・内モンゴル自治区の人々、言語、教育、文化の”中国化”強制に恐れ(LaCroix)

culture/mongolians-fear-for-their-cultural-heritage

People in Inner Mongolia are fighting to preserve their language and culture. (Photo: YouTube)

(2020.12.3 カトリック・あい)

 新疆ウイグル自治区、チベット自治区、そして内モンゴル自治区のモンゴル人たちにも、中国政府・共産党の文化・思想統制の手が伸びてきた。

(2020.11.30 La Croix  Ben Joseph)

 内モンゴル自治区のモンゴル人たちが、中国政府・共産党の”中国化”政策のもとで、モンゴル語と独自の民族文化を守る戦いに直面している。

 同自治区の教育局は8月下旬、自治区内の各小中学校に対して、特定の科目について中国語の教科書を使用すること、その場合、北京語で教えること、と通知して来た。これは「少数民族は中国の共通言語を学ばねばならない」という中国共産党の指示によるものだ。

 これに対して、自治区内外で、モンゴル人たちの抗議活動が始まった。 AP通信によると、抗議活動は、通遼市はじめ内モンゴル自治区の多くの都市で起き、多くのモンゴル人の親たちは子供を学校に送ることを拒否し、教育局に対して、決定を撤回するよう要求した。これに対して、当局が、親たちを脅迫、逮捕など実力行使で抑えつけようとする動きも出ている、という。

 中国国外に住むモンゴル人の間にも抗議活動が広がっている。日本では、中国の王毅外相が訪日した際、11月24日から25日にかけて、数百人のモンゴル人が東京の国会議事堂前に集まり、中国共産党に対して「中国化政策を撤回せよ」「モンゴル人を抑圧するのをやめよ」「モンゴル人に母国語を返せ」などの旗やプラカードを掲げて抗議活動を行った。彼らは「教育政策の”中国化”強制は、少数民族に対して自治を認める、という中国政府・共産党の約束に違反している」と訴えた。

 だが、このような教育、使用言語の”中国化”は内モンゴル自治区に限ったことではない。新疆ウイグル自治区、チベット自治区でも同様な政策が始まっている。

 中国には現在、政府・共産党から公式に認められた少数民族集団が55以上あり、それらの使用言語は297に上るといわれる。これに対して、中国政府・共産党は今年から、中国全土の中・高等学校で従来使用して来た民族の言語の教科書を中国語の教科書に切り替え、中国語で教えることを義務付ける決定を下した。これが、モンゴル人だけでなく、中国の支配民族である漢民族以外の人々に敵意をもたらしている。

 少数民族は、中国の経済的に発展が遅れた地域に住んでいる。だが、近年になって、中国の急速な経済成長を背景に国や企業の開発投資が急激に進み、これに伴って起きる漢民族の労働者の大量流入も重なって、民族の伝統を重んじた平和な生活が脅かされている。

 チベット自治区や新疆ウイグル自治区における中国政府・共産党による少数民族に対する人権侵害は国際社会から強く批判されているが、独立国であるモンゴル国と国境を接する内モンゴル自治区に住むモンゴル人たちの不満は、母国語と民族の伝統文化と関係している。自治区として、表面上、モンゴル人たちに彼らの言語を使用する自由が与えられているが、中国政府・共産党による少数民族に関する教育改革は、内モンゴルの学生たちが北京語で書かれた国定教科書と最新の教材によって利益を得ることが目的という。

 内モンゴル自治区は1949年、中国の共産政権発足の直後に中国の自治区となったが、漢民族の流入が続いたため、現在では約2700万人の人口のうち7割が漢民族、2割がモンゴル族、残る1割が他の少数民族となっている。

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

(注:LA CROIX internationalは、1883年に創刊された世界的に権威のある独立系のカトリック日刊紙LA CROIXのオンライン版。急激に変化する世界と教会の動きを適切な報道と解説で追い続けていることに定評があります。「カトリック・あい」は翻訳・転載の許可を得て、逐次、掲載していきます。原文はhttps://international.la-croix.comでご覧になれます。

LA CROIX international is the premier online Catholic daily providing unique quality content about topics that matter in the world such as politics, society, religion, culture, education and ethics. for post-Vatican II Catholics and those who are passionate about how the living Christian tradition engages, shapes and makes sense of the burning issues of the day in our rapidly changing world. Inspired by the reforming vision of the Second Vatican Council, LCI offers news, commentary and analysis on the Church in the World and the world of the Church. LA CROIX is Europe’s pre-eminent Catholic daily providing quality journalism on world events, politics, science, culture, technology, economy and much more. La CROIX which first appeared as a daily newspaper in 1883 is a highly respected and world leading, independent Catholic daily.

 

このエントリーをはてなブックマークに追加
2020年12月3日