(評論)中国政府・党の「天津司教」追認ーバチカンは、教皇の中国政策の勝利としているが…(Crux)

(2024. 8.28  Crux Staff)

 ローマ発 – 中国政府・共産党が、これまで認めていなかった95歳のShi Hongzhen司教を天津教区の教区長・司教と公認したことに、バチカンは28日声明で「バチカンと中国政府との間で長年にわたって築かれた対話の肯定的な成果」、教皇フランシスコの”対中政策の勝利”と位置付けた。

 もっとも、Shi司教の北京公認の”着座式”は、中国メディアによると、天津の大聖堂ではなく、地元のホテルで、中国政府・共産党公認の中国天主愛国協会のトップである北京司教が司式して行われ、教会ではなく本質的に”市民的”な性質が強調されている。

 約5万6000人のカトリック教徒を擁するこの天津北部教区は、2005年以来、バチカンと中国政府・共産党の両方に認められる司教を欠いていた。Shi Hongzhen師は、教皇ヨハネ・パウロ二世から1982年に天津の補佐司教に任命され、中国政府・共産党に服従することを拒否する”地下教会”の当時の天津司教によって着座式がなされ、さらに2019年にその天津司教の後任に就いていた。

 バチカンと中国政府は2018年秋の司教任命に関する暫定合意をし、すぐにも天津司教が中国側から追認されると見られていたが、追認は暫定合意から6年後となったわけだ。

 中国メディアによると、”着座式”でShi司教は「中国憲法を支持し、中国の統一と社会の調和を守り、国と教会の両方を愛し、中国におけるカトリックの中国化の方向性を常に支持する」ことを誓うよう求められたという。「中国化」とは、中国以外に”本拠”をもつ社会や集団の中国文化への同化を意味する中国政府・共産党の用語であり、香港の元教区長、ジョセフ・ゼン枢機卿を含む教会関係者の間では、「中国政府・共産党が教会を支配するための煙幕」との批判が起きている。

 カトリック系メディアAsia News、95歳のShi司教を補佐する補佐司教の任命が同時に発表されなかったことで、「天津教区の将来は不確実であるように思われる」と指摘している。

 一方、教皇フランシスコは、今月初めのイエズス会中国管区の報道担当者との会見で、中国を訪問したいという願望を改めて示し、中国の教会と文化を賞賛。中国のカトリック教徒を「忠実な人々、彼らは忠実な人々。多くのことを経験し、忠実であり続けた人々。忍耐の達人であり、待つことの達人であり、『希望のウイルス』を持っている」と讃えている。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

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2024年8月29日