・「恐れず、福音を宣べ伝えよう」-シンガポールでのミサ中の神父刺傷事件で、ゴー枢機卿が信者たちに訴え

(2024.11.12 La Croix International staff)

 シンガポールのカトリック教会指導者、ウィリアム・ゴー枢機卿は12日、声明を出し、ミサ中に司祭が刺された事件で揺れるカトリック教会に、司祭の速やかな回復を祈るとともに、神の導きを信じて逆境を回復力に変え、恐れずに福音を宣べ伝え続けるよう訴えた。

 シンガポールのアッパー・ブキ・ティマにある聖ヨセフ教会で9日土曜日、子供たちのための夕べのミサ中、聖体を配っていた57歳のクリストファー・リー神父が男に刺された。シンガポール大司教区によると、神父は国立大学病院に搬送され、手術を受け、現在容体は安定しているという。犯人は、警察が到着する前に、大司教区緊急対応チームを含む信徒が加害者を取り押さえた。警察当局によると、加害者が薬物乱用や傷害などの重犯罪歴があることを確認し、初動捜査では単独犯であり、現在のところテロの可能性はない、という。

 ゴー枢機卿は、ミサ中に司祭が刺された事件に関して、カトリック共同体の悲痛な思いを表明。「このような暴力は深い不安を与えるが、警戒を促す痛烈な注意喚起であると同時に、教会の回復力の証しでもある」と強調した。A man stabbed 57-year-old Father Christopher Lee while he was distributing communion during the Novそして、 「この事件が私たちの最も神聖な空間で起こったことに、私たちは過度に驚くべきではない、というのが真実です。 宗教的指導者、あるいは誰であれ、教会が襲撃される可能性はある」とし、 テロリズムや狂信主義から、個人的な不満や精神衛生上の問題まで、潜在的な動機を挙げた。

 また、ゴー枢機卿は、「起こりうるすべての暴力行為を防ぐことは不可能だが、教会とそのメンバーは精神的にも運営面でも備えなければならない」と述べた。2016年に大司教区緊急対応作戦協議会が結成されたことを強調し、「この協議会が小教区全体の教会警備の調整と強化に役立っている」と述べた。

 一方でゴー枢機卿は、「礼拝者を疎外しかねない対策を実施することで悲劇に過剰反応すること」に注意を促し、 「過剰な安全対策は、信者が礼拝に来る意欲をなくす可能性がある。 安全を確保することは不可欠ですが、教会は、精神的な安らぎのための避難所としての役割を維持し、アクセスしやすく、歓迎された存在であり続けなければなりません」と強調。

 「警戒は恐怖に身を委ねることではなく、むしろ慎重に生きることを意味します… 私たちは、現実的な予防策を講じ、互いに気を配りながら、通常の生活を続けなければならない。宗教指導者は、公人として一定のリスクを負っていることを認識しなければなりません 」と述べ、「警備を軽視してはならないが、聖職者は勇気をもって聖職を続けねばならない」とも語った。

 また枢機卿は信者たちに対して、リー神父の回復のためだけでなく、加害者のため、そしてより広い地域社会の平和のためにも祈るよう求め、 「神は十字架上の死を通して私たちを癒すために来られました。 「神の憐れみと赦しを示すことによって、神は私たちの傷ついた心を癒してくださいます。この事件は、私たちの教会をより強くし、信仰と祈りによ

って私たちの人々をより親密にしました」とし、「 教会が前進するには、分裂と恐れを拒絶し、警戒と団結をもってそうしなければならない」と述べた。

 シンガポールのカトリック教会は、多民族・多宗教国家であるシンガポールの中で重要な宗教共同体だ。 シンガポール統計局による2020年の国勢調査によると、カトリック教徒は居住人口の約3.7%を占め、同国の人口570万人のうち約15万人がカトリック教徒である。 シンガポールの教会はシンガポール大司教区のもとで運営されており、32の小教区が礼拝、教育、社会奉仕活動を通じて多様なコミュニティに奉仕している。 カリタス・シンガポールなどのカトリック慈善団体は、恵まれない人々の支援に欠かせない存在である。

 教皇フランシスコは今年の9月11日から13日にかけてシンガポールを訪問され、5万人が参加したミサを捧げ、多民族国家であるシンガポールの団結を称賛されるとともに、宗教間の対話と社会正義の強化を呼びかけておられる。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

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2024年11月13日