人道的な悲劇は終わらない」と警告した。

 同国の指導者、アウンサンスーチー女史も3日、今回の惨事に哀悼の意を表した。そして、犠牲者たちが、正規雇用の仕事を得ることが困難な中で違法就労していた労働者たちだったことを指摘し、正規雇用の創出を国の最優先事項とする必要を改めて確認した。国連のアントニオ・グテレス事務総長も、犠牲者たちの遺族に哀悼の意を表し、「国連としても、新型ウイルス感染の影響を受ける人々の要請に応える努力をせねばならない」と約束した。

 またNGOのGlobal Wittnessは、ミャンマーのヒスイ採掘は「軍事関連企業、武装グループ、および何年もの間、効果的な社会的および環境的制御なしで活動することを許されてきた人々によって支配されてきた」とし、今回の惨事を「無謀で無責任な採掘慣行を止めさせる行政の失敗によるもの」とミャンマー政府の失政を強く批判している。

 ミャンマーは世界有数のヒスイ産出国で主な輸出先はカチン州に隣接する中国。ヒスイの他、木材、金、琥珀(こはく)などが天然資源が豊富で、数十年にわたる内戦状態の中で、カチン族武装勢力とミャンマー軍の双方の資金源となっている。

 多くの危険を伴う露天掘りヒスイ鉱山の多くがあるパカンでは、これまでも特に雨季に大量の豪雨で地滑りによる惨事が多発。貧困にあえぐ少数民族の人々がヒスイ採取後に残った屑を拾って犠牲になることも多い。出稼ぎの鉱山労働者も多く、特に雨季には豪雨で犠牲者が出ることが頻繁にあり、2015年にも100人を超す死者が出ていた。

 (翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

 

 

 

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2020年7月5日