・「香港国家安全維持法」施行-香港教区Tong枢機卿は「教会の団結が最優先」(VaticanNews)

(2020.7.2 「カトリック・あい」)

 英国の香港の中国への返還の条件だった「一国二制度」の約束を無視する形で、中国政府は7月1日に、中国本土、あるいはそれ以上に厳しい言論・民主活動統制を狙った「香港国家安全維持法」を施行し、欧米を中心に民主主義国から強い批判があがっている。

 だが、Vatican News によれば、香港のカトリック教会のトップは「信徒の結束」が第一とすると言い、「香港の”憲法”で信教の自由が保障されている」と言明している。

 一部信徒も含めた、人権と信教の自由など民主主義の基本ルールが侵されつつあることに抗議の声を上げている香港の人々が新法施行直後から、次々と逮捕される中で、あるいは、中国本土で中国政府・共産党の統制を拒否する”地下教会”に対する弾圧が激しさを増していると伝えられる中で、「自分の教会さえ安全ならいい」と言っているようにも受け取られるこうした姿勢に、疑問を呈する関係者もいるようだ。

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(2020.7.2 Vatican News  Sr Bernadette Mary Reis, fsp)

 英国からの香港返還23周年を祝う7月1日になる一時間前に「香港国家安全維持法」が発効した。

 同法によって、中国本土と香港特別行政区での反政府言論、テロ、外国の介入を抑えることを、中国政府は目指している。

 これに対して、カトリック教会の香港教区管理者である湯漢・枢機卿のメッセージは、「羊飼い」の立場からのものだ-彼の頭にある最優先事項は(注:羊-信徒ーたちの)「結束」である。

 6月28日付けの教区機関紙 Kung Kaoで、枢機卿は、イエスが死の前の夜に、結束について祈られたことー「聖なる父よ、彼らが一つであるように」(ヨハネ福音書17章11節参照)を引用し、香港市民が立場の違いはあっても「結束できる」との希望を示した。

 この日より前のインタビューで、枢機卿は、信教の自由について言及し、「国家安全維持法は、信教の自由に対して否定的な影響を与えることはないだろう」との考えを述べていた。その根拠として、「香港の”憲法”である基本法(注:中国人民共和国香港特別行政区基本法)の32条が、宗教を信じることの自由と公の場での説教、宗教的活動としての行動、参加の自由を保証している」ことを挙げていた。

 加えて、教会には香港市民の「社会的な事柄」に参加することができるべきであり、基本法141条は「地方政府は宗教団体の内部の案件に干渉せず、宗教活動を規制しない。宗教団体が学校や社会事業の運営を継続してもよい」ことを保証している、と述べている。

 また、香港教区とバチカンとの関係については「多くの人が心配しているかもしれません」としたうえで、その関係は「カトリック教会の内輪のこと」と見なされるべきであり、まして「外国勢力との衝突」などと見られるようなものではない、と強調。中国とバチカンの関係では「友好的な意見の交換が行われており、私たちのカトリック教会の関心は、霊的側面と教区信徒の司牧にある」と説明していた。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

 

 

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2020年7月3日