中国共産党は、全国民をイデオロギー的に管理するため、全土に宣伝拠点を拡大しており、その目的達成のために、多くの宗教の礼拝所を接収、改装を進めている。
浙江省東部、嵊州市(じょうしゅう-し)の三傑町は2012年、民間投資による新しい文化センターを建設した。建設地は、三自愛国教会(中国共産党の主導によって 設立されたプロテスタントの合同教会)の隣で、当時の町の関係者によると「中国文化を迅速に構築する」のが目的で、建物の高い塔が「共産党に影を落
とす」ことを狙い、講堂も作られた。嵊州市文化博物館の報告によると、この文化センターは「信仰をもつ人々が宗教活動に関与している教会がたくさんあり、宗教的行事に群がっている」のに対して、住民たちが「イデオロギー的立場をつかむ」ために建設された」などと説明していた。
(嵊州市文化博物館の”文化講堂”に関する報告=写真右)
町の責任者は「共産党が地方住民のイデオロギーを引き継がなければ、宗教によって引き継がれてしまう。だが、党が公然と宗教を排除すれば、それは世界から非難される口実を作る。宗教の余地を減らすために一生懸命努力する必要がある」と述べた。
またキリスト教関係者は、Bitter Winterに「信者の中には教会に行くのをやめ、映画を見たり、踊ったり、さらには無料の医療サービスを受けたりするために文化講堂に行くことを好むようになりました」と語る。
浙江省の農村地域には、2013年から2020年にかけて、1万を超える文化講堂が建設されたが、その多くは、長い間、住民が信仰して来たキリスト教や仏教の教会、寺院を接収して作られた。
同省の諸曁市の管轄下にある西台村の文化講堂は、地元の共産党員向けの教育訓練にも使われており、「共産党とその中央委員会は人々の救世主」という情宣の垂れ幕も下げられている。
省都、杭州市郊外の文源の文化講堂は、伝統のある寺院を接収して作られ、毎月テーマ別の宣伝活動が行われている。今年 3月は、人民解放軍の”伝説的な英雄”、雷鋒がテーマになった。 7月には、中国共産党の創設を祝う活動が組織され、紹興市オペラ公演は8月の「流行を打ち負かした」共産党政府を讃える演目で行われ、 10月は中国の建国記念日を祝うために費やされた。
反宗教的なテーマは、特に国によって「邪教」と指定された宗教団体を対象とする場合、地方の文化センターの宣伝活動の欠かすことのできないもの。最近半年でも、200近くの”反邪教”の催しが仙居県で開かれた。
「先祖代々引き継がれてきた寺院は、人々が祖先に敬意を払う場所であるべきですが、もはやそうではありません。政府が”赤い教育基地”に変え、寺院はこれまで果たしてきた機能をすべて失ってしまった」と諸曁市のある住民は嘆いた。
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中国では、全土にわたって、数え切れない教会や寺院が「新時代の文明実践基地」に変えられている。”中国の特徴を備えた社会主義”を唱える”習近平思想”の浸透を促進し、党のイデオロギー宣伝活動を強化するための全国的な運動の一環だ。2019年8月に共産党系のメディアが伝えたところでは、2018年以降、 江西省の県レベルの都市である上饒市(じょうじょう-し)だけで362の「新時代の文明実践基地」が設立された。
(上饒市の広信区(こうしん-く)の”文化講堂”で党の宣伝映画を見る人々=写真左)
ある文明実践基地の責任者は「私たちは毎日赤い映画を上映し、革命歌を演奏する必要があるだけでなく、政府と協力してさまざまな宣伝活動を実施する必要があります」と説明。
「郡の宣伝部門は、8月に会議を開催し、宣伝活動によって、人々が宗教の信仰を実践するのを制限するように、と私たちに要求しました。 現在、国はイデオロギーに多くの注意を払っており、文明実践基地は、人々が共産党に忠誠を示すことを確実にするために使われているのです」と語った。
(”新時代のための文化実践基地”に並べられた習近平の著作i=写真右)