・未成年性的虐待”逆転無罪”のペル枢機卿が教皇に挨拶

(2020.10.13 バチカン放送)

 オーストラリア出身で2014年から2019年まで教皇庁財務事務局長官を務めたペル枢機卿(79)が、ローマに戻り、12日、バチカンに教皇フランシスコを訪問した。教皇は、ペル枢機卿と再会の挨拶を交わされ、同枢機卿のこれまでの証しに感謝を述べられた。

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 ペル枢機卿は、メルボルン大司教時代における未成年者への性的虐待の訴えを受け、裁判のため、財務事務局長官任期中の2017年7月、教皇の許可を得てオーストラリアに帰国。2018年12月、メルボルン地裁から有罪判決を受けた。2019年8月の控訴審で、ビクトリア州最高裁は、地裁判決を支持し、枢機卿の控訴を棄却。だが、無罪を主張してきた枢機卿は、連邦最高裁判所に上告し、2020年4月、同裁判所が、「犯罪は行われなかったという理にかなった可能性があり、よって、無実の人物を罪に定める可能性がある」とし、下級審の有罪判決を破棄し、無罪とした。

 最高裁判決まで、ペル枢機卿は、約400日間、禁固刑に服していた。枢機卿は釈放後、自身が常に訴え続けた無実が認められたことで、「これまで受けた不正義が正された」と語り、告発者に対する恨みはない、とも述べた。そして、長い癒しの基礎となるものは真理であり、正義の唯一の基礎も真理である、なぜなら正義とは、すべての人のための真理を意味している、と話した。

 教皇フランシスコは、ペル枢機卿の無罪判決の知らせから数時間後、バチカンのサンタ・マルタ館でのミサで、「四旬節のこの日々、私たちは、イエスが迫害され、律法学者たちがイエスをいかに敵視したかを見ました。イエスは罪のない方でありながら、憎しみによって裁かれました。今日、わたしは、憎しみによる不当な判決に苦しむすべての人々のために祈りたいと思います」と、ペル枢機卿の名前に触れずに、このように説教した。

 バチカン広報局は、ペル枢機卿の無罪判決を受けて声明を出し、教皇庁は常にオーストラリアの司法当局に信頼を置き、同連邦最高裁判所の、ジョージ・ペル枢機卿に対する未成年者虐待の訴えに無罪を告げ、実刑判決を破棄した、全会一致の判決を好意的に受け止めている、と述べていた。また、枢機卿は、司法府の判断に自らをゆだね、真理が明らかになることを待ちながら、一貫して無罪を訴えていた、とし、この機会に、未成年者に対するあらゆる虐待の防止と追及に取り組む教皇庁の意向を改めて強調していた。

(編集「カトリック・あい」)

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2020年10月13日