・教皇、福音宣教省の新長官にマニラ大司教タグレ枢機卿を任命

(2019.12.9 カトリック・あい)

 教皇フランシスコは8日、福音宣教省の新長官に、マニラ大司教のルイス・アントニオ・タグレ枢機卿を任命された。前任のフェルナンド・フィローニ枢機卿が、エドウィン・フレデリック・オブライエン枢機卿の聖墳墓騎士団団長引退に伴い、その後任に回ることによる。  

 タグレ司教は1957年生まれの62歳。アジアにおける有数の神学者として知られ、国際神学委員会のメンバーでもあった。2011年にフィリピンのイムス教区の司教からマニラ大司教区の大司教となり、その後、2012年に教皇ベネディクト16世から枢機卿に任命され、国際カリタスの代表も務め、その人柄と指導力で「アジアから教皇が選ばれるならタグレ枢機卿」と国際的な評価も高い。日本の高位聖職者の中では、東京の菊地功大司教がカリタス・アジアの代表を務めていたこともあり、カリタスの活動などを通じて親しい関係にある。

 福音宣教省は、日本を含めた非カトリック国における宣教と福音化、それにともなう教会の活動を司る部署で、対象国の高位聖職者の人事などにも強い影響力と権限を持つ。

 だが、同省が昨年夏、日本の司教団との事前協議なしに「新求道共同体の道(ネオカテクーメナート)」の司祭養成の神学院の東京設置を一方的に通告したことから、日本の司教団の間に大きな物議を醸し、日本側関係者の教皇への事実上の直訴もあって、今年になって計画を撤回、神学院はマカオに開設することになった。だが、フィローニ長官がネオカテクーメナートのメンバーであることもあり、同省と日本との関係もぎくしゃくし、人事などにも影響が出ていた。

 日本と関係が深く、個人的に親しい関係を持つ高位聖職者もいることから、関係は好転、一部に停滞している高位聖職者人事なども円滑に進むことが期待されている。

 もうひとつは対中国関係だ。

 福音宣教省は、中国のカトリック教会を監督する立場にもあるが、バチカン内部に中国寄りの動きが顕著にみられる中で、フィローニ長官は今年2月にバチカンの日刊紙『オッセルヴァ―トレ・ロマーノ』のインタビューに答え、昨年秋のバチカンと中国政府の暫定合意に関連して、「この合意による(中国政府・共産党の統制を拒否する)地下教会と(統制下にある)中国天主教愛国協会の間に勝ち負けは存在しない」「合意が(中国政府・共産党によって)不当に利用され、現地の信者が、中国天主教愛国協会への参加など、中国の法律でさえ要求していない行為を強要されている現地の状況について見聞きしなくても済むようになって欲しいものです」と現在の中国政府・共産党の地下教会弾圧に批判的な立場を明確にしていた。

 中国では習近平政権の下で、新疆ウイグル自治区でイスラム教徒に対する弾圧を強め、カトリック地下教会に限らず、様々な宗教への圧力も顕著になっている。こうした状況の中で、タグレ新長官が対中国関係でどのようなスタンスをとるのか、特に昨年9月以来、”暫定”のまま一年以上も据え置かれているバチカン・中国合意の扱いにどのような対応を示すのか、注目される。

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2019年12月9日