・「紛争回避に強い協力関係を」-第16回 東京-北京フォーラム、「東京コンセンサス」を採択し閉幕(言論NPO)

(2020.11.30 言論NPO)

「第16回東京-北京フォーラム」(言論NPO、中国国際出版集団共催)は11月30日、コロナ禍の新たな波の到来が心配される中、東京と北京の会場をオンラインで結び2日間の日程で開幕しました。一度も途切れることなく毎年、継続されてきた民間対話の舞台は、新型コロナウィルスにもめげることなく”3密”を避け、異例の態勢で開かれ、zoomとYoutubeで同時配信されました。

*平和なアジア、世界の構築に向けた歴史的な一歩を踏み出すための合意を

A18I0089.jpg 初日の全体会議では、同フォーラム日本側実行委員長の明石康・元国連事務次長が主催者を代表して挨拶を行いました。

 明石氏はまず、過去16年間の活動と成果の上に、更なるレベルに発展させる絶好の機会になると強調。その上で、中国は、昨年末に始まったコロナウィルス最初の被害者となり、武漢地域で始まった感染拡大を殆ど完璧に克服している点で、日本人の私たちが学ぶべき相互の経験と知恵の意見交換ができるのではないか、と期待を示しました。

 さらに日中関係について明石氏は、国交が回復した1972年以来、日中は信頼し合える隣国として協力し、共に歩んできたとする一方、日本の国内世論には中国の東シナ海における軍事活動に違和感を抱く者も少なくないと指摘。

 しかし、このフォーラムでは、「相互に存在する各種の問題と疑問について忌憚なく話しあい、より平和で安定した相互の関係を構築する目的の下に、言論人、知識人、専門家などの間で、率直で冷静な対話を幅広く展開して、事態を長期的に安定させていかなければならない」と、日中両国のパネリストに強く呼びかけました。

 最後に明石氏は「私たちの基本的な立ち位置は、米中対立のどちらかに与するのではなく、国際協調と存在するルールに基づく世界の新しい共通の秩序を広げていくことが目標だ」と強調。その上で、「日中両国の参加者が本音ベースで議論し、地球的な分断と対立の危険から少しでも遠ざかり、平和で安心できるアジアと世界の構築のため、歴史的な一歩を踏み出すことを一緒に誓うことができれば本望だ」と語り、今回のフォーラムでの活発な意見交換、議論に基づき、日中両国間での合意文書採択に期待を込めました。

*中日新時代のウィンウィンの関係を

A18I0132.jpg 次に中国側主催者を代表して登壇した中国外文局の杜占元局長は冒頭、「オンラインで開催されるのはフォーラム史上初めての試みで、対面で一同に介することは出来ないが、北京会場にはこれまでの新記録となるほどの参加者が集まり、中日関係者の確固たる信念と熱意を感じる」と語りました。

 その上で、そのコロナ禍の現状について、「100年に一度の大変革期が始まろうとしており、私たち人類の暮らし、健康、命を脅かし、国際情勢にも不確定要因をもたらしている」と指摘。さらに、中国共産党が10月の第19期5中全会で、社会主義現代化国家を全面的に建設する新たなスタートを切ったことに触れ、「習近平主席は、高水準の開放型経済建設、人類運命共同体の構築など、日本をはじめ世界に、より多くの発展のチャンスをもたらすだろう」と語りました。

 加えて、「GDPが2位と3位の経済大国の中日は、アジアの繁栄のために積極的に貢献していく責任も力もあり、共通のチャンスがあり、中日社会は、新時代のウィンウィンの関係を育み、一層努力、貢献していこう」と呼びかけました。

*バイデン大統領になっても分断された米国の内向き志向は変わらない

A18I0177.jpg 続いて基調講演に移り、同フォーラム最高顧問の福田康夫元首相は、新型コロナウィルスの影響で、オンラインでの開催になったものの、16年間、一度も中断することなく開催し続けてきた「東京-北京フォーラム」の全ての関係者に敬意を表しました。

 続いて福田氏は、現在の世界情勢について、「世界全体の軋みはますます大きくなり、欧米ではグローバリゼーションへの反対や不満が強まり、更に内向き傾向が強まっている」と指摘。保護主義と一国主義を掲げたトランプ大統領登場以来、米国は世界のリーダーとしての役割を放棄したかに見えたが、「バイデン大統領になっても、大きく分断された米国の内向き志向は変わらないだろう」との見方を示しました。

