・バチカンが新規制ーリスクの高い投資、ポルノ、武器生産企業への投資を排除へ(Crux)

 ROME-バチカンの財務事務局が19日、投資慣行の合理化と改革の両方を目的とした規制を実施する旨の声明を発表したが、その中で、ポルノや売春、ギャンブル、武器産業、避妊や妊娠中絶医療など、カトリック教会の社会教説に反する”商売”をしている企業への投資の禁止が明確にされている。

 これまでのバチカンの資金運用、投資活動にはさまざまな問題が指摘されてきた。

 現在、元教皇側近のアンジェロ・ベッチウ枢機卿などを被告とした裁判が行われているロンドンの不動産をめぐる不明朗な投資では、2014年から2018年の間に、国務省が2億ドル(約260億円)以上の資金をつぎ込み、さらに、仲介したブローカーへの支払いと金融機関からの借入金返済などで、事実上の損失額は 2億1700万ユーロ(約300億円)に上ると言われている。

 それ以外にも、過去に、国務省が一部を出資した投資基金を通じて、避妊薬製造会社、ポルノ産業、あるいは、映画「ロケット・マン」や歌手のエルトン・ジョンの伝記映画の製作会社など、カトリック教会の社会教説に反する商品を生産する会社に数百万ユーロ(約80億円)を注ぎ込んだ、と批判されている。

 新規制の導入は、このような疑惑ばかりか、バチカン財政に大きな打撃を与えかねないリスクの高い投資を根絶するのが狙いだ。

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 規制の対象となるのは、バチカンのすべての部署、組織で、9月1日の規制発効で、これまで各部署、組織でバラバラに運用されてきた投資資金は、バチカン銀行の使途座財産管理局の口座に統合され、カトリック教会としての倫理的、社会的、および環境的基準に基づいた低リスクの投資を選択が事実上義務付けられることになる。

7月、バチカン市国は、金銭上の不正行為で告発されたアンジェロ・ベチウ枢機卿を含む10人の裁判の中心に残っている不動産を売却したと発表しました。教会は失敗した投資で推定2億1700万ユーロ(2億4200万ドル)を失いました。

 声明では、バチカンの資金は「公正で持続可能な世界に貢献する」のに役立つべきであり、常に「聖座の純資産の真の価値を維持し、持続可能な方法で、聖座の活動に貢献するのに十分な利益を生み出す」ことを念頭に置く、としている。

 また、バチカンの投資活動は、「カトリック教会の社会教説」と「一致」していなければならず、したがって「生命の尊厳、人間の尊厳、あるいは共通善などの基本原則と矛盾する投資」は投資対象から除外することを義務付けている。

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

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2022年7月22日