
バチカンは15日、教皇フランシスコが同日付で中国・上海教区の司教長にヨセフ沈斌(シェンビン)司教を任命した、と発表した。
上海教区長のポストは、過去9年間空席となっていたが、中国の政府・共産党の管理下にあるカトリック教会上海教区が4月4日、教区長に、国政助言機関の人民政治協商会議(政協)常務委員の沈斌司教が就任した、と一方的に発表。司教人事には双方の合意が必要とするバチカンと中国政府の暫定合意に反するものとして、バチカン関係者などから批判が出ていた。
それを教皇が3か月遅れで”追認”したことについて、バチカンのパロリン国務長官は同日、Vatican Mediaのインタビューで、沈斌・司教を教皇が上海教区長に任命したのは「優れた評価を得ている司牧者」であるため、と説明。合わせて、バチカンの中国との対話の進展と、バチカンの常設連絡事務所を北京に開設することへの期待を示した。
国務長官のVatican Mediaの問いに対する答えは以下の通り。
問:バチカンは、教皇フランシスコが上海教区の司教にヨセフ沈斌(シェンビン)司教を任命したことを発表した。この任命が、同司教が海門教区から(中国側の判断で)に上海教区に異動させられたのに遅れてなされたのはなぜか。また教皇フランシスコのこの行為は何を意味するのか。
答:このことを説明するためには、以前に起きたことと、その状況を振り返るのがよいでしょう。ご存知のように、教皇庁と中国間の司教任命をめぐる暫定合意は、2022年10月22日、さらに2年延長されています。延長が合意されて一か月経つか経たないうちに、中国・余江教区のヨハネ彭衛照(ポン・ウェイチョウ)司教が江西教区の補佐司教として着座した、との知らせを事後に受けた際には、バチカンは、驚きと遺憾を表明せねばならなかった。江西教区の設置はバチカンが承認しておらず、それに加えて、この人事について中国側からバチカンに何の相談も連絡もなかったからです。
上海教区の司教人事についても、海門教区の沈斌司教を上海教区長に異動させるという中国当局の処置の連絡は受けましたが、バチカンの合意を得ることはなかった。ただ、(前回の江西教区の補佐司教の一方的人事に対しては、即、遺憾の意を表明したのに対して)今回、時間をおいて対応しようという判断は、上海教区がバチカンの認めた教区であり、長期にわたって教区長が空席のままになっていたという司牧上の問題がある中で、優れた評価を得ている司牧者(であるかどうかの判断も含めて)、バチカンとして沈斌司教を版入教区長に任命する機会を、注意深く見極める必要があったから、と言えます。