・中国の新疆ウイグル地域の重要鉱物の採掘、精錬などで奴隷労働、欧米の多国籍企業数十社が関係(Bitter Winter) (2025.6.18 Bitter Winter Marco Respinti) (写真右・新疆 非鉄金属産業グループにおけるベリリウム製錬 。報告書より ) 国際人権団体Global Rights Complianceが11日、中国の新疆ウイグル 自治区(非漢族住民は東トルキスタンと呼ぶ)の重要鉱物セクターと欧米企業との重大なつながりを明らかにする詳細な報告書を発表した。 これは、新疆ウイグル自治区の主要産業である鉱物セクターにおける欧米の一流企業と強制労働とのつながりを網羅した初めての調査報告。 調査は18か月にわたり、エレクトロニクス、航空宇宙、エネルギー、防衛など、さまざまな世界の主要産業に不可欠な鉱物であるチタン、リチウム、ベリリウム、マグネシウムなどの必須鉱物のサプライチェーンについて、中国の政策文書、政府の出荷記録、学術出版物、調査報道などさまざまな情報源をもとになされた。 中国の重要な鉱物産業に関するこの調査は、トマトピューレの製造など食品関係分野での強制労働の実態を明らかにした前回調査に続くもの。前回調査では、コカ・コーラ、コスタ・コーヒー、スターバックス、ウォルマートといった世界的な企業を含む、少なくとも68の多国籍企業が、強制労働のもとで製造された製品とサプライチェーンでつながっていることを明らかにしていた。 中国は重要な鉱物について、採掘、加工、製造の各部門を支配し、世界的に重要な役割を果たしており、2024年には、44種類の重要鉱物のうち30種類の主要生産国として報告されている。そうした中で、新疆ウイグル自治区は、貿易取引を急増させており、2024年の輸出額は前年比21.8%増の599億8000万米ドル。 今回の報告書によれば、西側諸国の経済はこの地域から調達される鉱物への依存度を高めており、特に米国と英国への輸出が顕著に増加している。そして、新疆ウイグル地域で操業している重要鉱物セクターの企業として77社確認されており、過去2年間で欧米などの企業15社がウイグル地域から直接調達している。中国がサプライチェーンを戦略的に把握しにくくしていることを考えると、関与している企業の数はもっと多いとみられる。 報告書では、集団監視、抑留、投獄、強制労働を特徴とするウイグル市民への組織的な弾圧を指摘。ウイグル人が置かれている過酷な状況の詳述の中では、強制労働、強制移送や、コンプライアンス違反なども含まれている。また具体的に名が挙がっている企業の中には、リチウム加工会社の「新疆非鉄」があるが、同社は、強制労働慣行への関与が記録されているため、米国政府のウイグル人強制労働防止法リストに加えられている。 報告書は、欧米政府や企業に対して、重要鉱物に対する支配力を強める中国と、ウイグル人に対する深刻な人権侵害に対処するため組織的に対応すること求め、サプライチェーンにおける強制労働の実態を開示し、それに対処する立法措置を要求。また欧米企業に対し、サプライチェーンを注意深く追跡し、強制労働との関連を明確にしたうえで、適切に対処すること、欧米各国政府に対して、新疆ウイグル地域で現在進行中の人権侵害に対し、早急かつ断固とした行動を取るよう求めるとともに、中国の重要鉱物への依存を減らすよう提唱している。 「カトリック・あい」⇒報告書の全文はGRC-critical-minerals.pdf (globalrightscompliance.org) から読めます。 ツイート