・教皇が5日から初のイラク訪問-一年3か月ぶりの海外、現地は準備進むが…(LaCroix)

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A policeman stands guard on February 27, in the neighborhood of the St. Joseph Chaldean Church in Baghdad, where the pope will celebrate Mass. (Photo by AHMAD AL-RUBAYE/AFP)

(2021.3.1 LaCroix  Sofia Nitti )

 教皇フランシスコが歴代教皇として初めてのイラク訪問を5日から8日にかけて行われる。教皇が一昨年11月の日本・タイ訪問以来、一年3か月ぶりの外国訪問として選んだのは、新型コロナウイルス感染と治安の危機の真っただ中にあるこの国だ。

 教皇を迎える首都バグダッドの中心部に隣接する、カラダ地区では、教会群の大部分を防御するコンクリート製のバリケードを落書きと看板で隠そうとしている。教皇が6日にミサを予定している聖ヨセフ・カルディア教会の側には「Benvenuto a Francesco」(ようこそ、フランシスコ)のポスターが貼られている…。

 治安悪化と新型コロナウイルス感染拡大が懸念される中で、バグダッドは、同国の歴史上初となる教皇の訪問を控えて準備が進められている。この2週間、国を挙げて徹底したコロナ対策、治安対策が進められてきた。教皇が到着する5日、金曜日から7日、日曜日まで封鎖体制が敷かれ、夜間は午後8時から翌朝5時まで外出禁止令が出される予定だ。

 人口700万のバグダッドは、これまでの内戦、宗派間の暴力、テロの傷跡を残している。2015年に「世界で最も危険な都市」に選ばれて以来、内戦終結、治安回復へ長い道のりを歩んでいる。

 米国のワシントン中近東政策研究所のハムディ・マリク研究員は「現在、治安状況はかなり安定しており、ここ数ヶ月、そうした状況が続いている」と語っているが、キリスト教徒の流出が続くなど、緊張状態が解消したわけではない。

 2019年末以来、バグダッドでは、官公庁や各国大使館があり極めて安全とされている地区の米国大使館に向けてミサイルが撃ち込まれている。米国とイラクの政府当局者は、親イランの武装民兵の仕業だと非難している。これだけではない、国際テロ組織ISISによる散発的な脅威がある。1月21日に首都の最も忙しい市場の1つで自爆テロが発生、 32人という最近3年間で最多の犠牲者を出した。

 マリク研究員は、このようなことがあったからといって、教皇の訪問に大きな危険をもたらすとは考えておらず、「ISISが”高レベルの標的”を狙うリスクは非常に低い。ISISの戦闘員は教皇はもちろん、治安部隊を攻撃することもしないだろうし、新イラン民兵も教皇を襲う可能性は低い」と言う。

 宗教関係者やその他の少数派の保護に力を注いでいるハムラビ人権機構のウィリアム・ワルダ会長も「宗派間の暴力抗争が復活する可能性は低い」と確信。「特定の宗教を標的にするような攻撃はもはやないでしょう。2006年から2008年の間に信仰ゆえに数千人のキリスト教徒が殺害されたのようなことは再発しないでしょう」と楽観している。

 バグダッドでは、イスラム教徒が95㌫を占め、キリスト教徒は7万5000人だ。ワルダ会長は「2003年の段階では少なくとも72万人のキリスト教徒がいました。バクダッドは、この20年足らずの間にイラクで、キリスト教が最も多く減少した都市となっている。

 また、一昨年秋から昨年にかけては、インフレや賃金支払いの遅れなどを背景にした反政府デモが燃え盛り、治安部隊との抗争で、全国で少なくとも600人が命を落としている。

 人口の3割が30歳以下というこの国では、労働市場に多くの若者が入ってきているが、なかなか職が見つからない。ロンドンのチャタムハウス(王立国際問題研究所)の研究者であるレナド・マンスール研究員は「コロナ感染宅策の一環としての対外封鎖は、腐敗と非効率で危うくされている経済システムにさらなるダメージを与える」と経済的な見地から問題を指摘する。

 バグダッドで、5日からの教皇の訪問を成功させるに十分な平穏が確保されるとしても、長期にわたって平穏な状況が続く保証はない。

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

(注:LA CROIX internationalは、1883年に創刊された世界的に権威のある独立系のカトリック日刊紙LA CROIXのオンライン版。急激に変化する世界と教会の動きを適切な報道と解説で追い続けていることに定評があります。「カトリック・あい」は翻訳・転載の許可を得て、逐次、掲載していきます。原文はhttps://international.la-croix.comでご覧になれます。

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2021年3月2日