ミャンマーに中国生まれの”AI活用”の「デジタル独裁政権」懸念の声(LiCAS)

 3月14日、ミャンマーのヤンゴンにあるフレダン・ジャンクションで行われた反クーデターの夜の抗議行動に参加する人々(ロイター)

(2021.3.19 LiCAS news  Tomson Reuter Foundation )

 ミャンマーで軍のクーデターと民主指導者たちの逮捕・拘禁に反対する人たちは、軍・警察の容赦ない暴力とともに、中国製の顔認識システムによる街頭監視によって「デジタル独裁政権」が生まれることを強く懸念。国際人権団体のHuman Rights Watchは、市民の動きを監視するためにAI(人工知能)を活用することが、人々の自由に「深刻な脅威」をもたらす、と警告している。

 ミャンマー軍は2月1日にクーデターを起こし、昨年の民主選挙で選ばれたアウンサン・スーチー女史ら政権指導者を逮捕・拘束、これに抗議する人々が200人以上も殺害され、指導者の釈放と民主政権回復を求める市民とこれを抑えようとする軍・警察の衝突はますます危機を深めている。

 そうした中で、顕著になって来たのが、軍・警察による街頭監視システムの導入と活用だ。首都ネピドーやヤンゴン、マンダレーなど主要都市にはすでに、何百台ものAI付監視カメラが設置され、抗議活動に参加する人や車両などを瞬時に判別し、人物を特定、逮捕などに、使い始めている、という。

 ある民主運動家は、「抗議活動が本格化する前から、監視システムは私たちの懸念事項でした。例えば集会場などか

ら帰宅する際には、毎回、別の道を使うなど、監視の目を出来るだけ逃れるように苦労しています」と述べ、「軍や警察は、デモや抗議活動を監視、追跡するのにATのシステムを使っている、とみています。”デジタル独裁”のようなものです。我々市民の行動を監視・追跡して、捕らえるためにAI技術を使っているのです。(自由・民主主義の制度にとって)とても危険な行為です」と訴えた。

 このシステムは、大半が中国の大手ハイテク企業、Huaweiからのもの、と言われているが、同社は、Human Rights Watchの取材に対して、「情報通信技術をもとにした”標準的なICTインフラ機器”を提供している」と認めたものの、画像についての顔認識や車両番号認識の技術提供は当社はしていない。得られた情報の蓄積、処理にも関与していない」と”疑惑”を否定している。

 中国国内では以前から、新疆ウイグル自治区で、少数民族ウイグル人イスラム教徒たちの監視、追跡にAI監視システムを使用し、その精度を上げている。

 

新疆ウイグル自治区の首都ウルムチの街路に設置された監視カメラ群(写真:ピーター・パークス/AFP)

 

 Human Rights Watchの研究員は「当局がAI監視システムを使って、路上の人を特定し、その動静や人間関係を追跡し、私生活まで監視の目を光らすことは、軍事クーデターに反対する活動家に重大なリスクをもたらす」と警告。このシステムは、「民族・宗教上の差別的な扱い、”要注意人物”を任意に選び出すのにも使われる可能性がある」と指摘する。

 軍支配下のミャンマーでは、市民のプライバシーとセキュリティを保護する法律の一部が停止されており、個人データの収集、保管、利用に関する法的規制もない。

 幸か不幸か、ミャンマーではまだ運用技術や撮影精度が不十分なためか、「顔認識システムも利用した”容疑者”逮捕にはまだ至っていない」とある人権活動家は言うが、「軍事政権がデジタル技術をどのように使用するか。運用能力を高めていけば、今後、それが悪用されることに非常に深刻な懸念がある」と警戒する声もある。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

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2021年3月21日