・「ともに耳を傾け、ともに歩もう」をテーマに22日から「ラウダート・シ週間」ー菊地司教協議会会長が談話

(2022.5.17 カトリック・あい)世界のカトリック教会は環境回勅「ラウダート・シ」の公布から7年目となる今年、5月22日から29日を「ラウダート・シ」週間として各種の行事を行う。その週間に先立って、日本カトリック司教協議会の菊地功会長(東京大司教)が以下の会長談話を発表している。全文以下の通り。

ともに耳を傾け、ともに歩もう ~2022年ラウダート・シ週間にあたって~(2022年5月22日~29日)】

 教皇フランシスコは、2015年5月に回勅「ラウダート・シ ともに暮らす家を大切に」を発表され、全世界に向けて、「わたしたち皆がともに暮らす家」を大切に守るという視点から、エコロジーの様々な課題に総合的に取り組むことを呼びかけられました。すべての被造物は互いにすべてつながっているがために、互いの調和のうちに生きていく道を探ることの重要性を教皇様は強調され、教会全体としてこの課題に取り組むように求めておられます。

日本の司教団は、2019年11月の教皇訪日を受けて、教皇フランシスコが日本から世界に向けて発信されたさまざまなメッセージを具体的に生きていくために、訪日のテーマである「すべてのいのちを守るため」を深め、黙想し、祈り、行動するために、特別な期間を設けることにしました。そこで毎年9月1日から10月4日を、「すべてのいのちを守るための月間」として、昨年からその取り組みを始めました。「ラウダート・シ」に記されたメッセージこそ、教皇が日本から世界に向けて語られた、賜物であるいのちへの強い思いを具体化するものだからです。

 同時に司教団は、環境問題へさらに真摯に取り組むため、取り組みの方向性と理解を包括的に示す文書を作成し、現在、書籍として出版する準備を進め、その具体的な活動についても検討を続けています。

世界の教会に目を向けると、2015年の回勅発表直後に、それまで環境問題に取り組んできたネットワークが発展して、「ラウダート・シ運動」が結成されました。同運動は、教皇庁人間開発のための部署と協働し、毎年、回勅の発表された5月24日前後の一週間を、「ラウダート・シ週間」として、全世界の教会に啓発活動への取り組みを呼びかけています。

今年の「ラウダート・シ週間」は5月22日から29日までとされ、そのテーマが、「ともに耳を傾け、ともに歩もう」とされています。「ともに」と言う呼びかけは、わたしたちが今シノドスの道程をともに歩んでいるからに他なりません。

教皇フランシスコは回勅に、「皆がともに暮らす家を保護するという切迫した課題は、人類家族全体を一つにし、持続可能で総合的な発展を追求するという関心を含んでいます」(13項)と記されました。残念ながら、この数ヶ月、わたしたちはこの共通の家を争いの場としてしまいました。人類家族全体の一致は実現せず、共通の家に対する配慮は後回しにされています。

世界各地の教会とともに、わたしたちもこの「ラウダート・シ週間」に、あらためて教皇様の回勅の呼びかけを学び、その中心的なテーマであるラウダート・シ目標への具体的な取り組みを強めて参りましょう。

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以下は7つの目標とその説明の公式英語文と「カトリック・あい」試訳

Laudato Si’ Goals – LSGs

Measuring Integral Ecology in the spirit of Laudato Si’ 

①The Response to the Cry of the Earth

The Response to the Cry of the Earth a call to protect our common home for the wellbeing of all, as we equitably address the climate crisis, biodiversity loss, and ecological sustainability. Actions could include the adoption of renewable energies and energy sufficiency measures, achieving carbon neutrality, protecting biodiversity, promoting sustainable agriculture, and guaranteeing access to clean water for all.

①地球の叫びに応える

 地球の叫びに応えることは、すべての人々の幸福のために私たちの共通の家を守ること、気候変動危機、生物多様性の喪失、生態系の持続可能性に公正に取り組むことです。具体策としては、再生可能エネルギーと高効率エネルギーの採用、温室効果ガス排出量の全体としてのゼロ達成、生物多様性の保護、持続可能な農業の促進、すべての人にきれいな水が確保などが含まれます。

 

②Response to the Cry of the Poor

The Response to the Cry of the Poor is a call to promote eco-justice, aware that we are called to defend human life from conception to death, and all forms of life on Earth. Actions could include projects to promote solidarity, with special attention given to vulnerable groups such as indigenous communities, refugees, migrants, and children at risk, analysis and improvement of social systems, and social service programmes.

