・中国、新5か年計画で”優生学”的な経済成長目指す?(LaCroix)

(2020.11.19 La Croix Ben Joseph) leave over

   中国共産党は10月下旬に開いた第19期中央委員会第5回全体会議で、習近平主席が「国民経済と社会発展の第14次5カ年計画」と「2035年長期目標」の制定に関する党中央委員会提案」を提案、その全文が11月3日に公表された。これは2021~25年の中国における経済政策運営の基本的な枠組みを示すもので、中国経済を展望する上で重要な文章だ。

 だが、その新5か年計画で、我々が注目しなければならないことの一つは、「出生政策の最適化」と「人口の質の向上」が含まれていることだ。

 中国政府・共産党は急激な人口増加が経済発展の足かせとなるのを避けようと、これまで数十年にわって「一人っ子政策」を続けてきた。だが、その結果、若年人口が相対的に減少、人口の高齢化が進んだことから、一人っ子政策を取りやめ、逆に出産を奨励する政策に切り替えているが、その”特権”を享受できるのは特定の女性だけだ。

 新5か年計画には、人口政策に基づく優生学が含まれている。つまり、特定の望ましい遺伝的特質を持つ男女を選択配偶させることで、”人口の質”を向上させるようとしている。ことを目的としています。ある中国の学者は最近、2021年から25年にかけて実行される新5カ年計画は「出生政策の最適化」と「人口の質の向上」を目的としていると述べた。

 この問題について、米コロンビア大学東アジア研究科のレタ・ホン・フィンチャー教授は、先週開かれた国際戦略国際問題研究所主催のインターネット・シンポジウムで「非常に心配している」と懸念を表明した。教授は「Leftover Women:The Resurgence of Gender Inequality in China(後に残された女性たち:中国における女性軽視の復活)」の著者で、中国における女性を巡る最近に動きについて詳しくフォローしている。

 カトリック系のニュース・サイトCNSなどによると、中国では、こうした条件付き出産を人口の大半を占める漢民族には奨励の一方で、新疆ウイグル自治区の、イスラム系ウイグル人のような少数民族には出産抑制を強制し、人口面から漢民族支配を安定させようとしている。

 新5か年計画で、中国共産党は、今後の中国の経済成長が国内生産、消費、流通の内部サイクルにウエイトを置く形で進むことを目指している。米国との貿易戦争に直面している中国が、超大国の地位を維持するために経済成長を内向きに模索しているのは当然のことだ。しかし、それは中国が世界貿易に背を向けることを意味しない。「世界の工場」の役割を果たすことに熱心であり、そのためにも活発な世界貿易を維持したいと考えている。

 また、新華社通信は、10月29日の中国共産党中央委員会で新5か年計画と2035年長期目標が提案が議論されたのを受けて、「主要産業分野のコア技術に大きな進歩を遂げることで、中国はイノベーションの世界的リーダーになるだろう」と述べた。

 だが、何年にもわたる急速な経済成長の負の側面として、中国は多くの環境汚染や自然災害に悩まされている。新華社通信によれば、対策の一環として、2035年までに「美しい中国を構築すること」を目標に炭素排出量を削減する計画だ。中国は、今年9月の国連総会で習近平主席が概説したように、二酸化炭素排出量が2030年までにピークを打ち、2060年までに排出ゼロにすることを目標に、一連の野心的な対策を実施する、としている。

 経済目標の観点から、中国のストレスは”高速開発”から”高品質開発”への切り替えにある。習主席が説明しているように、これは「隠れたリスクを防止、解消し、外部環境の変化によってもたらされる影響と課題に積極的に対応する」為のカギとなる。

 新5か年計画のテーマは「安定性を維持しながらの進歩」であり、イノベーション、調整、グリーン性、オープン性、共有という5つの主要な開発コンセプトに依存している。現5か年計画のテーマの多くを引き継いでいるが、違いは力点の変化です。たとえば、イノベーションと高度な製造は、以前の計画では不可欠でしたが、現在は二次的な役割が割り当てられている。その計画の全文は来年3月に発表される予定だ。

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

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2020年11月20日