・ 日本・バチカン80周年を記念ー「結ぶ」テーマに生け花とダンス、天正少年使節ゆかりの教会で献花

(2022.6.3 バチカン放送)

 日本とバチカン間の外交関係樹立から80年を記念し、6月2日、「結ぶ」をテーマに、ローマ市内のカンチェレリア宮殿で、伝統的な生け花と現代的なダンスを融合した日本の若い芸術家たちによる演技が披露された。サンタ・マリア・デッロルト教会内の福者中浦ジュリアンの肖像前では、小原流五世家元・小原宏貴氏による献花が行われた。

 カンチェレリア宮殿は、カンポ・ディ・フィオーリに隣接する16世紀初頭の建造物で、内部には教皇庁の裁判所(最高裁判所・内赦院、控訴院)が置かれている。

 この催しでは、ルネッサンス様式をそのままに伝える同宮殿の広間で、「結ぶ」をテーマに、いけばな小原流五世家元・小原宏貴氏による生け花とインスタレーション*、舞踊家・振付師のセイシロウ氏による現代舞踏が、衣装デザイナーの齋藤ヒロスミ氏の協力で行われた。

1970年代以降一般化した、絵画彫刻映像写真などと並ぶ現代美術における表現手法・ジャンルの一つ。ある特定の室内や屋外などにオブジェや装置を置いて、作家の意向に沿っ て空間を構成し変化・異化させ、場所や空間全体を作品として体験させる芸術(Wikipediaより)

 記念イベントの開催で挨拶した岡田誠司・駐バチカン大使は、この80年間に強められた日本バチカンの関係を振り返り、最近の記念すべき出来事として2019年の教皇フランシスコの訪日、そして今年5月の岸田首相のバチカン訪問を挙げるとともに、「日本伝統の生け花にとどまらず、新しい芸術のあり方について創造的な活動を行っている小原氏と、舞踏家のセイシロウ氏とのコラボレーションによる全く新しい芸術を楽しんでいただきたい」と述べた。

 また、教皇庁文化評議会次長、タイ・ポール・デスモンド師は、日本の芸術に触れるこの機会に喜びを語り、「芸術は、それぞれの歴史や社会を背景に育まれたものであっても、その美は普遍の言語を語り、すべての人の魂に触れることができます」と語った。

 インスタレーションでは、まず、広間に組み立てられた木材に、バチカンと日本の絆の歴史を象徴するように、結んだ帯が一つひとつ取り付けられ、小原氏の手で組んだ木の間に枝や葉また花が入れられる中で、インスタレーションは生き生きとした表情と奥行きを帯びていった。

 小原氏によれば、インスタレーションに使用された帯は、小原流いけばなの会員たちの寄贈によるもので、これには”持続可能性”への思いがあるという。

 続いて、完成したインスタレーションの前で、セイシロウ氏が帯をアレンジした純白の衣装をまとい、静と動が共存する、ストーリーと情感あふれるダンスを力強く舞った。

ルネッサンスの雰囲気が漂う重厚な広間で、日本の若い芸術家たちが挑む伝統と現代芸術が融合した演技に、観客は惜しみない拍手を送った。

**********

 また、この催しと並行して、ローマ市内のサンタ・サンタ・マリア・デッロルト教会・福者中浦ジュリアン肖像前に、小原流五世家元・小原宏貴氏による献花 2022年6月1日マリア・デッロルト教会内の福者中浦ジュリアン神父の肖像(三牧樺ず子氏作)ので、小原流五世家元・小原宏貴氏による献花が行われた。

 ローマのトラステヴェレ地区にあるサンタ・マリア・デッロルト教会は、日本と深いつながりを持っている。

 1585年、天正遣欧少年使節団がローマに到着した。使節のローマ滞在中のある日、歓待行事の一つとして、テベレ川を舟で下り、オスティア方面の海へと向かう遠足が企画された。テベレ川の舟着き場「リーパ・グランデ」から乗船する前に、少年たちは近くのサンタ・マリア・デッロルト教会に立ち寄り、祈りを捧げた。

 海に近づき、教皇シスト5世が派遣した楽隊を乗せた別の小舟も加わって、宴が行われようとした時、突然の激しい嵐に見舞われ、何隻もの舟が波にのまれそうになった。だが、使節の少年たちが、乗船前に訪れた同教会の聖母を心に留め、熱心に祈ると、嵐は急におさまり、すべての舟は無事ローマに戻ることができた。

 この出来事から、3年後、シスト5世は、サンタ・マリア・デッロルト教会に付属する信心会(コンフラテルニタ)を、複合的な大きな信心会(アルチコンフラテルニタ)に引き上げた。現在でも、同教会の聖母の祭日(10月第3日曜日)には、1585年の出来事を思い起こし、ミサの中で感謝の賛歌「テ・デウム」が捧げられる。

 日本から初めてローマを訪れた天正遣欧少年使節は、サンタ・マリア・デッロルト教会の歴史にも、日本とローマを結ぶ一つの絆を残した。こうしたゆかりから、中浦ジュリアン神父が列福された翌年、2009年、同福者の肖像画が寄贈されている。

(編集「カトリック・あい」)

 

このエントリーをはてなブックマークに追加
2022年6月4日