 さらに福田氏は、「米国には『世界の指導者疲れ』症候群が見られ、多くの米国民が、現在の国際秩序は米国にとり、リターン(成果)よりコスト(費用)の方が大きいという感覚になっているのではないか」と指摘しました。

 また、「中国は軍事力でも彼我の差を徐々に埋めつつあり、国際安全保障、宇宙、サイバー、データ、地球環境、国際金融制度、経済協力といった『国際公共財』の運営においても、米国と並んで重要な役割を果たすようになりつつあり、21世紀の中国は、巨大かつ持続性のある超大国だということに米国が気付きだしたからこそ、ここ数年、米国内、更には米国の同盟国の間で『中国脅威論』が高まっているのではないか」との見方を示し、「仮に今、中国が成熟した民主主義国家であったとしても、中国の国力が米国を凌駕するようになれば、米中の対立と緊張は不可欠なものではないか」と予想しました。

*覇権大国の「焦り」と新興大国の「驕り」-人の心の弱さが、対立と戦争を生む

A18I0203.jpg こうした米中の対立と緊張の高まりに、私たちはどのように向かい合い、それを避けるためにどのような対応策を取ればよいのか。

 福田氏は「35年前の日米関係も同じようなもので、日本の経済発展で追い上げられる”焦り”の米国と”驕り”の日本だったと述べ、新興国・中国がこれからも伸びていくのは必然で、その台頭を押さえつけることはできないものの、中国もいつかは穏やかな成熟期に入るだろう」との見方を示しました。

 一方の米国も内向き傾向は強まるものの、世界大国としての地位は当分の間は揺らぐことはなく、バイデン大統領就任から数年間は、様々な憶測が飛び交い、葛藤が生ずるものの、「この不安定な時期を乗り切りさえすれば、いずれは落ち着いた米中関係になるのではないか」と語り、福田氏は希望を持って、将来の米中関係を明るく前向きに捉えました。

 そこで福田氏から、ここ10年を乗り切るために重要なこととして、

①世界の大国の政治指導者は、何が何でも平和を守るという強い不動の決意を持ち、大国間の衝突は、核戦争に至る可能性があることを忘れてはいけないこと

②現在の国際秩序を発展させ強化する時代に、日中は協力し合いながら米国とも協働することは、米中関係にとっても良い効果を発揮すること

③米中双方が、相手の国、社会、国民の思想信条や思考方法、意思決定方法などをより研究し、双方をよりよく知ることが必要だ、という点を挙げ、「米国の中国研究、中国の米国研究はまだまだ不十分であり、研究者の交流の拡大を深めるためにも日本は側面的に手助けできるのではないか」との見方を示しました。

 最後に福田氏は、習近平主席が使った中国の古い言葉『反聴、之を聡と謂い、内視、之を明と謂い、自勝、之を強と謂う(反聴之謂聡、内視之謂明、 自勝之謂強)』(史記) を引き合いに出し、「他者の意見を聞き、自己を省み、セルフコントロールする度量を持つことが重要だ」と指摘。

 その上で、先日言論NPOが発表した世論調査結果では、相手国の「印象が良くない」の割合が、日本側で9割近くになり、日中関係の基礎は、国民同士の関係にあるものの、「これまで以上に国民同士が理解し合い、信頼関係を深めることが、ますます重要になっていく」と語り、今回の「東京-北京フォーラム」でも、国民同士の相互理解をいかにして深化させるかについて、建設的な提案が出てくることを願い、基調講演を締めくくりました。

*中日の国民感情の管理はできるか

A18I0252.jpg 次いで中国の政府挨拶としては、訪日から帰国したばかりの王毅外相がビデオメッセージを寄せました。王氏は「現在、帰国後の健康観察を受けています。中日外相会談では、未来に相応しい共通認識に基づき、中日関係を着実に構築していくことを確認したことに触れ、地域と世界の平和で安定した発展促進に共に積極的に貢献しなければいけない」と語り、外相会談での具体的成果の一つー中日間の必要な人員の往来のための「ファストトラック」ーがこの日からスタートしたことを歓迎。今後の経済発展を後押しすることを期待を表明しました。

