・「普遍的な愛を学ぶために」福音宣教省長官、新回勅『Fratelli tutti』を強く推奨

Pope Francis with Cardinal Tagle, President of Caritas InternationalisPope Francis with Cardinal Tagle, President of Caritas Internationalis  (AFP or licensors)

   カトリックの国際福祉活動団体、 カリタス・インターナショナルの会長でバチカンの福音宣教省長官のアントニオ・タグレ枢機卿は12日、同団体主催のインターネット・シンポジウムで講演し、「具体的、普遍的、偏見のない愛を学ぶために、教皇の出されたこの新回勅を読むように」と強く勧めた。

 シンポジウムは「新回勅『Fratelli tutti(All Brothers)』はカリタスの活動にとって何を意味するか」をテーマに、「カリタス」すなわち「愛」の文脈で、新回勅を学び、世界中での社会活動に役立てる方法を探るために開かれた。

 タグレ枢機卿は講演で、まず、回勅全体を読むように、参加者全員に推奨。その理由として「教皇フランシスコは、この回勅で、従来からお話になっている考えのいくつかを、現在の閉鎖的な世界への対応する形で、新たに示されているからです」と説明。

 「教皇は、いつも、教会の豊かな聖書の伝統と教会の教えー教義的、道徳的、社会教説ーをもとに語られています」と述べ、「このような教皇の、さらにお広げになった省察に、皆で参加しましょう」と訴えた。

 続いて、枢機卿は、現在の世界が苦しんでいる「愛の欠如の、極めて嘆かわしい状況」に言及し、「自分の中に閉じこもる多くの兆候が世界に存在している」のを、私たちは目にすることができる、とし、このような閉じた世界で、私たち皆が苦しんでいるが、その中で最も苦しんでいるのが貧しい人々だ、と指摘。そして、「彼らは、たやすく忘れられ、無視され、捨て去られてしまう存在。私たちは、閉じた世界のもたらす結果によって、動かされてしまいます」と警告した。

 そのうえで、枢機卿は新回勅で教皇が提起されている二つの重要な点について語った。

 一つ目は「普遍的な愛」で、回勅では、「慈愛のイメージが普遍的な愛のイメージとして示されています。それが神の愛の形です。神はすべての人を愛しておられるーイエスが示す愛です」とし、 「イエスはすべての人、特に、『社会から愛されていない』とご覧になった人たちを愛していました。見捨てられた人たち。そこから、『見知らぬ人に対する普遍的な愛』を私たちに示した『善きサマリア人のたとえ話』を見出します」と語った。

 二つ目の重要なポイントは、「出会いの文化」に関するものだ。普遍的な愛は「容易にスローガンになってしまう可能性がある」が、普遍性は、出会いと具体性を伴う場合にのみ実現できる、と枢機卿は指摘。 「教皇フランシスコは、対話をするとき、それが否定されないように自分の立場についても知っていなければならない、と言われます。そしてあなたの宗教的立場が確保され、そしてあなたは宗教間対話に開かれます」と述べ、「同様に、すべての国はその政治システムと政策に権利がありますが、国の政治は国際政治のレベルでの慈善につながる必要があります」と指摘した。

 そして、「望まれるのは、出会いの文化、異なる文化の出会いを通して、私たちが、政治を行い、経済に対処するために、もっと良い方法を見つけること… 文化を通して友情を固め、紛争を解決するより良い方法を見つけることです。これらすべてが共通善につながるはずです。善のすべてーそれが、最終的には一人ひとりも利益をもたらします」と強調した。

 講演の最後に、枢機卿は、カリタスの活動が新回勅から学ぶことができるいくつかの教訓を指摘。その中に、「心、手、頭、領地、文化を閉じる兆候に敏感」になることで、教皇と共になることも含め、「このような兆候は非常に捉えにくいものですが、教皇は新回勅で『目を見開き、世界に開こうとする働きへの脅威に敏感であり、識別を怠らないように』と求めたおられます」と締めくくった。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

 

 

このエントリーをはてなブックマークに追加
2020年11月13日