②貧しい人々の叫びに応える

 貧しい人々の叫びへに応えることは、環境正義(肌の色や出身国、所得の多さにかかわらず、誰もが公正に扱われ、安全な環境で暮らせるようにすることの提唱)を推進すること、受胎から死に至る人間の生命を、そして地球上のあらゆる形の生命を守るよう求められていると認識することです。具体策としては、先住民コミュニティ、難民、移民、危険にさらされている子供などの脆弱なグループへの特別な配慮、社会システムの解析と改善、社会福祉の諸制度によって、連帯を促進する事業などが含まれます。

 

⓷Ecological Economics

Ecological Economics acknowledges that the economy is a sub-system of human society, which itself is embedded within the biosphere–our common home. Actions could include sustainable production and consumption, ethical investments, divestment from fossil fuels and any activity harmful to the planet and the people, supporting circular economies, and prioritizing care labour and protecting the dignity of workers.

⓷環境経済学

 環境経済学は、経済が人間社会の一部を構成するシステムであり、それ自体が、私たちの共通の家である生物圏に組み込まれていることを、認めています。 具体策には、持続可能な生産と消費、倫理的投資、化石燃料および地球と人々に有害な活動からの脱却、循環型経済の促進、介護労働の優先的扱い、労働者の尊厳の保護が含まれます。

 

④Adoption of Simple Lifestyles

The Adoption of Sustainable Lifestyles is grounded in the idea of sufficiency, and promoting sobriety in the use of resources and energy. Actions could include reducing waste and recycling, adopting sustainable dietary habits (opting for a more plant-based diet and reducing meat consumption), greater use of public transport, active mobility (walking, cycling), and avoiding single use items (e.g. plastic, etc.).

④簡素な生活様式の採用

 持続可能な生活様式の採用は、資源とエネルギーの利用において効率と節度を促進するという考えに基づいています。 具体策としては、廃棄物の削減と再資源化、持続可能な食生活の採用(植物系の食事を選び、肉の消費を削減するなど)、公共交通機関の利用拡大、徒歩や自転車などの活用、プラスチックなど使い捨て品の利用を避けること、などが考えられます。

 

⑤Ecological Education

Ecological Education is about re-thinking and re-designing curricular and institutional reform in the spirit of integral ecology in order to foster ecological awareness and transformative action. Actions could include ensuring equitable access to education for all and promoting human rights, fostering Laudato Si’ themes within the community, encouraging ecological leadership (students, teachers), and ecological restoration activities.

⑤環境教育

 環境教育とは、環境保護への意識と変革のための行動を促すために、「 integral ecology(統合的環境)」*の精神に基づいたカリキュラムと教育制度の改革について再考し、再設計することに関するものです。具体策としては、すべての人が教育を公平に受けられることを確実にし、人間としての権利を推進し、共同体社会の中で「ラウダート・シ」の課題への取り組みを育て、学生や教員が環境問題への取り組みで主体性を発揮するよう奨励し、環境回復の活動をする目ること、などが含まれます。

 *「 integral ecology」とは、「ラウダート・シ」における中心的な考えであり、「すべてのものはすべてのものと密接に関わっていて、無関心でいられるものなど何ひとつない」という教皇フランシスコとの考え方が軸となった概念(カトリック・あい注)

 

⑥Ecological Spirituality

Ecological Spirituality springs from a profound ecological conversion and helps us to “discover God in all things”, both in the beauty of creation and in the sighs of the sick and the groans of the afflicted, aware that the life of the spirit is not dissociated from worldly realities. Actions could include promoting creation-based liturgical celebrations, developing ecological catechesis, retreats and formation programmes, etc.

⑥環境的霊性

 環境的霊性とは、深遠な環境的回心から生まれ、私たちが、すべてのものの中に神を見い出すのを、創造物の素晴らしさ、そして病にある人のため息、苦しむ人のうめき声の中に、霊的生活がこの世の現実と切り離されていないことを認識するのを助けてくれます。具体的には、創造に基礎を置いたミサ聖祭の促進、環境的な教理教育、黙想、養成プログラムの策定などが含まれます。

 

⑦Community resilience and empowerment

Community resilience and empowerment envisage a synodal journey of community engagement and participatory action at various levels. Actions could include promoting advocacy and developing people’s campaigns, encouraging rootedness and a sense of belonging in local communities and neighbourhood ecosystems.

⑦共同体社会の回復力とエンパワーメント(empowerment)

 共同体社会の回復力とエンパワーメントは、さまざまなレベルの共同体社会の関与と参加型の活動の”共働の旅”を想定しています。 具体策には、社会的弱者などの権利主張代弁の推進する、人々の組織的運動を進展させる、地域社会と近隣の生態系の関係を根付かせ、帰属意識を促すことなどが含まれます。

*empowermentとは、よりよい社会を築くために人々協力し、自分のこと自分の意思決定しながら生きる力を身につけるようにすること(カトリック・あい注)

 

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2022年5月17日