 一方、コロナ禍は、「日中両国の運命共同体と友情を深く感じさせた」と言い、「まさかの時の友こそ真の友」の言葉通り、医療関係者に日本から防疫物資が届けられた段ボール箱には、「武漢頑張れ」、「中国頑張れ」と書かれていて、「勇気と自信を私たちに与えてくれた」と謝意を述べました。

 こうした良好な関係とは別に、世論調査によると日本人の対中国の好感度は1割で、過去最悪、中国人の対日好感度が上昇し5割に迫るのとは対照的になっている結果に王氏は、「国民感情に温度差があるのは事実で、私たちはこれを重視して直す努力が必要。これを適切に受け止めて管理できるか否かは、双方の国民感情にかかっている」と、中日関係の礎のあり方について述べました。

 ソーシャルメディアなど情報新時代は、私たちに情報の迅速と利便性をもたらしただけでなく、挑戦も受けています。フェイクニュースなどの流通が、混乱をもたらし、誤解も独り歩きしていく現状について王氏は、「マスメディアは情報を切り取るのではなく、真実を求め、等身大のありのままの姿を伝えていく。内政問題には、理解と包容力を表せなければいけない」と、日本の一部で見られる報道に注文をつけることも忘れない王氏でした。

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*胸襟を開いた対話を

 11月末に、王毅外相と外相会談を行なった茂木敏充外相のメッセージが、遠藤和也・外務省アジア大洋州局参事官によって代読されました。

A18I0302.jpg その中で茂木氏は「日中両国の安定した関係が地域・国際社会にとって極めて重要であること、そして、日中両国が共に責任ある大国として世界の諸課題に取り組み、貢献していくことが、日中関係の更なる強化につながることを改めて確認した」と挨拶。

 毎年、日中両国で行われている世論調査では、2017年以降改善傾向にあった両国の国民感情が、停滞ないし後退していることに触れ、その背景として、「中国公船による、我が国の尖閣諸島周辺海域における行動など、様々な懸案がある」と指摘。

 それでも日本と中国は最も重要な隣国の一つであり、同時に大切な友人でもあることから、「今回のような胸襟を開いた対話が重要だ」と語る茂木氏でした。

*両国間には様々な課題があっても、対話や交流や継続することが重要

A18I0313.jpg 最後に自由民主党の二階俊博幹事長がビデオでメッセージを寄せ、「日中の安定した関係は、両国のみならず、地域や国際社会にとり、極めて重要な問題であり、お互いに責任を果たしていくためにも、様々な難しい課題があっても、日中間の対話や交流は、継続していくことが必要だ」と語りました。

 その上で、「コロナの収束と経済の再開」、「不安定化するコロナ禍の世界と日中両国の責任」など、時宜を得た重要なテーマが議論される今回のフォーラムでの議論が相互理解を促進する有意義なものになるだろう、との見方を示し、再来年に日中国交正常化50周年の重要な節目を迎えるのを前に、両国民間の交流が活発に行われることに期待を示しました。

全体会議の開幕式のあいさつに続いて、パネルディスカッションに入りました。

(2020.12.1 言論NPO)

 12月1日、前日から2日間にわたって開催された「第16回 東京-北京フォーラム」(主催:言論NPO、中国国際出版集団)は、全てのプログラムを終えて閉幕しました。

*人類は運命共同体である、コロナに打ち勝つには世界の団結が必要だ

 2日目の全体会議では、まず日中両国の大使が挨拶に立ちました。

A18I1962.jpg まず孔鉉佑氏(駐日中国特命全権大使)は、16回目の「東京-北京ファーラム」がコロナ禍においてもオンラインで開催されたことについて祝意を述べました。続いて孔鉉佑氏は国際的な秩序が不安定化し、国際社会が様々なチャレンジを受ける中で、コロナによって世界は逆戻りできない状況になったと指摘。さらに、人類は運命共同体であると同時に、コロナに打ち勝つためには、世界が団結し、協力・連携して課題に向かい合うことが唯一の道だと強調しました。

 さらに孔鉉佑氏は、中国の立場は自由貿易体制や世界経済を守り、サプライチェーンを維持することであり、それが世界経済の回復にとっては重要だと語り、今後、中国がCPTTPへの加入を検討していること、さらに中日FTAの進展などにも言及しました。

