・教皇、”特使”枢機卿をウクライナに派遣ー連帯と祈りの証し(VN)

Cardinale Krajewski in Lviv, UkraineCardinale Krajewski in Lviv, Ukraine 

(2022.3.9  Vatican News  By Alessandro De Carolis )

 ロシアの軍事侵略で危機が続くウクライナに、教皇がバチカンからコンラート・クライェフスキ枢機卿 (教皇慈善活動室責任者)を派遣された。枢機卿はポーランドを経て8日、ウクライナ西部の都市、リヴィウに入り、国内のロシア軍の攻撃を受けている地域から避難してきた人々を激励した。

ウクライナの惨状に心を痛め、ロシアに即時停戦を訴え続けておられる教皇は、早期平和回復を祈られるだけでなく、ご自身でローマの駐バチカン大使館を訪問され、大使に対して、プーチン大領領に即時停戦と人権回廊の開設を求めるご自身の意向を伝えるよう求められ、パロリン国務長官を問うしてロシアのラブロフ外相にも同様の働き掛けをされている。

そうした中で、さらに、ウクライナの人々への物心両面からの支援も開始され、具体的な支援の証しとして、クライェフスキ枢機卿を現地入りさせた。

 

*人道援助物資は今のところ確実に現地に到着

8日にポーランドとの国境を越えてウクライナに入った枢機卿は、被災者たちの当面の避難場所となっているリヴィウなどを訪問。現地での電話取材に答えた枢機卿は、「私はリヴィウにいるが、安全上の理由から、正確な場所を特定することはできない」と前置き。 そのうえで、 「私がいる所は、EU(欧州連合)からの大量の人道援助物資がポーランドを経由して到着する場所。援助物資は大きな倉庫に集められ、トラックでキエフやオデッサなどウクライナ南部に向けて運ばれている。幸いなことに、(ロシア軍の)爆撃にもかかわらず、援助物資は全量が目的地に届けられ続けています」と語った。

援助物資が各地に今のところ、確実に届けられているのは、キエフ、オデッサ、ハリコフの司教たち、そして、クライェフスキ枢機卿が接触している駐ウクライナ・バチカン大使のヴィスヴァルダス・クルボカス大司教によって確認されている。

*宗派を超えたリーダーたちと共に祈る

 枢機卿は、ウクライナ入りした初日の8日、ウクライナ正教会のリーダーであるスヴェストロフ・シェフチェク総主教と会見。10日は、シェフチェク総主教はじめ様々な宗派の指導者たちと共に、祈りの時間を持つ予定だ。

 「私たちは、信仰が山をも動かすことができる、と知っています。福音書にはそう書かれており、私たちはそれを確信しています。私たちは、まさに祈りによって、信仰によって、この戦争を手めるのに成功すると考えます」と枢機卿は述べた。

 

*連帯の表明と祈りが希望をもたらしている

 ウクライナの人々との連帯と平和回復を求める世界の人々の祈りは、彼らに希望を与える。現在の悲惨な状況の中で、故郷を離れることを余儀なくされた人々が、いつか戻ることが出来るという意欲を保ち続けさせる。大勢の被災者たちが集まってきているこの場所で、連帯の意思表示と祈りは、避難している人々に物理的に触れるのと同じくらい、緊急に求められているのだ。

 枢機卿は「ここリヴィウは、まさに5分ごとに、ウクライナ東部からの避難民が到着しています。その多くは子供たちを連れた母親です。ポーランドへの入国を希望する人も、国境近くのウクライナ国内に留ることを希望する人もいます」と述べ、「ここも非常に危険だと感じていますが、まだ戦闘状態にはなっていない。皆さんは、戦闘に巻き込まれる恐怖から早く解放されるのを願っている。一日も早く故郷に戻れる日を待っています」と被災者たちの願いを代弁した。

 リヴィウの人口は、ロシアによるウクライナ侵略が始まる前に比べて、50万人も増えている、というが、枢機卿は「避難してくる人たちを収容するために、地元では学校、小教区、利用可能なすべての施設を開放していますが、一人に割り当てることのできるスペースは1平方メートルしかない。それでも、彼らは祈り、希望を失わず、自分たちを支援してくれる欧州の人々に心からの感謝を忘れていません」と述べた。

 そして、「(ロシアの軍事侵略によって引き起こされた)悲劇は、”つぼみ”を生みました。彼らがこれほど連帯したことは、これまでありませんでした。さまざまな人道的な支援を通して、自分たちが欧州の人々の欠かせない一部だということを実感しているのです」と強調した。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

 

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2022年3月10日