*「まず、神の民に耳を傾ける」ーバチカンの事務局が”シノドスの旅”の準備文書を発表

File photo from the 2019 Synod of BishopsFile photo from the 2019 Synod of Bishops  (Vatican Media)TOWARDS THE SYNOD

 

*シノダリティ(共働性)への具体的な提案

 この問いに対する答えとして、準備文書は、いくつかの具体的な提案をしている。まず第一に、「すべての人、特にさまざまな理由で自分自身を社会の片隅に追いやる人たちに、自分について語り、それを聞いてもらえる機会ーを提供する、参加型の包括的な教会のプロセス」を実践すること、そして、「全人間家族のために、聖霊がふんだんにくださる賜物と特別な能力の豊かさと多様さ」を認識し、感謝することを勧めている。

 さらに、「教会において責任と権力が、それらが管理されている仕組みも含めて、どのように果たされているのか。福音に根ざさない偏見や歪んだ慣習をに光を当て、改めようとしているのか」吟味するように求めている。

 また準備文書は、キリスト教共同体が、社会的な対話、癒し、和解、一体性と参加、民主主義の再建、兄弟愛と社会的な友情の促進などの面で、信頼できる主体、頼ることのできるパートナーとして認められるには、どうしたらいいかについても、考えるように促している。

 そして、「既存の不平等と不公正を”爆発”させた新型コロナウイルスの世界的大感染の”世界的悲劇”で始まった、”新時代を画する”社会変化」で特徴づけられる歴史的文脈」の中で、このような具体的な歩みがなされることになるだろう、と指摘。

 さらに、教会自身も「信仰の欠如と教会内部で起きている腐敗と向き合あわねばならない」事態の中で、シノドス・プロセスが行われることを認め、「聖職者による性的虐待、物理的、精神的な虐待を受けた未成年者や傷つきやすい人々の、苦しみを忘れてはならない」と強調。「(教会は)まさに、あらゆる類いの苦しみで掘られた”溝”の中にある」としたうえで、「キリスト教徒と教会生活の道」を刷新するために、「信仰の新たな言語」と「新たな道」が盛んになること、最近開かれたシノドスによって求められたように、一般信徒、とくに女性と若者たちの参加と正当な評価が改めて認識されるために十分なが提供される機会が必要、としている。

 

 

*シノダリティの三つのレベル

 また、準備文書は、シノダリティ(共働性)について3つのレベルを説明しているー「教会が日常的に生活し、働くスタイルのレベル」「教会の仕組みとプロセスのレベル」、そして「正当な権威によって招集された教会のシノドスのプロセスとイベントのレベル」だ。シノダリティについての3つのレベルの関連は異なるが、「首尾一貫した形で捉えられる必要がある。そうしないと、反証が出され、教会の信頼性が損なわれる」。

 この経験の評価においては、信徒、司牧者、小教区、そして共同体の関係について、個々の教会だけでなく、司教たち(司教たちの間、として教皇との関係)についても、考慮に入れなければならない。また、多様な形態の修道生活と奉献生活、さまざまな協会や運動組織、学校、病院、大学、財団、慈善団体などのさまざまな機関全体についても考える必要があり、さらに他宗教や信仰から離れた人々、政治、文化、金融、労働、労働組合、少数者などさまざまな外部の人や組織、団体との関係、として、共同の取り組みについても考えることが重要だ、としている。

The stages of the synodal journey

*「生きたシノダリティ(共働性)」へ10の提案

 最後に、準備文書は、「生きたシノダリティ」実現へ次の10のポイントを示し、シノドスの旅を最初の段階からより豊かなものとするために、これらを徹底的に追求する必要がある、としている。

*The Journeying Companions(旅の仲間たち):つまり、私たちが「自分の教会」と定義するもの、そして「仲間たち」を、特に、社会で軽視されている人たち、教会の境界を越えている人たちについて、深く考えること。

*Listening(耳を傾ける):若者たち、女性たち、聖職に身を捧げる男女、そして社会から捨てられたり排除されたりする人々たち(注:の声、声にならない声)に、耳を傾ける。

*Speaking Out(勇気を持って語る):「二枚舌や日和見主義的な振る舞いのない、自由で真正な意思疎通の仕方」が教会のコミュニティの中で、その制度で、積極的になされているのか、主体的に考える。

*Celebrating(祝福する):私たちが「共に歩む」ことを、祈りと典礼がどのように促進し、導くのか、そして信徒たちの積極的な参加をどのように実現していくか、について考慮する。

Co-responsible in the Mission(使命を果たすことへの共同の責任):社会正義、人権の推進、私たちの「共通の家」の保護などの仕事に携わる仲間を教会共同体がどのように支援するか、について真剣に考える。

Dialogue in Church and Society(教会の中、そして社会の中での対話):教区群の中において、近隣教区、修道会や活動体、様々な組織体、信徒でない人々、貧しい人々との、対話の場と手段について再考する。

*With the Other Christian Denominations(キリスト教の他宗派との関係):自分がキリスト教徒だと認めている兄弟姉妹との関係はどうなのか?その関係には、どの分野が含まれているのか、そしてそのような関係がもたらした成果と課題は何か?

*Authority and Participation(権威と参加):自分たちの教区で権威がどのように行使されているのか?共同作業の経験があるとすれば何か?一般信徒の参加はどのように進められているのか?

*Discerning and Deciding(識別し、決定する):(教区や小教区などで)決定を下す際に、どのような手順と方法がとられているのか?政策決定の過程は、意思決定とどのようにつながっているのか?透明性を確保し、説明責任を果たすための手段は整備されているか?

Forming Ourselves in Synodality(シノダリティの中で私たち自身を形成する):要は、キリスト教共同体において責任ある立場にある人々が、今よりももっと人々の声を聴き、対話することができるよう助けるために、”陣形”をよく見ることだ。

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 なお、シノドス事務局は、各教区に、対話と熟考の成果を文書にまとめるにあたっては、最大で10ページにとどめ、必要なら別に補足資料を添付するように求めている。そして、目標は「文書を作成することではなく、夢、予言、希望を植えること」と強調している。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

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2021年9月7日