・「ミャンマーの内紛激化で、ロヒンギャの難民がさらなる危機に追い込まれている」国際援助機関が国際的な支援強化訴え(CRUX)

(2024.8.21 Crux  Managing Editor  Charles Collins)

   紛争が長期化し、多くの難民が発生を続けているミャンマーで、国軍と反政府勢力の抗争が一段と激しさを加え、双方から攻撃の対象となっているロヒンギャ族の人々が国境を越え、すでに満杯状態のコックスバザールの難民キャンプへの避難を余儀なくされている。

 現地で活動する国際医療NGOの「国境なき医師団」(Médecins Sans Frontières=MSF)や英国のカトリック司教協議会の公式援助機関CAFOD(Catholic Agency for Overseas Development ) が、彼らを深刻な危機から救うため、さらなる国際社会の支援を訴えている。

 英国営BBCによると、8月5日、マウンドーの町ナフ川岸付近で、非武装のロヒンギャの人々が爆弾攻撃を受けた。被災者たちはBBCの取材に、「爆弾のほとんどは無人機から落とされ、迫撃砲や銃も使われた」と語った。

 攻撃は、ミャンマーのラカイン州の大部分を支配しているミャンマー最強の反政府武装組織、アラカン軍によって行われ、まず集落が襲われ、住民たちが川に逃げようとして、また襲われた、という。

 BBCのビデオには、川岸が血まみれの死体で覆われている様子が映っており、その多くは女性と子供だった。目撃者によると、この攻撃で最大200人が殺されたとみられるが、アラカン軍のスポークスマンはBBCに対し、「事件は我々が支配する地域では発生していない」と自軍の関与を否定した。

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 ロヒンギャ族は仏教徒が多数派を占めるラカイン州に住むイスラム教徒の少数派で、長い間抑圧と差別を受け、1982年以降は、ミャンマーの市民権さえ与えられなくなっている。バングラデシュのキャンプにいるロヒンギャ族のほとんどは、ミャンマーのラカイン州で反政府勢力による一連の攻撃があった後、国軍が掃討作戦を開始した2017年8月以降にミャンマーから避難してきた人々。2021年2月にミャンマーで起きた軍事クーデターで、彼らに対する国軍、さらに反政府勢力による抑圧はさらに増した。

 

 難民キャンプの人口密度は驚異的だ。1平方マイルあたり約10万3600人で、世界で最も人口が密集している国の一つであるバングラデシュ全体の平均人口密度の40倍以上になっている。難民は隣り合ったビニールハウスの小屋で暮らしており、それぞれの広さは100平方フィート強で、そこに12人ほどが住んでいるところもある。

 「国境なき医師団」は、8月5日のアラカン軍による攻撃後にミャンマーからバングラデシュに逃れてきた極めて多くのロヒンギャ族の人々を治療ている、と声明で発表。バングラデシュ事務所のオーラ・マーフィー代表は、「ここ数日、ミャンマーから国境を越えるロヒンギャの負傷者数が増加している。私たちの医療チームが治療している負傷の状態をみても、紛争がロヒンギャの人々に与える影響に懸念が高まっていると言えます」と述べ、「ミャンマーの民間人が安全に暮らせる場所は日々狭まっているのは明らか。人々は戦闘に巻き込まれ、安全を求めてバングラデシュへの危険な旅を強いられている」と危機的な現状を説明した。

 コックスバザールで長年、難民の支援にあたっているイングランド・ウェールズ・カトリック司教協議会の公式援助機関CAFODのバングラデシュ駐在、フィル・タルマン氏も、ミャンマーとバングラデシュの国境沿いでロヒンギャの人々に対する暴力が増加していることに深い懸念を示している。

 「カリタス・バングラデシュは、CAFODの支援を受けて、妊婦と子どもに水と衛生、栄養、避難所、保護、一部のプライマリーヘルスケアなどの基本的なサービスを提供していますが、ニーズは膨大です。現在、バングラデシュには100万人近くの難民がおり、資金が不足しています。2024年の共同対応計画は、必要とされる資金の35%しか調達されておらず、5億5400万ドルの不足が生じています。資金不足によって、難民キャンプでは深刻な飢餓と不満が生じており、バングラデシュ政府に過度の負担がかかっている。難民の人々の安全な帰還が可能になるまで、国際社会に持続可能な支援をするよう、強くお願いします」と訴えている。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

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2024年8月23日