・中国当局の暫定合意無視が続く中で、カトリック香港司教が”返還”後初の北京訪問

カトリック教会香港教区の周守仁司教=2021年12月、香港(AFP時事)

(2023.4.21 カトリック・あい)

 世界の主要報道機関が20日までに伝えたところによると、カトリック香港教区の教区長、周守仁・司教が17日から5日間の予定で、北京を訪れている。中国政府・共産党公認の中国天主教愛国会に属する北京教区長の李山・大司教の招請を受けたもので、香港から北京に司教が訪問するのは1997年に香港が中国に返還されてから初めて。

 周司教は、訪問中に李大司教と会見するほか、カトリック教会の国立神学校を訪れ、玄武門教会でミサを捧げる。また、司教の大先輩のイエズス会士で中国で布教に当たったマッテオ・リッチ 神父(1552–1610) の墓を訪れる予定。

 周司教が事前にロイター通信に寄せた書簡では、中国ほんとの教会と、特にアジアを中心とする海外の教会との間で「交流が促進される」ことへの希望が宣べられ、バチカンからメッセージを託されたのか、というロイター側の質問には「教区間の交流。中国は国家事案についてバチカンと連絡体制を確立している」とだけ答えた。また、現地でのメディアの問いかけには「香港教区には、北京と香港の接触を促し、理解を深める橋渡し役の使命がある」と述べている。

 中国本土には中国政府・共産党公認の中国天主教愛国会に属するカトリック教会と”地下教会”に合わせて約1200万人の信徒がいるといわれる。バチカンと中国には国交がなく、長年、司教の任命権をめぐって対立してきた。

 2018年秋に任命に関して暫定合意がなされ、これに基づいて何人かの司教が双方の合意で誕生していたが、今回の周司教の北京訪問の直前、今月4日、過去9年間空席となっていた上海教区の教区長に、国政助言機関の人民政治協商会議(政協)常務委員の申斌(シェンビン)司教が就任した、とバチカンの同意がないまま、一方的に発表。バチカンのブルーニ広報局長は同日の会見で、「バチカンは数日前に中国当局の決定について知らされた」と述べ、今回の司教人事がバチカンの同意なしに中国側の一方的通告によってなされたことを公式に認めた。

 中国は昨年11月にも、江西省でバチカンが認めていない新設教区の補佐司教を一方的に任命、バチカン側が合意に違反するとして「遺憾の意」を表明している。

 周司教の地元の香港では、以前から中国政府・共産党の”地下教会”弾圧など信教の自由を踏みにじる行為に批判を続けてきた元教区長の陳日君・枢機卿を逮捕、拘禁するなど、中国当局による強硬姿勢が目立っている。

 バチカンは今のところ、こうした中国側の姿勢に”静観”を続けているが、中国側の周司教の北京訪問招請には、「バチカンとの一層の関係悪化を避けたい中国側の思惑がある」との見方も関係者の間にある。

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2023年4月21日