・中国、マカオにも香港型「国家安全維持法」を導入へ(Bitter Winter)

 中国政府・共産党による民主化運動の徹底制圧がなされた香港に比べれば”無風”状態にも見えたマカオについて、党指導部は、「外国の侵入」の危険にさらされており、香港と同じ厳しい取り締まり法制の導入が必要、と判断した。マカオに適用される 改正国家安全維持法は5月18日に、マカオ立法議会で、あえて異議を唱えた議員は1人を除く、”全会一致”で可決された。

 中国共産党は新聞発表で、マカオの現行国家安全維持法は、「柔軟」であり、「不特定の国家安全保障、リスク、脅威の観点からの新たな好ましくない課題に対処するには不十分であるとみなされた」とし、中国メディアは、新たに厳格な法律が必要な理由として、スパイ活動、「外国の干渉」、「台湾の独立に有利な勢力」によるマカオへの侵入の試み、を挙げた。

 スパイ活動と国家機密の保護に対するマカオの新たな規制が準備されており、改正国家安全維持法に次いで導入される可能性がある。

 極めて重要な賭博業界を含むマカオのビジネスリーダーたちは、新法が観光業や外国企業の活動に悪影響を与えるのではないかと懸念している。 中国では従業員が「スパイ容疑」で告発されるのが極めて容易なことを経験しているからだ。また、カトリックなどキリスト教会は、現在香港で起きているように、「中国化」され、”習近平と共産党の栄光”を説くよう要請されるのを恐れている。

 中国共産党が突然、「マカオが香港と同じくらい危険となる可能性があり、あらゆる形態の潜在的な反対派の取り締まりが必要だ」と判断したかどうかは、今のところ不明だ。しかし、マカオへの改正法導入は、党が「自由と反対意見の可能な空間」を全国でこれ以上徹底するか模索していることのさらなる証拠であり、そのような「空間」は今、容赦なく一つ一つ排除されている。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

*Bitter Winter(https://jp.bitterwinter.org )は、中国における信教の自由 と人権 について報道するオンライン・メディアとして2018年5月に創刊。イタリアのトリノを拠点とする新興宗教研究センター(CESNUR)が、毎日4か国語でニュースを発信中。世界各国の研究者、ジャーナリスト、人権活動家が連携し、中国における、あらゆる宗教に対する迫害に関するニュース、公的文書、証言を公表し、弱者の声を伝えている。中国全土の数百人の記者ネットワークにより生の声を届け, 中国の現状や、宗教の状況を毎日報告しており、多くの場合、他では目にしないような写真や動画も送信している。中国で迫害を受けている宗教的マイノリティや宗教団体から直接報告を受けることもある。編集長のマッシモ・イントロヴィーニャ(Massimo Introvigne)は教皇庁立グレゴリアン大学で学んだ宗教研究で著名な学者。ー「カトリック・あい」はBitterWinterの承認を受けて記事を転載します。
このエントリーをはてなブックマークに追加
2023年6月2日