・チベットの人々の「魂」-祈りの旗「タルチョー」-の撤去を中国共産党が開始(BW)

( 2020.6.23 Bitter Winter MASSIMO INTROVIGNEA )

 チベット仏教の象徴でチベット文化の核ともいえる「タルチョー」(祈りの旗)の撤去に、中国共産党が乗り出した。各村ごとに、強制的な取り外しが進められている。

 タルチョーはの順に五色の旗で構成され、それぞれが、すなわち五大を表現する。経文が書かれ、これを飾り、風になびくごとに、読経したと見なされるチベットはもちろん、ブータン、ネパール、モンゴルなどで、多くの人々にとって、日々の暮らしに欠かせない、神聖で、大切なものだ。

Prayer flags in Tibet

 ところが、中国の自治区とされたチベットで、中国共産党は、その信仰と文化の核となる「タルチョー」の廃絶に手を付けている。この動きは10年前から始まったと言われるが、習近平・主席の下で急速に激しさを増している。

  インドのダラムサーラに本部を置く「Tibetan Centre for Human Rights and Democracy」(TCHRD)が6月16日に発表した2019年版報告によると、中国共産党による宗教迫害が酷さを増しており、特に男性僧侶、尼僧、そして一般の仏教徒に対する拷問が増加、2019年一年だけで「何千人」もの人々が逮捕、拘禁された、としている。

 2019年8月に施行された新法では、家族や友人と祈ることを含めて宗教活動に参加して逮捕された元公務員の年金の支給を停止する、と定めており、中国共産党は「近代的、社会主義的な仏教制度しか存続を認めない」と通告した。

 中国共産党の当局者が村々を回り、丘の頂上や村内に掛けられた「タルチョー」を、住民が大切にしている物への敬意も払うことなく、引き降ろし、公安警察に渡すよう強制している。

 その動きは、中国青海省のゴロク・チベット族自治州のチャンド(注:1950年に中国が武力で支配下に置いた)に始まり、Radio Free Asiaによると、他の地域にも広がっている。「環境浄化」を名目にしているものの、共産党自体が「非中国的、非社会的な仏教」の「行動的改革」と言ってはばからない。

 信徒にとって、これは自らが信じるものに対する犯罪であり、冒涜だが、こうした共産党の行動に抗議の声を上げる人々は直ちに逮捕され、拷問されている、とTCHRDはその報告で述べている。「タルチョー」はチベットの人々にとって「魂」。仏教徒でない人々さえも、この「文化虐殺」の新たな示威行動に抗議すべきだろう。

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2020年10月17日