 最後に中日両国は中日間に存在する4つの文書の原則と精神に則り、各分野の協力と相互信頼を構築し、中日両国がWin-Winを果たすことがコロナ後の世界に向けた積極的なエネルギーを発することになるだろう、と語りました。

*日中両国民が不十分な理解や感情的なしがらみを乗り越え重層的に関わることが重要

A18I2004.jpg 続いて11月26日に在中国特命全権大使に着任した垂秀夫氏は、隔離中の公邸からリモートで参加しました。まず、垂氏は「東京-北京フォーラム」が、日中間の率直なコミュニケーションを支えるプラットフォームとして、これまで16年間、日中関係が困難な時期にも一度も途切れることなく開催されてきたことに対して敬意を表しました。

 その上で、菅義偉首相の就任直後の習近平国家主席との首脳電話会談、並びに11月末の王毅国務委員の来日などを挙げ、日中関係は進展の方向にあるとしながらも、言論NPOが10月に公表した日中共同世論調査結果を示しながら、「日中関係が深刻な事態に至った原因はどこにあるのか、また、それを反転させるために何ができるのか、ということを真剣に考える必要がある」と強調し、「日中双方でより多くの人が、不十分な理解や感情的なしがらみを乗り越えて、虚心坦懐に相手国の実情に向き合い、互いに重層的に関わっていく必要がある」と語り、挨拶を締めくくりました。

*大局的な視点から日中関係を見るという意見が出始めた

 日中両国の大使からの挨拶の後、パネルディスカッションが開催されました。参加者からは、オンライン化で行われた対話ではあったものの、非常に有意義な議論が行われたとの見方が大半を占めました。

kudo.jpg まず、司会を務めた言論NPO代表の工藤泰志が、コロナ感染や米中対立が深まる中で、今回の議論では、世界の分極化や危機の封じ込めに対してどのような合意があったのか、さらに成果は何だったのかと問いかけました。

 政治・外交分科会に参加した宮本雄二氏(宮本アジア研究所代表)は、今回の対話で強く感じたこととして、世界の中で日中関係が影響力をもつ時代になったこと、そして大局観を持ち、世界の中から日中関係を見るという視点が出てきたことを紹介。さらに、安全保障の分野においても米中対立が影を落としており、バイデン政権になっても大きな戦略は簡単には変わらないが、競争だけではなく協力する分野も出てくるのではないか、との見方があったことを報告しました。

miyamoto.jpg さらに今回の対話では、軍事力増強の話だけではなく、軍備管理や軍縮といった話題も議論の俎上に上がったこと、さらに軍事の現場では米中間で意思疎通をしているという新たな動きがあり、日中間でもそうした現場の意思疎通が必要だとの意見が出された指摘しました。そうした点を踏まえながら、我々の世代を含めた有識者の知恵の出し所であり、後世の人たちに「この時代の人たちは何をやっていたのか」と言われないように両国間で議論し、実行していく必要性を強調し、議論を振り返りました。

tei.jpg 政治・外交分科会に参加した程永華氏(前駐日本特命全権大使)は、今回の世論調査でも中米対立に注目が集まっていたが、中米対立はアメリカが一方的に行ったものであり、中国はお互いを尊重し合う日米関係を望んでいると中国側の見解を主張。その上で、参加者からは、世界の平和と繁栄のために、自国の利益に立脚しつつも、中米日の関係を見直していく必要があること、さらに、懸念事項はあるものの、「東京-北京フォーラム」のような民間の対話のみならず、政府間の対話、軍関係者間の対話等、様々な対話を通じて、相互理解を深めていく必要があるとの意見が出されたことを紹介しました。

go.jpg 安全保障対話に参加した呉懐中氏(中国社会科学院日本研究所研究員)は、共通認識として得られたのは朝鮮半島から南シナ海まで、地域の安保情勢は楽観できなという点だと指摘。しかし、安全保障だけが中日関係の全てではなく、コロナ対応における国際協力や、地域の自由貿易としてRCEPに合意したことなどを挙げ、紛争だけに目を奪われないようにしながら、中日の利益を損なわないように大所高所に立って物事を見ていくことの必要性を訴えました。

