・「教会は民主主義でない国とも共存してきた」とバチカン外務局長、イエズス会系雑誌の質問に

 米国のイエズス会系雑誌Americaインターネット版に3月23日付けで掲載された同誌バチカン特派員ジェラール・オコネル記者の興味深いインタビュー記事が掲載されている=Pope Francis spoke out against oppression in Myanmar. Why is he silent on China and Hong Kong? | America Magazine=。インタビューの相手はバチカン国務省のポール・ギャラガー外務局長・大司教だ。要約すると以下の通りになる。
 ギャラガー外務局長は昨年2月に、中国の王毅外相と会談した。1949年10月に中国に共産党政権が誕生して以来となる両国閣僚レベルの会談となったが、それに先立つ2018年9月の中国国内での司教任命をめぐる暫定合意以降のバチカン・中国関係をどう受け止めているか、が記者の質問の主要テーマとなった。

 外務局長は、双方が抱えている問題についてオープンな意見交換が進み、理解が深まった、と評価する一方で、「中国は強大な国であり、膨大な人口とそれに対する統治機構を持っているため、バチカンの交渉相手となるのは、その統治機構の中の非常に小さなグループです。したがって、交渉相手の人々が、”北京”のために何を得ようとしているのか、我々が”北京”にもたらすものの影響は何なのか、を理解することは極めて困難です」と、中国とのやり取りの難しさを認めた。 ピエトロ・パロリン国務長官・枢機卿が訪中するなど、バチカンと中国の閣僚級交流が予定されているか、との記者の問いには「現段階ではない」と答えた。

 中国政府・共産党による国内の宗教活動に対する規制、新疆ウイグル自治区などでの少数民族の弾圧、香港の民主体制を守ろうとする運動の封殺などが、最近、特に顕著になってきていると伝えられている。そうした中で、ミャンマー問題には繰り返しメッセージを発している教皇フランシスコが、中国のこのような現状に対しては沈黙を保っている理由について、記者が説明を求めた。 この質問に、外務局長は、「バチカンは、世界のほとんどどの国に対しても、相手を非難する外交政策をとっていません」と前置き。

中国については「私たちは、中国と共に働けることを信じています。2018年9月の合意の私たちの目的は、司教任命における問題の解決でした。二国間交渉で、私たちは常にカトリック教会と中国当局の関係正常化を目標にしていますが、これが”非常に長期的”な目標であることも、認識しています。現在は、司教任命の問題が依然として、最優先事項です」と述べた。

香港問題では、「香港の教会は、大きく分かれている。一方に北京の忠誠者がおり、他方に、大きな自由とより大きな例外扱いを望む人々がいると言えるかもしれない」、そうした中で”立派”な声明が、(現在の香港の状況を好転させるために)効果的とは思わない。肯定的な変化をもたらすか、それとも、(注:新香港教区長任命問題も絡んで)バチカンと香港の教会の関係を一層複雑なものにするのか、を考えると、現在のバチカンの姿勢が正しいと思います」と語った。

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2021年3月29日