・巨大企業集団「新疆生産建設兵団」がウイグル人弾圧の主要手段になっている―英大学が調査報告(BW)

新疆生産建設隊が運営する準軍事部隊の兵舎。
Barracks of a paramilitary unit operated by XPCC. Credits.

 その衝撃的な事実が、英シェフィールド・ハラム大学のヘレナ・ケネディ国際司法センターの‎「‎‎何も残らなくなるまでー中国の入植者とウイグル地域における人権侵害‎‎」と題する調査研究報告書で明らかにされた。

 この組織は、新疆生産建設兵団(XPCC)といい、新疆ウイグル自治区における開墾と辺境防衛のための準軍事政府組織として1954年に正式に設立されたが、時間の経過とともに、ウイグル人など少数民族に「異常な恐怖と抑圧の環境」を作り出すための組織に変質。中国政府・共産党中央の指導の下に、現地で運営され、ウイグル人の生活の最も個人的な部分でさえも「監視され、裁かれ、罰せられる」ところまで、その活動は”進化”している、と報告書は指摘。‎

 XPCCの筆頭政治委員は現在、中国共産党中央政治局局員、新疆ウイグル自治区党委書記である陳全国が兼任し、中央政府と新疆ウイグル自治区の両者の指揮下にある。本部はウルムチ市に置かれ、258万人とされる団員の9割が漢族で占められ、毛沢東時代の1954年に設立された小さな国境防衛の準軍事組織だったXPCCが、今や中国国内上場企業13社と世界中で86万2000以上の企業を直接、間接に保有する数十億ドル規模の巨大複合企業になっている。

 ‎当初は農業開発と建設土木が中心だった事業は、エネルギー、鉱業、化学、石油および天然ガス生産、物流、繊維アパレル、エレクトロニクス、ワイン、食品加工、保険、観光など、幅広い分野に広がっており、「XPCCによって生産された商品はグローバルサプライチェーンにまで達しており、XPCCの建設プロジェクトは新疆ウイグル自治区にとどまらず、中国全土、中央アジア、中東、アフリカもその対象」と報告書は述べている。‎

 また新疆ウイグル自治区において‎XPCCは、地域の土地の6分の1、総人口の6分の1、およびその統治構造の多くを管理し、独自の軍事力、メディアネットワーク、学校と大学を保有し、刑務所まで運営している。

 最も問題なのは、中国国内から何十万人もの漢族を動員して同自治区に定住させ、それによって先住民族を”希釈”し、彼らから土地を奪って、漢族のための家屋や都市を建設する役割をXPCCが担っていること。そして、イスラム系ウイグル人など少数民族に対する、いわゆる”再教育センター”と強制労働プログラムの広大なネットワークを構築、運営していることだ。

 100万人以上がこのネットワークのもとに拘禁され、拷問やあらゆる種類の苦しみを味合わされる一方、さらに多くの人々が、欧米市場向けの商品を作る「貧困緩和」と名付けられた事業に動員されている。‎‎「この地域のすべての企業と投資プロジェクトは、ウイグル人を”変容”させ、洗脳し、労働集約的な仕事に”強制移送”し、中国政府のプログラムに従う企業責任の一環とみなされている」と報告は述べている。

 こうした人権侵害行為に対して、米国は2019年7月、XPCCとその最高幹部の2人に対して制裁を発動。XPCC傘下のすべての企業の製品の米国への入国を禁止しているが、「XPCC製品、特に輸出用に引用されたトマト、石炭、綿、羊毛の生地は、現在、英国と米国への輸出が禁じられているものの、複雑で説明責任があいまいな流通ネットワークのために、世界中への輸出が続いている」という。‎

 報告では、‎XPCCによる住民の土地への侵入、乏しい水資源の流用、古来からの入植地の破壊、文化的、宗教的な施設の破壊などの具体例が示され、中国政府・共産党中央の指示を受けたXPCCの容赦ない行動が、「テュルク人など少数民族の排除、あるいは完全な同化」という最終目標のもとに進められていることを明確に示している。‎