*中国の過剰なまでの自信が垣間見えたものの、グローバル化の推進では一致

yamaguchi.jpg 経済分科会に参加した山口廣秀氏(日興リサーチセンター理事長)は、ここ数年、グローバリズムにブレーキがかかり、多国間主義に疑問符が付く中、非常に困難な道のりになるとしながらも、コロナや地球環境等の課題解決に向けて、もう一度グローバリズムや多国間主義に戻るということでは日中間で共通の理解が得られたと語りました。さらに、中国がRCEPに合意し、CPTPPに加盟する意志を示したことなどに触れ、日中関係や、日中協力における今後の展望は明かるのではないか、との見通しを示しました。

 しかし、今回の対話で自信過剰とも呼べるほど、中国が強い自信をもっていることを感じた、と率直な感想を漏らした山口氏は、そうした中国の自信が他国からどう見られているのかということを中国は頭に入れ、大国として求められるおおらかさや、謙虚な姿勢も同時に中国側も求められていると中国に注文を付けることも忘れませんでした。

gi.jpg これに対して、同じく経済分科会に参加した魏建国氏(中国国際経済交流センター副理事長)は、中国のパネリストは自信過剰であると形容されたが、日本と同様に真摯に向き合ってきたと、山口氏の見方を否定しました。一方で、山口氏と同様にポストコロナを見据えて、世界経済が分極化し、不確実情勢が出てくる中、世界がアンチグローバル化に向かっている中でも、中日は前面になってグローバル化を推進していくことで合意したことを紹介しました。

*年に1回の対話ではなく、定期的な会合の開催で合意

iwamoto.jpg デジタル分科会に参加した岩本敏男氏(NTTデータ相談役)は、冒頭、司会を務めた山﨑達雄氏(国際医療福祉大学特任教授、元財務官)から、言いっぱなしの議論にするのではなく何らかの結論を得よう、ということで始まったと議論を振り返りました。その中で、日本側からファーウェイの製品にはバックドアを実装していないのか、と直球の問いかけに対して、中国側からは政府からのそうした問い合わせは一度もないし、クライアントの保護が絶対だと、情報の保護に対する積極的な姿勢が示されたことを報告しました。

 さらに、監視社会は、我々の目指すべきデジタル社会なのか、などの疑問が提起されたり、AIの重要性についても議論がなされたと語りました。そして、こうした対話を年に1回だけではなく、今後も定期的に続けていくことで合意したことも報告されました。

*来年のフォーラムに残された課題とは

 続いて工藤が、来年の「東京-北京フォーラム」に残された課題は何か、と問いかけました。

 山口氏は、かつて政冷経熱という状態があったものの、もはやそういう時代ではないとし、政治が熱して始めて経済も熱する状態であり、政府間でどのような対話が行われ、どのような行動がなされるのか、といったことが重要であると指摘しました。その上で、「東京-北京フォーラム」での議論をうまく政治のレベルにつなげていくような道筋を作り出していくことが必要であると述べ、さらなるフォーラムの発展に期待を寄せました。

 岩本氏は、その道の専門家はどこが問題か、課題かはわかっており、それ自体は政治体制が違ったとしても直面している課題は同じであり、来年もデジタル分野で、1年に1回の議論ではなく、定期的に研ぎ澄まされたテーマで議論することが重要だと語りました。

 程永華氏は、今年の分科会の議論を通して、政治・外交の分野での相互信頼関係の再構築が必要だと感じたと指摘。さらに、マイナス面の問題をバネにして両国の関係改善を図る必要性を強調した上で、来年のフォーラムは東京五輪終了後になるとすれば、若者の交流、スポーツの交流などが行われていることが想定され、そうした交流と相通じる対話が必要ではないか、との見方を示しました。

 宮本氏は、経済だけではなく、政治が需要だとした山口氏の指摘に同調しつつ、今、政治が何かやろうとしても国民感情があるからできないのは客観的な事実だとし、だからこそ国民同士が相互に信頼関係を持つことが重要であると指摘。その上で、来年のメディア分科会では、日本のメディアは中国の立場に立ち、中国のメディアは日本の立場に立って、どうしたら相手を説得できるのか、ということをやり合うのはどうか、と提案しました。

b.jpg 房氏は、イデオロギーを超越した対話が必要であり、紛争を棚上げしできることからやるということが重要だ、と簡潔に述べました。

*「第16回 東京-北京フォーラム」は「東京コンセンサス」を採択し閉幕

 パネルディスカッション終了後に行われた閉幕式では、まず言論NPO代表の工藤から、2日間にわたる議論を経て、日中両国間で合意された共同声明「東京コンセンサス」が発表されました。

