バングラデシュで枢機卿がロヒンギア難民キャンプ訪問‐カリタスの支援約束(Crux)

(2017.9.26 

Cardinal of Dhaka visits Rohingya refugee camps in BangladeshRohingya refugees stand in line at a refugee camp in Bangladesh. (Credit: Archdiocese of Dhaka.)

 ムンバイ・インド発ーバングラデシュの首都、ダッカの大司教のパトリック・ドロザリオ枢機卿が9月24、25の両日、同国のロヒンギア族の難民キャンプを訪問した。「私は彼らとともにいて、彼らの痛みを分かち合いたい。そしてカリタス(Caritas International‐国際カリタス‐カトリック教会の社会福祉機構として教皇ピオ12世が創設)が彼らに奉仕する道を整えたい」と枢機卿は語った。

 バングラデシュ政府は彼らへの住まいと食料の提供に苦労しており、この国小さなカトリック教会共同体も可能な限りの援助に乗り出している。

 ドロザリオ枢機卿はそうした中で、コックス・バザールにあるいくつかの難民キャンプを訪問した。ここには60万人を超えるロヒンギアの難民が収容されている。「四つのキャンプを訪ねました。そのうち最大のキャンプには10万人の難民が収容されていた。最近来た人も多い」「そこで私はイエスの傷に触れました。人権の深刻な侵害です。私の心は強く痛みました」と枢機卿はCruxに語った。

 国連はミャンマーの軍隊によるロヒンギア族の人々に対する性的暴行、拷問、殺害など重大な人権侵害を強く批判しているが、彼らへの迫害、暴力行為は8月のイスラム系武装勢力による警官隊襲撃以来、激しさを加え、軍は‶掃討作戦〟を展開、仏教系の暴徒のロヒンギア族襲撃事件も起きている。こうした中で先月には、ミャンマーに住んでいたロヒンギア族の半分がバングラデシュに逃避してきたと推定されている。

 「25日朝、難民キャンプの一つを訪問しました。そこには3万人ほどの方々が生活されており、そのほとんどが、ポリエチレンのシートで覆っただけの間に合わせの小屋に住み、清潔な水もなく、衛生状態も守られていませんでした。限られた食物だけの生活をしています」と枢機卿は嘆いた。そして、「幼い子供たち、赤ちゃんを抱えた若い女の人たち、お年寄り、病人、ひどい状態です」「私は彼らとともにいたい、苦しみを分かち合いたい、と思いました。今、私が最優先でできることは、カリタスが彼らを助ける道を整えることです」と強調した。

 バングラデシュは、難民の流入急増で対応に窮している。1億6200万人の自国民に満足な食料を確保ことも満足にできていない。悪名高いこの国の政府の官僚機構が海外のNGOの支援活動の妨げになっており、ようやく改善が始まったばかりだ。「NGOやバングラデシュ政府の始めた取り組みに励まされます。難民キャンプにも秩序ができつつあるように見えますが、やるべきことは数多いのです」と枢機卿は語る。

 彼が期待するカリタス・バングラデシュはカトリック教会のNGOだが、これを支える同国の信徒は35万人で総人口の0.2パーセントしかいない。「ここのキャンプには教会はないし、人々は教会も司祭も見たことがありません。それでも、私たちは彼らと共に苦しみます」。信徒数は少なくとも、カトリック教会は同国内にいくつもの学校を持ち、医療施設も運営している。

 枢機卿によれば、あるイスラム教との軍人が「自分はカトリックの学校の世話になった」と言って、難民支援のためのお金と物資を提供してくれた。他のイスラム教徒の人々からも支援の動きがあり、難民たちも助け合い可能なことをしている、という。「このような大変な状況の中でも、平和が存在することに心を打たれています。暴力沙汰もありません。難民の人たちの間に連帯、相互理解が生まれ、貧しさの中で互いに助けの手を伸ばしているのです。とても素晴らしい」。

 教皇フランシスコはこれまでもロヒンギア問題に強い関心を持ち、8月27日の一般謁見でロヒンギアの人々の人権を完全に保障するように訴えている。そして、11月30日から12月2日にかけてバングラデシュを訪問する予定だ。

(翻訳・「カトリック・あい」南條俊二)

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2017年9月28日