
(2020.8.12 カトリック・あい)
10日に逮捕された香港メディア界大物で民主活動家の実業家、黎智英(ジミー・ライ)氏が社主を務める蘋果日報(ひんかにっぽう)は、翌11日付け紙面のトップに、手錠をかけられた黎氏の写真を掲げ、強く抗議するとともに「蘋果日報は戦わねばならない」と、弾圧にひるまない姿勢を強調した。
なお、現地報道によると、香港警察に逮捕されていた黎智英、周庭の両氏は、11日深夜から12日にかけて保釈された。
カトリックの有力ニュースサイトLICASnewsが11日付けhttps://www.licas.news/2020/08/11/hong-kongs-apple-daily-vows-to-fight-on-after-owner-arrested/で報じたところによると、同紙は社説で「10日の黎氏逮捕は、本紙にとって”最も暗い日”とはならない。なぜなら、その後も、迫害、逮捕で私たちに恐怖を引き起こし続けているからだ」としたうえで、「こうした状態にもかかわらず、多くの読者や記者たちが祈り、励ましくれることは、皆さんがいる限り、本紙は戦い続けることを、私たちに信じさせてくれる」と言明した。
LICASnewsによれば、蘋果日報のウエブサイトで、11日付けの発行部数は通常の5倍、50万部にのぼった、とし、九龍半島中部の繁華街、旺角に隣接する労働者階級も多く住む地域の新聞販売店には11日午前2時に、何十人もの行列ができた。朝の通勤時に、在庫が無くなる販売店も出たといい、読者の1人は「警察がしたことは、報道の自由を妨げる行為。良心ある全ての香港人は、これまでの自由な香港を支持し、蘋果日報を支持する必要があります」と語っている。
また、黎氏が保有するオンライン・メディアNext Digitalの香港市場での株価は、香港のオンライン民主フ
ォーラムが、投資家に黎氏支持を求めたのを受けて11日の取引開始から前日終値比170㌫の上昇となった。
10日の黎氏逮捕に当たって、香港警察は約200人の警察官を動員、蘋果日報本社を捜索し、25箱の証拠を押収した。
香港警察はこの日、国家安全維持法違反として10人を逮捕したが、その中には蘋果日報の幹部のほか、民主派政党「香港衆志」の創始者の一人として常務委員などを務め、民主運動の先頭に立ってきた23歳の女子学生、周庭氏もいる。
黎氏らの逮捕について、米国のポンぺオ国務長官は10日、について、「香港の自由を”失墜”させ、人々の権利を侵害するものだ」と強く批判。
英国政府も、今回の逮捕は、国家安全維持法が、中国政府の支配に反対する人々を沈黙させることを狙ったものであることを、改めて立証した、と非難した。
これに対して、駐英・中国大使館は英国政府に対して、国家安全維持法の信用を失墜させるための、”報道の自由”の主張を辞めるよう求め、「香港を崩壊させようとする反中国分子を支援しており、内政干渉だ」と抗議。中国共産党傘下の英字新聞China Dailyも11日の社説で、「黎の逮捕は『敵とダンスを踊ったことの代償』… 『正義の遅れ』は『正義の不在』を意味したのではない」と正当性を主張している。
香港警察に逮捕され、警察車両に載せられて連行される若者の民主運動リーダーの周庭氏 (10日、Photo by Vernon Yuen/AFP)