教皇の空位期間中、カトリック教会では新しい司教を指名することはできない。しかし、中国共産党・政府が、上海と新郷の二つの教区で二人の新司教を”任命”した。
故教皇フランシスコの遺産で最も問題なのは、バチカンと中国との関係だ。2018年に教皇フランシスコの下で、バチカンは中国と、中国国内での司教任命について暫定合意し、以来、期限が来るたびに更新してきた。その詳細はいまだに双方とも明らかにしていないが、ポイントは、司教は、双方の同意のもとに任命される、ということだ。
だが、任命の実権を握る中国共産党統一戦線工作部は、これまで、上海教区などで一方的に新司教を任命し、バチカンはそれを一定期間を置いて追認する、というルール違反を繰り返してきた。
そして、4月28日、中国共産党の管理下にある中国天主愛国協会(CCPA)は、上海教区の司祭たちを集め、司教総代理の呉建林神父(写真左=微博より)を新たな補佐司教に選出した。さらに翌29日、新郷教区の司祭たちが、李建林神父(写真右)を司教に選出した、という。いずれの”選挙”でも、候補者はただ一人だった。
バチカンと中国の司教任命に関する暫定合意では、双方は同意のもとに中国国内で新たな司教を任命できる。だが、今回の新司教選出は、4月21日の教皇フランシスコの死去に伴い、5月8日の新教皇選出まで、教皇座が空席となった期間に行われた。
カトリック教会では、司教を任命できるのは教皇だけであり、教皇座が空位の期間中は当然、新しい司教が任命されることはない。今回の選出、任命は、教皇の同意を得ることができない期間に行われ、暫定合意に違反した行為とえる。
また、新郷教区には、中国共産党の管理に入ることを拒否する”地下教会”の、教皇から任命を受けた67歳のジョセフ張偉鋳(チャン・ウェイチュウ)司教がすでにいる。にもかかわらず、新たに司教を任命したことになる。
今回、事実上、中国共産党が一方的に任命した二人は、いずれも中国共産党に忠実な人物として知られている。呉神父は2018年、中国の最高政治諮問機関である中国人民政治協商会議第13期全国委員会の委員に選出されたている。
中国側は、今回のようなやり方を繰り返すことで、しかも教皇空位期間にそれを行うことで、中国共産党主導の司教任命を既成事実化することを狙っている、と思われる。そうした中国共産党・政府の”ルール違反”に、新教皇レオ14世はどのように対応するのだろうか?
故教皇フランシスコに倣い、中国との良好な関係を維持するために不本意ながら二人の新司教を追認するのか、あるいは、この機会に暫定合意の見直しを求めるのか。新教皇の決意を試す”踏み絵”になりそうだ。
(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)