【第16回「東京-北京フォーラム」共同声明 ― 東京コンセンサス ―】

 「第16回東京―北京フォーラム」は11月30日から2日間にわたって東京と北京を結ぶ初めてのオンライン会議方式で行われ、日中両国を代表する政治外交、経済、貿易、安全保障、メディア、感染、デジタル経済などの有識者約100氏が集まり、不安定化する世界の中での日中関係に焦点をあて、アジアの平和や世界経済の安定化に対して、両国がどのような役割を果たすべきか真剣に向かい合った。

 世界は新型コロナウイルスの感染の封じ込めに未だ成功しておらず、世界経済の保護主義や分極化への動き、さらにはアジアの平和で不安が高まっている。私たちが懸念するのは、国際秩序に全面的な変化が起きているにも関わらず、国際協力の動きが進まず、世界が内向きになっていることである。 この点で私たちが注目したのは、今年の日中世論調査である。同調査では日中両国民の7割以上が、今まさに世界で大きく揺らいでいる「国際協調」が必要だと考え、半数はこの北東アジアに必要な原則は「平和共存」だと回答している。

 私たちに問われているのは、こうした日中両国の民意を誰が背負うのか、ということにある。私たちは「民間の外交」には政府間の困難を乗り越え、新しい協力の土台を作る特別の役割があると考えている。過去16年間、日中両国が厳しい困難に直面する中でも一度も中断せずに対話を継続したのは、こうした覚悟をフォーラムの参加者が共有していたからである。

 私たちはこうした強い思いから、この二日間真剣に議論を行い、以下の合意をまとめた。

 日中関係が重要なのは、日中両国が隣国であり経済大国であることだけではない。両国の経済や産業はすでに相互依存を高め、多くの共通利益を持っている。さらに両国の協力は、アジアの平和と発展のためにも不可欠である。世界やアジアが不安定な局面にあるからこそ、両国は世界経済の安定的な発展と東アジアの紛争回避のために強い協力関係を構築すべきである。そのための幅広い議論を開始すべきである。

 日中両国は交流を深め、新型コロナの感染封じ込めや経済復興でお互いの経験と成果を幅広く共有するとともに、ファーストトラックで始まった国境を越えた人の移動と防疫を成功させるためにまず原則とルールを共有化し、それを広域に広げる努力を行う。ワクチンの公平な普及、途上国の感染対応能力の向上を通じて、世界全体が感染の封じ込みに成功するように両国は力を合わせるべきである。

 世界の主要国である日本と中国は、コロナ後の世界経済の復興に向けて協力すると同時に、安定的な世界経済の発展のためにより市場の取引に見合った自由貿易体制を守る必要がある。そのためには、開放的でルールに基づく自由経済秩序と多国間の国際協力を前提に、それに見合った構造改革をそれぞれ進めなくてはならない。東アジア地域包括経済連携(RCEP)の妥結を踏まえ、日中韓のFTAや中国のCPTTPへの加入の検討を支持し、アジア太平洋地域でのルールに基づく経済連携を推し進める。

 日中両国が、アジア太平洋地域の平和と繁栄に責任を持って取り組むことは、国交正常化以来の合意である。東アジアで紛争や事故の懸念が高まる今こそ、両国はその責任を果たす時である。私たちは7年前の「東京-北京フォーラム」で「不戦の誓い」を合意したが、ここで確認された紛争に繋がる現状変更や威嚇などの全ての行動に反対するとともに、この地域の事故や紛争の防止、さらには持続的で安定的な平和環境を実現するために議論を始めるべきである。

 日中両国の首脳外交は、両国関係を発展させる上で重要な役割を果たしている。2021年7月には東京オリンピックが開かれ、その翌年2月には北京で冬季オリンピックが開かれる予定である。世界に歴史的な困難が広がる中で、世界が参加するスポーツの祭典が日本と中国の二つの都で開かれることの意義は大きい。この環境下で行われる両国の首脳外交が両国民の幅広い理解に支えられるためにも、その環境づくりに取り組む。

日中双方は、これらの合意を踏まえ、世界やアジアの未来を見据えて、現在の困難に答えを見いだす努力を行うと同時に日中の新しい協力に向けて一層の努力を行う決意である。

   2020年12月1日    言論NPO 中国国際出版

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2020年12月5日