・モスクの「中国化」に抗議する回族イスラム教徒に、公安当局が”最後通告”(Bitter Winter)

(The protesters clashing with the police in Najiaying. All images from Weibo and Twitter. )

 中国・雲南省の納家営モスク(イスラム寺院)の「中国化」を強制する当局に対して、現地の回族イスラム教徒たちが大規模な抗議デモを続けている。公安当局は大規模な部隊を出動させ、6月6日までに抗議活動を終結させるよう最後通告するなど緊張した状況が続いている。

 中国では、習近平主席の宗教”中国化”方針のもと、中央、地方の当局あげて、思想・教義はもとより、聖堂の建築などについても”中国化”が全国規模で進められている。その一環として、イスラム教のモスクについても中国風に改造することが求められ、これまでの中国のほとんどの地域で、モスクの特徴であるナレットやドームが消している。

 そうした中で、穏健で裕福な回族が住んでいる雲南省の納家営モスクと沙店モスクは、数少ない伝統的なモスク建築のままの建物として知られていた。だが、5月27日になって、当局はいきなり、ブルドーザーや工事資材をもった作業員を400人以上の公安部隊をともにモスクの周囲に送り込んできた。

Anti-riot police deployed outside the mosque on May 27.

(左は、モスクの外に配置された公安部隊)

だが、抗議の回族イスラム教徒は何千人にも膨れ上がり、28日には公安部隊はいったん撤退したが、その後、一説には部隊の規模は5000人に増強され、地域のインターネットは遮断された。すでに逮捕者は数十人に上っているが、公安当局は、6日までに抗議活動を止めない場合、参加者は全員を逮捕、長期の懲役刑を課する、と最後通告を行っている。The police “ultimatum.”

(右の写真は、公安当局による最後通告の全文)

 また公安関係者は市内の各家庭を回り、沙店の全戸を訪問し、「モスクは”修正”され、これまでより美しくなる」と住民に説明すると同時に、抗議活動に参加しないよう警告している。

The Grand Mosque of Shadian, as it is now (left) and as it will look like after the “Sinicization” (right).

 

 民族的には「漢民族」とされている回族は、中国の少数民族の一つだが、同国最大のイスラム教徒の民族集団でもある。中国全土に広く分散し、人口は約1000万人といわれる。

 伝統的に中国共産党に忠実な「善良な」イスラム教徒として紹介されてきた。だが、宗教の「中国化」のプロセスは、この典型的な「中国人イスラム教徒」の共同体社会さえも直撃し、不快感と抵抗を生み出している。 中国の宗教のいかなる”部分”も、習近平の監視と弾圧を強化する政策から免れないわけではない、ということを示している。

 (左の写真は現在のモスク=左≒と「中国化」を終えた後の同じモスクの姿=右)

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

*Bitter Winter(https://jp.bitterwinter.org )は、中国における信教の自由 と人権 について報道するオンライン・メディアとして2018年5月に創刊。イタリアのトリノを拠点とする新興宗教研究センター(CESNUR)が、毎日4か国語でニュースを発信中。世界各国の研究者、ジャーナリスト、人権活動家が連携し、中国における、あらゆる宗教に対する迫害に関するニュース、公的文書、証言を公表し、弱者の声を伝えている。中国全土の数百人の記者ネットワークにより生の声を届け, 中国の現状や、宗教の状況を毎日報告しており、多くの場合、他では目にしないような写真や動画も送信している。中国で迫害を受けている宗教的マイノリティや宗教団体から直接報告を受けることもある。編集長のマッシモ・イントロヴィーニャ(Massimo Introvigne)は教皇庁立グレゴリアン大学で学んだ宗教研究で著名な学者。ー「カトリック・あい」はBitterWinterの承認を受けて記事を転載します。

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2023年6月2日