右の写真は、中国浙江省・温州教区のペトロ・シャオ・ジュミン司教、2021年10月に当局に逮捕された後、教区に戻された、とucanews.com.は報じている。(撮影日時は不明=Credit: CNS photo/Courtesy UCAN.)
(2024.10.22 Crux Managing Editor Charles Collins)
英国貴族院の有力カトリック議員、デイビッド・アルトン卿がこのほど、「中国で迫害されている10人のカトリック司教」と題する声明を発表、「中国共産党の統制に従う中国天主愛国協会に反対する中国本土の司教10人を標的に虐待している」と非難した。
バチカンは、2日から始まった世界代表司教会議(シノドス)総会第2会期に中国本土から司教2人が参加させ、さらに総会開催中に、中国国内での司教任命に関する暫定合意の三度目の期間延長を発表しているが、中国国内でカトリック教徒や他の宗教信者が迫害されていることには事実上、目をつぶっている。
アルトン卿によると、迫害を受けているのは、ビンセンシオ・グオ・シジン司教、アウグスチヌス・クイ・タイ司教、ユリアヌス・ジア・ジーグオ司教、タデウス・マー・ダキン司教、ペトロ・シャオ・ジュミン司教、メルキオール・シー・ホンジェン司教、ヤコブ・スー・ジミン司教、ヨゼフ・シン・ウェンジ司教、ヨゼフ・ゼン・ゼキウン司教、ヨゼフ・チャン・ウェイジュ司教の10人。
彼らのうち7人は正当な手続きなしに拘留され、うち何人かは数年または数十年にわたって継続的に刑務所に入れられ、別の司教たちは2018年のバチカンと中国の司祭任命に関する暫定合意以来、最大6回も繰り返し拘留されている。
卿は、彼らを「バチカンが『忘れてほしい』と思っている10人の都合の悪い司教」と呼び、「なぜ彼らはそのような措置をうけているのか。それは、彼らに何を信じ、考え、何を言うべきかを指示する中国共産党の”権利”を受け入れないからだ」と語り、米国の保守系有力シンクタンク、ハドソン研究所の信仰の自由センターのニーナ・シェア所長の記事を引用して、中国共産党が10人の司教を「正当な手続きなしに無期限に拘留、失踪、治安警察による無期限の捜査、教区からの追放、脅迫、監視、尋問、いわゆる再教育など司教の職務に対するその他の妨害」にさらしていると批判した。
シェア氏は記事で、2015年に中国共産党による宗教の中国化政策が本格化して以来、「中国のカトリック教会は、毛沢東時代以来最大の弾圧を受けている」とし、「中国とバチカンの暫定合意は、『地下教会』と呼ばれることの多い、中国天主愛国協会への”良心的兵役拒否者”への配慮をせず、宗教的迫害にも対処していない。バチカンは、内容が秘匿されているこの暫定合意を『司教任命の権力分担の取り決めにのみ焦点を当てている』としているが、中国政府・共産党はこれを利用して国内の司教たちに中国天主愛国協会への加入を迫っている」と指摘。
「中国政府・共産党は暫定合意に明らかに違反して、一方的にいくつかの司教任命を発表。だが教皇フランシスコは、中国のカトリック教会の”統一”を図るために、事後にこれらの任命を承認した」と述べ、「だが、10人の司教に対する中国政府・共産党による迫害は、カトリック教会の統一に対する本当の脅威だ」とシェア氏は強調している。
アルトン卿はまた、10月17日付け米ウォールストリートジャーナル紙に掲載された、シノドスにおける中国代表に関するジョージ・ワイゲル氏(ヨハネ・パウロ2世教皇の伝記作家)の記事のコピーをフォロワーに送ったが、この記事でワイゲル氏は、宗教共同体を「中国化」させ、「習近平思想」に従わせようとする「しばしば残忍な取り組み」がある、と指摘。「バチカンと中国との交流は、完全な失敗だった」と批判している。
ワイゲル氏の記事は、今回のシノドス総会に参加している福建省下浦(福寧)教区長のビンセント詹思露(ヤン・シル)司教について、「中国政府は2000年に彼を司教に任命した。教皇の承認なしに司教の叙階を受け入れたため破門された。その後、2018年になってバチカンと和解したが、その1年後には『宗教の”中国化”を断固として実行する』ことと『社会主義社会に順応する道を歩み続ける』ことを公に誓っている」と非難。
さらに、中国本土からのもう一人の総会参加者の司教は、中国天主愛国協会の副会長である、と指摘。このようなことは、「中国政府・共産党の支配を受け入れている教会と、聖職者や信徒が投獄されたり殉教したりしてもローマに忠誠を誓い続けている、苦境に立たされた地下教会の間の溝をさらに深めるものだ」と警告している。
そして、教皇が、このような暫定合意の再延長に同意したのは、バチカンの外交官らが「暫定合意を結び、延長し、2人の司教のような人物をシノドス総会に迎え入れることは、現在、台湾と外交関係のあるバチカンが、(中国と)との完全な外交関係を結ぶ一歩だ」と説得したためだ」とし、「この”外交幻想”の追求は、中国で迫害されているすべてのカトリック信者に声を上げないようにすることに通じる…教皇は『対話に満足している』と述べており、その結果は『良かった』としているが、実際には、それは恥ずべきことだ」とワイゲル氏は述べている。
(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)