・「熱心に祈り、できることから始めよう」-8月6日からの平和旬間へ、司教協議会会長が呼び掛け

 1981年2月25日、聖ヨハネ・パウロ二世教皇は、広島で鮮烈な平和アピールをなさいました。そのアピールに呼応して日本の教会は翌年から「日本カトリック平和旬間」をもうけて、平和について考え、平和のために祈り行動するよう努めてきました。「広島平和アピール」から38年9カ月後の今年11月、教皇フランシスコが日本を訪問され、新たな平和メッセージを世界に向けて発信してくださるものと期待しています。

 教皇フランシスコは、就任以来、折に触れて平和と核兵器廃絶について発言してこられました。2017年7月7日、国連総会で「核兵器禁止条約」という画期的な条約が採択されました。これに先立つ3月23日に、教皇は国連総会に、次のようなメッセージを送られました。

 「テロ、軍事力の差のある者同士の紛争、情報の安全確保、環境の問題、貧困などは、複雑に絡み合って、現代世界の平和と安全を脅かしています。しかし核の脅威はそのような課題に効果的に応えることはできません。恐怖に基づく安定は、実際には恐怖をさらに増し、諸国民の信頼関係を損なうだけです。もしそうなら、その安定をどれだけ維持できるか自問すべきです。国際平和と安定は、互いの破壊または全滅の脅威とか、単なる力の均衡の維持といった、誤った安心感の上に成り立ち得ません。平和は、正義、人間の全人的発展、基本的人権の尊重、被造物の保護、すべての人の社会生活への参加、諸国民間の信頼、平和を重んじる制度の促進、教育と福祉の恩恵に浴すること、対話と連帯の上に築かれなければなりません」。

 なお、バチカンは「核兵器禁止条約」を2017年9月20日に、各国に先駆けて批准した三カ国の一つですし、同年11月には国際会議「核兵器のない世界と総合的軍縮への展望」を主催しました。

 教皇フランシスコによると、「すべての人の全人的発展」とは、諸国民の間に経済格差や排除がないこと、社会が誰一人排除されず、だれもが参加できる開かれたものであること、人間の成長発展になくてはならない経済、文化、家庭生活、宗教などが保障されること、個人が自由であると同時に共同体の一員であること、一人ひとりに神が現存されることなどを意味します。平和は、この「すべての人の全人的な発展の実り」として生まれるのです(使徒的勧告『福音の喜び』219項)。

 従って、世界の平和と安全を築き確かなものとするためには、核兵器廃絶によって核の脅威を払拭するだけではなく、それと同時にすべての人があらゆる面でより豊かにされていく必要があるということです。

 教皇とともに、核兵器廃絶の実現を求めつつ、すべての人の全人的発展に深くかかわることによって平和をつくっていくことができるよう、平和の神に熱心に祈り、それぞれができることから始めるようにいたしましょう。

              2019年7月7日 日本カトリック司教協議会会長 カトリック長崎大司教 髙見 三明

(編集「カトリック・あい」)

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2019年7月20日