 「‎何世紀にもわたって耕作されてきた畑、オアシスの家、彫刻された柱、果樹園がブルドーザーで破壊され、中国人入植者のための規格にはまったコンクリートの住宅団地が建設されていく中で、地元住民が受ける経済的、肉体的、精神的、感情的な打撃は無視された。多くの人が、自宅を取り壊し、土地を明け渡せば、報奨金を与えると言われ、国営の監視付きの無味乾燥な団地に強制的に移住させられている」と報告は述べている。‎

 「貧困緩和」工場の「転勤労働者」。レポートから。‎XPCCの”陰謀”を深く掘り下げたこの報告書は、中国政府・共産党中央の主導のもとに、すべてのテュルク人など少数民族を恐怖に陥れ、漢の慣行と習近平・主席の「新時代ビジョン」を支持し、自分たちの伝統文化と言語を捨てさせる周到な取り組みの実態を明らかにしている。‎

 ‎「『雑草を切り刻み、根を破壊し、何も残らなくなるまで悪を排除する』‎という習近平・主席の命令は、XPCCによって新彊ウイグル自治区を事実上の”開放刑務所”に変えてきた… 監視と近隣のネットワークに四六時中さらされ、信仰を実践することが逮捕・監禁の理由にされることの恐怖、真夜中に公安が自宅を訪れ、学者、作家、友人が消されていく、という恐怖の中で暮らしている人々は、明日は自分が同じ目に遭うかもしれない、という強迫観念に取り憑かれている」。‎

 シェフィールド・ハラム大学のヘレナ・ケネディ国際司法センターの‎‎人権‎‎と現代奴隷制の専門で、報告書の著者の一人、ローラ・マーフィー教授はこう訴えている。

 ‎「XPCCの主な目的は、ウイグル人の文化に何も残らなくなるまで、ウイグル人を支配、脅迫、解散させ、最終的に崩壊させることです。‎強制労働プログラムを背景に企業帝国を築き上げてきたXPCCは、世界経済に大きな影響を与えている。世界の各国政府と企業のリーダーたちが、XPCCのこのような人権侵害に共同で立ち向かわねばなりません。世界中の企業がXPCCの子会社から製品や原材料などを調達し続ける限り、ウイグル人やこの地域に住む少数民族の人々は苦しみ続けます」‎。

 報告は、‎XPCCによって栽培、加工、製造された商品の輸入禁止を含む、直接行動と、さらに多くの制裁が課されねばならない、と主張。米国のマグニツキー法に基づく制裁措置の対象を、さらに多くの個人に広げるよう求めている。

 報告を受けて、世界の民主主義国の超党派の有志議員で組織する「中国に関する列国議会同盟(IPAC)」の共同議長20人が、XPCCに説明責任を負わせる緊急行動を提唱。具体的には、「XPCCが過半数の株式を保有する中国内外の2873社に対する輸出管理」を含む、強固な規制措置、XPCCおよび新疆ウイグル自治区における強制労働に責任のある他の組織によって製造された商品の輸入を禁止するための”現代奴隷制法”の改革を提案した。‎

‎ また、世界ウイグル‎会議やウイグルにおける‎強制労働撲滅連合を含むウイグル人‎の国際組織は、「すべての国のすべての企業が、XPCC企業および子会社とのすべての関係を断つよう」改めて、世界各国政府、企業に呼びかている。‎

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

*Bitter Winter(https://jp.bitterwinter.org )は、中国における信教の自由 と人権 について報道するオンライン・メディアとして2018年5月に創刊。イタリアのトリノを拠点とする新興宗教研究センター(CESNUR)が、毎日4か国語でニュースを発信中。世界各国の研究者、ジャーナリスト、人権活動家が連携し、中国における、あらゆる宗教に対する迫害に関するニュース、公的文書、証言を公表し、弱者の声を伝えている。中国全土の数百人の記者ネットワークにより生の声を届け, 中国の現状や、宗教の状況を毎日報告しており、多くの場合、他では目にしないような写真や動画も送信している。中国で迫害を受けている宗教的マイノリティや宗教団体から直接報告を受けることもある。編集長のマッシモ・イントロヴィーニャ(Massimo Introvigne)は教皇庁立グレゴリアン大学で学んだ宗教研究で著名な学者。ー「カトリック・あい」はBitterWinterの承認を受けて記事を転載します。
このエントリーをはてなブックマークに追加
2022年8月24日